ポンプ

【ポンプ】真空ポンプは何種類?産業分野に使われるタイプをまとめて解説

現場で使用される真空ポンプは、文字通り真空(大気圧よりも低い状態)を作り出すために活用されています。

原理なんて知らなくても・・・と思われるかもしれませんが、いざ突発的に不調になった時、対処方法がわからないと困りますよね。原理を知っていれば、不調の予測や対処法の考案にもつながるかもしれません。

真空ポンプは原理ごとに分けると大きく3種類あり、かつそれぞれ数種類のタイプがあるため、構造は多岐に渡ります。

今回は、真空ポンプの3つの種類について解説してみたいと思います。

機械式真空ポンプ

機械式真空ポンプは、ポンプ内部に回転運動など機械的に動く部品が存在し、吸気と排気を繰り返すことにより真空を生み出す仕組みをしています。

ピストンをイメージしていただくとわかりやすいかと思います。こうした仕組みですので、ポンプ本体の近くに必ず回転機が存在します。

このタイプで最も多く耳にするのは、油回転式と呼ばれるものかと思います。1900年台の初めに開発されてからずっと使用され続けています。

ポンプ内部に翼板やベーンと呼ばれる羽があり、ポンプ内壁に押さえつけられながら回転することで、空間容積の変化を起こします。

回転軸が中央ではなく、偏った位置にある偏心構造のため、吸気と排気の時間を交互に生み出す構造をしています。

潤滑性能やシール性のためにオイルが使われています。安価で小型という長所があります。仕組みは以下の動画がわかりやすいです。


 

他の型式としては、

  • 複数の回転翼を持ちオイルを用いないドライ真空ポンプ
  • 高速回転する動翼で真空を生み出すターボ分子ポンプ
  • 往復するダイヤフラム(金属の膜)の動作を利用したダイヤフラムポンプ

などがあります。

運動量移送式真空ポンプ

高速で流れるジェット流が、吸気対象の気体に運動量を与えて、排気するという構造をしています。

付随装置としては、油を帰化させる加熱装置があったり、蒸気配管がつながっていたり、液体用のポンプがあったり様々です。

その中でもエジェクタポンプとは、エジェクタと呼ばれる機器内に蒸気などの流体が流れる際のジェット流を利用します。

ノズルの効果によって流体が高速になる部分に、吸気口を設けることで目的の気体を吸い上げ、真空を作り出します。使われる流体は、蒸気や空気など気体だけでなく、水などの液体が使われることもあります。

他にも油拡散式ポンプと呼ばれる型式も、このタイプに含まれます。こちらは油を加熱し発生した油蒸気が、ジェット部と呼ばれる狭い隙間を高速で流れます。油蒸気とともに吸気した気体を排気口まで運びます。

これらのタイプは、大型化しやすいので排気速度を得やすい、可動部がないので故障が少ないというのが特徴です。

溜込式ポンプ

こちらのタイプはご存じない方も多いかもしれませんが、歴史も一番新しいタイプです。

超高真空を生み出すために使用されます。大まかな原理としては、気体を吸着させたり凝縮させたりすることにより、気体を排気する仕組みをしています。

  • 冷凍機で極低温を作り出し、気体を凝縮させるクライオポンプ
  • 液体窒素などで冷却し、気体を活性炭などに吸着させるソープションポンプ
  • 電場を生み出し、チタンイオンに気体を吸着させるスパッタイオンポンプ

などがあります。 

まとめ

  • 真空ポンプには機械式、運動量移送式、溜込式の3種類がある。
  • 用途や目的が分かれており、得意・不得意がある。

参考になりましたでしょうか。ざっくりと技術的な大枠を掴んでおくことが、機器選定や故障対応につながると思いますので、ぜひ勉強してみてください。

ポンプに関する記事は他にもあるので、興味ある方はこちらもどうぞ。

ポンプ

2022/4/10

【ポンプ】NPSHとは何か。考え方、計算方法について解説します

ポンプを選定する際に重要な指標としてNPSHがあります。 NPSHの考え方を間違えて、ワンポイントでポンプを選定すると非定常な運転時に異常が発生しポンプが故障するなどの事故につながります。この記事ではポンプのNPSHについて、考え方や計算方法を解説します。 NPSHとは NPSHはNet Positive Suction Headの略でポンプを選定する際に、どの程度の流入水頭を確保できるかを示す指標で単位はm(メートル)で表されます。 NPSHにはNPSH available(有効吸込ヘッド)とNPSH ...

ReadMore

ポンプ

2022/4/10

【ポンプ】ポンプの台数制御とは、仕組み、メリット、デメリットについて解説

液体の輸送に必要な機器であるポンプは工場の稼働状況や時間帯によっても、必要な液量が変わる現場が多いです。 そんな場合はポンプの台数制御を行うという考え方があります。 この記事ではポンプの台数制御とは何か、そのメリットやデメリットについて解説します。 ポンプの台数制御とは ポンプは24時間稼働させることが多く、流体を吐出するには大きなエネルギーが必要です。一方、使用先の必要量(ここでは負荷と呼びます)はいつも最大とは限りません。 そこで無駄なエネルギーを削減するための方法の一つとして「複数台のポンプを設置し ...

ReadMore

ポンプ

2021/11/14

【ポンプ】軸動力を計算する方法は?

ポンプを選定するときに、どのぐらいの大きさのモーターが必要になるのか計算で求めたいことってありますよね。今回はポンプの流量や差圧から軸動力を求める方法について解説したいと思います。 ポンプの軸動力を計算する方法 ポンプの軸動力は次の手順で求めることが出来ます。 ポンプの流量を求める ポンプの必要差圧を求める 流量と差圧をかける ポンプ効率で割る 実際に例を交えて解説します。 ポンプの流量を求める まず、ポンプの必要流量を求めます。 特に計算式があるわけではなく、使用先でどれだけの流量が必要かをリストにして ...

ReadMore

ポンプ

2022/3/3

【ポンプ】真空ポンプの原理とは?タイプ別に紹介!

以前の記事で、真空ポンプの種類について解説しましたが、「どうやったら真空が生み出されるのか」という原理的な面での解説が足りていなかったように思います。 今回は、真空ポンプの種類別に、真空状態を作り出す原理を詳しく解説していきたいと思います。 真空のはじまり 真空ポンプ、ではありませんが、真空の作り方として最も初期の活用例をご紹介します。 産業分野で最も初期の蒸気機関として知られる、ニューコメン機関をご存知でしょうか? トーマス・ニューコメンは産業革命の中心的存在であった、ジェームス・ワットよりも前に蒸気機 ...

ReadMore

ポンプ

2021/8/30

【ポンプ】粘度とポンプの関係、使い分けは?

数多くあるポンプの型式ですが、液体の粘度によって向き不向きがあることはご存知ですか? 今回は、高粘度の液体を輸送するためのポンプについて解説します。 粘度とは 粘度とは、流体のねばりの度合いを数値化したもので、µ(ミュー)が記号として用いられます。 単位はPa・s(パスカル秒)が一般的に用いられます。µは、液体の中で板が動くときに、板の移動方向とは逆方向に働く力である剪断応力(物体の断面に発生する力)を測定したときの比例定数です。 粘度に対し、流体の動きにくさを表したものを動粘度と呼びます。配管の圧力損失 ...

ReadMore

  • この記事を書いた人

エコおじい

プラントエンジニア兼Webライターです。「工業技術をどこよりも分かりやすく解説する」をテーマに2017年からブログ、Youtubeで情報発信をしています。ライティングなどのお仕事のご相談はXのDMからお願いします。

効率的に技術系資格取得を目指す方必見!当サイトおすすめの通信講座

最短で資格を取得するためには、いかに効率よく学習するかが最も重要です。

参考書だけでは分かりにくいという方には、全て解説動画で学べるSATの通信講座がおすすめです。日々の通勤時間など隙間時間を利用して無理なく効率的に学習を進めることが出来ます。

超シンプルで分かりやすいSAT『エネルギー管理士』

エネルギー管理士の通信講座です。イラストを多用したシンプルで分かりやすいテキストと動画がセットになっています。

他社と比較すると価格もお手頃で、特に熱力学などを学んだことのない初学者におすすめの通信講座です。

熱分野レビュー 電気分野レビュー 他社との比較

エネルギー管理士以外にも電験や衛生管理者など25の資格の通信講座を展開しています。

最短で電験取得を目指すならSAT『電気主任技術者講座』

イメージしにくい交流回路についても多様なイラストと解説動画で詳しく解説してくれます。独学ではなかなか勉強が進まないという方に特におすすめの講座です。電気について詳しく学べるので実務で電気を使うという方には最適な教材です。

電験三種レビュー 他社との比較

技術系資格の最高峰SAT『技術士合格講座』

論文添削やZOOMマンツーマン指導が付いており、面接対策もWeb上で行うことが出来ます。また、テキストは毎年改定されているので常に最新の教材で勉強することが出来ます。

-ポンプ

エネ管.comをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む

© 2024 エネ管.com Powered by AFFINGER5