工場の自動化にはバルブやダンパー等の自動制御は必須です。これらの自動化を支える機器の一つに「調節計」があります。
今回は「調節計とは何か?」や「調節計ができること」について詳しく解説していきたいと思います。
こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。
1. 調節計とは?
調節計は目標設定値とセンサー信号との差を比較し、その差に応じた出力を行って、目標値に近づけるよう演算を行う装置です
センサー信号の種類は温度、圧力、流量など様々で工場設備ではなくてはならない存在です。
一般的には、装置を動かすための計器室や機械の横の操作盤に設置されていることが多いです。
2. 調節計の機能
次に、調節計の一般的な機能についてです。
2-1. PV、SV、MV表示
- PV(Process variable):測定値
- SV(Setting value):設定値
- MV(Manipulated variable):操作量
圧力、温度、流量、水位などのセンサーで取得した値を数値で表示することが出来ます。
センサー自体に表示器が付いていて目で見える箇所にある場合は問題ありませんが、センサーが管理室から離れていたり、複数の数値を並べて比較したいという場合には調節計が必要です。
2-2. 遠隔操作
調節計を利用すれば遠隔電流信号によって設定値を変更させることが出来ます。
また、設定に対して偏差(目標値との差)が大きい場合に警報接点を出力させることも可能です。
3. 調節計の制御内容
調節計を用いれば、自動弁を用いて温度、圧力、流量などの制御を行うことが出来ます。
調節計を利用して制御を行う場合の方式として一般的に次の3つがあります。
- PID制御
- ON-OFF2位置制御
- プログラム制御
3-1. PID制御
PID制御は、比例動作、積分動作、微分動作を組み合わせた制御です。
それぞれの数値を変更させることで目標地点までの到達スピードや上下の振れ(ハンチング)幅を調整することが出来ます。
一般的な0-100%で開度調整が可能な比例制御弁を利用する場合に用います。
【自動制御】PID制御とは?P、I、Dの意味と調整方法
3-2. ON-OFF2位置制御
2位置制御は、全閉-全開を行う自動弁を用いて2位置で制御を行います。
例えば、設定温度80℃になるように78℃で熱媒供給バルブ開、80℃で熱媒供給バルブ閉などといった使い方をします。
この時、80℃と78℃の差2℃のことを2位置制御の「動作すきま」と呼びます。
2位置制御は非常に簡易な制御ですが、設定値に対して振れ幅が発生するというデメリットがあります。
精度の高い制御が求められている場合には、比例制御弁を用いてPID制御を行います。
3-3. プログラム制御
調節計にもよりますが、時間毎に設定値が切り替わるプログラム制御を行うことが出来ます。
一般的な調節計では、複数の設定値と時間をつなぎ合わせて1パターンのプログラムを作成できますが
プログラム調節計ではプログラムパターン自体を複数入力することも可能です。
プログラム調節計の方が高価ですが、プログラムパターンを頻繁に変更する場合には、入力の手間が省けて便利です。
【自動制御】プログラム制御って何?どんな時に使う?
4. 複数の調節計を組み合わせた制御
先程上げた3つの制御方式の他にも、複数の調節計を組み合わせると次のような制御を行うことが出来ます。
- カスケード制御
- 比率制御
- スプリット制御
4-1. カスケード制御
複数の調節計を組み合わせれば、目標値と制御値を変えるカスケード制御を使うことも出来ます。
例えば、目標値を圧力にして流量を制御する場合は次のような運転になります。
- 圧力が目標値に対して低い。
- 設定流量を増加させる。
- 流量計の値が設定値に近づくように制御弁開弁。
カスケード制御を利用すれば、外乱の影響を軽減することが出来ます。カスケード制御に関する内容は次の記事を参考にしてください。
【自動制御】カスケード制御。外乱の影響を受けにくい理由とは
4-2. 比率制御
比率制御は、取得した値に対して一定の割合を掛けた値を設定値として与えるという制御方式です。
燃料と空気の混合など、運転の理想的な比率があらかじめ決められている場合に用います。
【自動制御】比率制御って何?どんな時に使うの?
4-3. スプリット制御
スプリット制御は、出力MV値の0-100%を複数のバルブの0-100%に割り当てて開弁させていく制御です。
例えば2台のバルブを用いた場合は0-50の出力を1台目のバルブの0-100%、50-100の出力を2台目のバルブの0-100%に割り当てるという方式です。
調節計の出力数によって動かせるバルブは変わります。
【自動制御】スプリット制御とは?どんな時に使うの?
5. 調節計の入力方式
調節計に信号を入力、出力する場合には主に次の2つの方式が用いられます。
- 4-20mA電流
- 1-5V電圧
まれにパルスで入力する場合もありますが、基本はこの2つです。
電流入力と電圧入力の使い分けについては次の記事を参考にしてください。
ほとんどのセンサーは4-20mAの電流出力方式を利用しているため、調節計が1-5V入力仕様の場合は、4-20mA電流を1-5V電圧に変換させるために250Ωのシャント抵抗が必要になります。
センサーと調節計を接続する場合は、センサーのレンジを調節計に入力し、センサーの4mA、20mAが一体何を示すのかを設定しなければいけません。
また、調節計の中にはセンサー用の電源を持つものもあれば、外部電源が必要な場合もある為、注意が必要です。
【制御盤】電流入力と電圧入力の使い分けは?
6. 調節計とパラメーター
調節計には、センサーのレンジや出力させる信号の種類、警報の基準など様々な設定値があります。
これら一つ一つの事を「パラメータ」と呼びます。
調節計は仕様を合わせて接続すれば完了というわけではなく、パラメータ設定が代われば全く機能が変わるので注意が必要です。
調節計を利用する場合には、1から設定するつもりでパラメータ内容を理解する必要があります。
7. まとめ
- 調節計の機能は、PV、SV、MVの表示や遠隔操作。
- 調節計ではPID制御、2位置制御、プログラム制御等が可能。
- 複数組み合わせれば、カスケード制御、比率制御、スプリット制御等も出来る。
- 調節計の入力方式には4-20mA電流と1-5V電圧がある。
- 調節計はパラメーターにより全く機能が変わる。
以上です。
調節計は機能が豊富で最初は分かりにくいですが、使いこなすと非常に便利なので是非いろいろな場面で活用してください。