タービン

【タービン】復水器とは何か、種類や役割について解説

火力発電所などに設置される非常に重要な熱交換器の一つに復水器があります。

この記事では、復水器とは何か、その役割や種類について解説します。

復水器とは

復水器とはタービンで仕事を終えた蒸気を冷却し、凝縮させるための大型の熱交換器です。

ランキンサイクルで発電を行う場合に利用されます。一般的には冷却水を循環させて蒸気の持つ凝縮潜熱を冷却塔で排熱するのがほとんどですが、水源が確保できないなどの理由から空気冷却などを行う場合もあります。

復水器の器内をどれだけ高真空にできるかによって発電所全体の効率が大きく変わるため、復水器の性能は発電所の収益性に大きく関わることとなります。

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復水器の役割

復水器の役割は主に次の2つになります。

発電効率の向上

復水器によって蒸気タービンの排気真空度を高めることで、熱落差を大きくとることが出来、発電効率が上がります。

発電効率が上がれば、同じ発電出力を得るために必要な蒸気量が下がり燃料費を低減することが出来ます。

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復水の回収

蒸気タービンの駆動として利用される蒸気は要求される清浄度が非常に高く、薬品などにより処理されているため、工業用水と比べコストがかかっています。

復水器で蒸気を凝縮させ、再利用することで大気に放出する場合に比べ、薬品コストや水処理の費用を抑えることが出来ます。

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復水器の種類

復水器には大きく分けて次の2通りの種類があります。

水冷式

冷却塔の循環水や海水を冷却源とする方式です。冷却塔を利用する場合には、水を蒸発させることで冷却を行うため大量の補給水が必要になります。

空冷式と比較すると必要な伝熱面積を抑え、機器を小さくすることができ、かつ高い真空度を作り出すことが出来ます。

同じ水冷式でも間接的に冷却する方法と冷却水を直接噴霧させる方式がありますが、復水回収の観点から前者の方式を採用するのが一般的です。

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空冷式

空冷式はフィンの付いた伝熱管に蒸気を通し、大気に放熱させることで凝縮させる方式です。

補給水の水源を確保できない場合などに用いられますが、機器が大きくなるため設置スペースが広大になり、かつイニシャルコストが高くなります。

水冷式と空冷式のどちらが適しているかは、確保できる水などのユーティリティの条件や土地などにより判断されます。

空気抽出機の種類

復水器は器内が常に高真空になることから、フランジ面などから少量の外気を吸い込みます。これらは蒸気と違い、凝縮することがないので器内に滞留し、真空度を低下させる要因になります。

これらを連続的に排出し、高い真空度を維持するために主に次のような方法が取られます。

エゼクター

1つ目はエゼクターと呼ばれる特殊なバルブを用いて復水器内の空気を排出する方法です。

駆動源として抽気ラインから分岐させた過熱蒸気が必要ですが配管を接続するだけで利用でき、高真空を維持することが出来ます。設置スペースは抑えられますが、常に蒸気を使用することからランニングコストが高くなる傾向があります。

真空ポンプ

真空ポンプを用いた場合は、エゼクター方式のように吸引を行うための蒸気は不要ですが、その分設置スペースや電力代がかかります。

エゼクター方式とどちらを採用するかについては、設置スペース、イニシャルコスト、ランニングコストを考慮しながら判断される場合が多いです。

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まとめ

  • 復水器とはタービンで仕事を終えた蒸気を凝縮させる熱交換器。
  • 水冷式と空冷式があり、条件によりどちらを採用するかが変わる。
  • 空気を抽出する方式にはエゼクター式と真空ポンプ式がある。

復水器は発電所の機器の中でも最も主要で、重要な機器です。

是非、各方式のメリットデメリットを理解し、日々の管理に役立てましょう。

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エコおじい

プラントエンジニアです。「工業技術をどこよりも分かりやすく解説する」をテーマに2017年からブログ、Youtubeで情報発信をしています。現在、5つのブログを運営中。毎月収益レポートを公開しています。是非、Twitterのフォローお願いします。



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