熱力学

【熱力学】SI単位?組立単位?熱計算に必要な色々な単位について

熱や電気の計算をするうえで絶対に欠かせないのが様々な「単位」です。

「単位」が理解できていないと、その数値が一体何を表しているのかわかりません。逆に「単位」について深く理解できていれば、そこから計算式を組み立てることも可能なので非常に有利になります。

今回は、この覚えるのが厄介な「単位」について詳しく解説してみたいと思います。

1. 単位とは?

「単位」というのは、ある量を数値で表す際の基準となる約束された量です。

単位という基準を皆がそれぞれ共通認識として知っているから、量を言葉で表すことができます。単位がなければ他人と共同で何かを作り出すことはできません。どのような単位で統一するかというのは、それぞれの単位に歴史があり語りだすと、きりがありません。

基準というのは、非常に単純に見えて実に奥深いものです。

色々な議論を経て、世界で統一された単位系としてSI単位(国際単位)というものがあります。世界中で単位がバラバラだと、議論できなくなるので、この単位で統一しましょうという約束事です。

皆さんが普段よく使っているメートル(m)という単位も日本がメートル法に正式に加入したのは1885年(明治18年)でそれまでは1里(り)とか1町(ちょう)とか全く別の単位が使われていました。

今でもたまに田んぼの広さを1反(たん)とか言ったりしますがそれも昔の名残です。少し調べてみると、本当に色々な単位があって面白いです。

2. 熱計算に必要な単位

熱量を計算する際に、覚えておかなければならないSI単位は7つのSI基本単位、2つのSI補助単位、6つのSI組立単位のみです。

2-1. SI基本単位

7つのSI基本単位は、すべての基本となる単位です。これを分解して新たな単位が現れるという事はありません。

長さ メートル(m)

1 秒の 299 792 458 分の1の時間に光が真空中を伝わる行程の長さ。

質量 キログラム(kg)

国際キログラム原器(プラチナ 90 %、イリジウム 10 % からなる合金で直径・高さともに 39 ミリメートルの円柱)の質量。

時間 秒(s)

セシウム133原子の基底状態の2つの超微細構造準位(F = 4, M = 0 および F = 3, M = 0)間の遷移に対応する放射の周期の 9 192 631 770 倍の継続時間。

電流 アンペア(A)

真空中に 1 メートルの間隔で平行に配置された無限に小さい円形断面積を有する無限に長い 2 本の直線状導体のそれぞれを流れ、これらの導体の長さ 1 メートルにつき 2 × 10−7 ニュートンの力を及ぼし合う一定の電流。

熱力学温度 ケルビン(K)

水の三重点の熱力学温度の 1/273.16。

光度 カンデラ(cd)

周波数 540 × 1012 ヘルツの単色放射を放出し、所定の方向におけるその放射強度が 1/683 ワット毎ステラジアンである光源の、その方向における光度

物質量 モル(mol)

0.012 キログラムの炭素12の中に存在する原子の数に等しい数の要素粒子を含む系の物質量。
モルを使うときは、要素粒子 (entités élémentaires) が指定されなければならないが、それは原子、分子、イオン、電子、そのほかの粒子またはこの種の粒子の特定の集合体であってよい。

こうしてみると、普段何気なく使っている単位一つ一つにも深い意味が込められているという事がよくわかりますね。

この7つがSI基本単位となります。

2-2. SI補助単位

SI補助単位は「基本単位でも組立単位でもないが、補助的に使われる単位」です。

じゃあどっち?(笑)ってなりますが2つしかないので覚えちゃいましょう。

平面角 ラジアン(rad)

円周上の弧の長さが、半径の長さと等しくなりような2本の半径の間の平面角。

立体角 ステラジアン(sr)

球の中心を頂点とし、その球の半径を1辺とする正方形の面積と等しい面積をその球の表面上で切り取る立体角。

この二つはほとんど使うことがありません。

2-3. SI組立単位

SI組立単位はSI単位を組み合わせてできる単位のことです。多数存在しますが、熱量を計算する際に使用するのは以下の6つです。

速さ メートル毎秒(m/s)

1秒間に進む距離(m)

面積 平方メートル(m2)

縦1m 横1mの広さ

密度 キログラム毎立方メートル(kg/m3)

1m3当たりの重さ(kg)

力 ニュートン(N)

1ニュートンは、1キログラムの質量をもつ物体に1メートル毎秒毎秒 (m/s2) の加速度を生じさせる力。

周波数 ヘルツ(Hz)

電気振動(電磁波や振動電流)などの現象が、単位時間(ヘルツの場合は1秒)当たりに繰り返される回数。

電気抵抗 オーム(Ω)

1ボルトで1アンペアの電流が流れるとき、導線が示す抵抗

そのほかにも熱力学では、基本単位を組み合わせ、様々な単位が使われいています。

2-4. それ例外でよく使うもの

熱量 ジュール(J)

1 ジュールは標準重力加速度の下でおよそ 102.0 グラム(小さなリンゴくらいの重さ)の物体を 1 メートル持ち上げる時の仕事。

仕事 ワット(W)

1ワットは毎秒1ジュールに等しいエネルギーを生じさせる仕事率と定義され、SI組み立て単位で表すとジュール毎秒(J/s)。

乱雑さ エントロピー(S)

エネルギーを温度で割った次元を持ち、SIにおける単位はジュール毎ケルビン(記号: J/K)。

圧力 パスカル(Pa)

1平方メートル (m2) の面積につき1ニュートン (N) の力が作用する圧力。

エネルギー エンタルピー(h)

エネルギーの次元をもち、物質の発熱・吸熱挙動にかかわる状態量である。等圧条件下にある系が発熱して外部に熱を出すとエンタルピーが下がり、吸熱して外部より熱を受け取るとエンタルピーが上がる。(kJ/kg)

3. まとめ

単位と一言で言っても、その種類は実に様々です。

熱計算で使う単位としてはこんなものではないでしょうか?

熱力学

2021/9/2

【熱力学】ヒートバランスって何?計算方法や使い方は?

タンクや釜など、ひとつの容器に複数の物体を入れるときにその容器の中が一体何℃になるのかを計算しないといけないことってありますよね? これを計算する方法の1つにヒートバランスという考え方があります。 今回は、ヒートバランスとは何か?どんな使い方をするのかについて解説していきたいと思います ヒートバランスとは? ヒートバランスとは、エネルギー保存則と質量保存則を合わせたもので、1つの系に流入してくる物体の質量の合計と熱量の合計は出ていく物体のそれらと釣り合うという考え方です。 例えば、タンクに80℃の水が10 ...

ReadMore

熱力学

2021/9/3

【熱力学】キロ、パスカル、圧力の単位が人によって変わる理由

水や蒸気、ガスなどの流体を扱うときに 「その圧力は何キロ?」と言われることもあれば 「その圧力は何メガパスカル?」と言われることもあります。 このように、人によって圧力の単位が微妙に違うので混乱してしまうことがしばしばあります。例えば、「何キロ?」と聞かれているものが「kPa」なのか「kgf/cm2」なのかわからないというところが厄介です。 なぜ人によって圧力の単位の認識が違うのでしょうか?それはSI単位の導入時期と関係がありました。 圧力の単位 圧力を表す単位は大体次のようなものが利用されます。 Pa ...

ReadMore

熱力学

2022/4/12

【熱力学】水の流量を測定する方法

工場やプラントで新しい設備の導入を検討するときや省エネの検討をするときに、今の設備がどれぐらいのユーティリティを使っているのか知りたいことってありませんか? 既に計測機器が設置されていてきっちり管理されている場合は問題ありませんが、ほとんどの場合はそれぞれの設備で流量計測が実施されていることはありません。 今回は、流量計の設置されていない設備で水の流量を計算する方法について書いてみたいと思います。 こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。 水の流量を測定する方法 水 ...

ReadMore

熱力学

2022/8/27

【熱力学】ワットとカロリーの変換方法

熱をあつかうときに厄介なのが、エネルギーを表す単位です。カロリー、ワット、ジュール、キロワット、キロカロリー・・・。これらの単位をしっかり理解できれば、エネルギーの考え方を理解できたも同然です。 今回は、ワットとカロリーの変換方法について解説したいと思います。 こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。 1. ワット まずはおさらいでワットについて考えてみましょう。 ワットは熱機関の祖であるジェームスワットにちなんでつけられた単位で、1秒当たりに1ジュール生じさせる仕 ...

ReadMore

熱力学

2023/12/20

【熱力学】エンタルピーって何?内部エネルギー、エントロピーとの違いは?

エンタルピーと聞くと何を思い浮かべますか? 物体の持つエネルギー量・・・ エントロピーとは全く別の概念・・・ 難しい数式で表されて良くわからないもの・・・ そんなイメージを持っている人も多いのではないかと思います。 確かに熱力学の教科書を読むと最初の方に何やらよくわからない数式とエンタルピーが一緒に出てきて頭が混乱してきます。でも、実際にはエンタルピーは工業系の実務で使えるとても便利な考え方なのです。 今回はそんなエンタルピーがどんな場面で利用されているのかについて解説します。 エンタルピーとは? エンタ ...

ReadMore







  • この記事を書いた人

エコおじい

プラントエンジニアです。「工業技術をどこよりも分かりやすく解説する」をテーマに2017年からブログ、Youtubeで情報発信をしています。現在、5つのブログを運営中。毎月収益レポートを公開しています。是非、Twitterのフォローお願いします。



効率的に技術系資格取得を目指す方必見!当サイトおすすめの通信講座

最短で資格を取得するためには、いかに効率よく学習するかが最も重要です。

参考書だけでは分かりにくいという方には、全て解説動画で学べるSATの通信講座がおすすめです。日々の通勤時間など隙間時間を利用して無理なく効率的に学習を進めることが出来ます。

超シンプルで分かりやすいSAT『エネルギー管理士』

エネルギー管理士の通信講座です。イラストを多用したシンプルで分かりやすいテキストと動画がセットになっています。

他社と比較すると価格もお手頃で、特に熱力学などを学んだことのない初学者におすすめの通信講座です。

熱分野レビュー 電気分野レビュー 他社との比較

エネルギー管理士以外にも電験や衛生管理者など25の資格の通信講座を展開しています。

最短で電験取得を目指すならSAT『電気主任技術者講座』

イメージしにくい交流回路についても多様なイラストと解説動画で詳しく解説してくれます。独学ではなかなか勉強が進まないという方に特におすすめの講座です。電気について詳しく学べるので実務で電気を使うという方には最適な教材です。

電験三種レビュー 他社との比較

技術系資格の最高峰SAT『技術士合格講座』

論文添削やZOOMマンツーマン指導が付いており、面接対策もWeb上で行うことが出来ます。また、テキストは毎年改定されているので常に最新の教材で勉強することが出来ます。

-熱力学
-

エネ管.comをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む

© 2024 エネ管.com Powered by AFFINGER5