タービンについて勉強するとき、「動翼」と「静翼」という言葉が出てくるかと思います。
今回は動翼と静翼の役割について、非タービンエンジニア向けにどこよりもわかりやすく解説したいと思います。
動翼と静翼とは
タービンというと羽のついた回転体が何枚も中に入っていて、蒸気やガスの衝撃力で回転する、といったイメージをもたれているかと思います。
実はタービン内で回転する羽根には回転する部品と、固定されている部品があります。それらに動翼、静翼という名前がつけられています。
動翼はローターとも呼ばれ、タービンの軸に固定されています。圧力のかかったガスによって回転するように幾つもの羽がついた部品からなります。
一方、静翼はステーターとも呼ばれ、タービンのケーシングに固定されています。流れるガスを整流する役割を持ちます。
圧縮されたガスが動翼と静翼を交互に流れることにより軸が回転し、タービンはその回転エネルギーを動力に変換しています。
以下の動画に、圧縮機とタービンの役割が画像付きで掲載してありました。参考になるかと思います。
なぜ静翼が必要なのか
風車も風の力で回りますが、ひとつの羽(上で言うと動翼)しかないですよね。なぜタービンには幾つもの静翼があるのでしょうか。
タービンの1段目にぶつかった高圧のガスは、動翼を回転させながら圧力の低い方に移動しようとします。2段目の動翼にそのまま進むと圧力差が確保できずに、軸が回らないことになってしまいます。
そこで回らない静翼を取り付けることで、圧力を降下させるとともに、流体の流れを整えて次の動翼段へとガスを移動させています。
ちなみにガスは圧力が下がると体積が増えますので、タービンの動翼・静翼は入り口側が小さく、出口側が大きく設計されています。
タービン構造の種類
タービンにはエネルギーを利用する形式として2パターンあります。
一つ目の衝動式は、速度を持った蒸気やガスが動翼にぶつかり、その衝撃力で回転します。ガスの体積膨張は動翼部分では起こらないのが特徴です。
一般的に、もう一つの反動式よりも段数が少ないです。
二つ目は反動式です。動翼でガスの衝撃を受けながら、体積膨張も伴う形式のタービンです。動翼と静翼の構造が似ていること、衝動式よりも段数が多いことが特徴です。
タービンの種類についても、動翼・静翼の役割を知っていると理解しやすいのではないでしょうか。
まとめ
- タービンには動くブレードと動かないブレードがある。
- 交互に並べられることで降下的に軸を動かすことができる。
今回は、タービンの動翼と静翼について解説をしました。
エネルギーを生み出す発電の、根幹を担うタービンについて、是非勉強してみてください。
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