高温流体を送る配管には、火傷防止、省エネの観点で保温は必須です。保温をするかしないかで年間数百万円もコストに差が出てきてしまいます。
では、バルブの放熱はどの程度あるのでしょうか?
今回はバルブの放熱量や保温した場合のメリットについて記事を書いてみたいと思います。
1. バルブを保温しなかった場合の放熱ロス金額
今回は50Aのグローブバルブ、100Aのグローブバルブについて次の条件で計算を実施しました。
- 高温流体:200℃
- 外気温度:20℃
- h1:10000W/㎡K
- λ1:84W/mK
- L1:10mm
- λ2:0.05W/mK
- h2:20W/㎡K
- 年間稼働時間:7000時間
- 熱量単価:0.002円/kJ
放熱の計算方法や保温の考え方についてはこちらの記事を参考にしてください。
【配管】放熱量を簡単に計算する方法。保温の効果はどれくらい?
1-1. 50A グローブバルブの場合
検索して出てくるバルブのカタログから、グローブバルブの外径を次のように設定しました。
この時、80×80の側面は隣の機器との接続になるので無視します。そうすると表面積は次の式で概算を計算できます。
$$80×145×4×10^{-6}=0.0464[㎡]$$
これをもとに放熱計算を行うと、166W(=399kJ/h)の放熱があることが分かりました。
これに熱量単価と稼働時間をかけると、年間約8,382円の放熱ロスがあると分かります。
1-2. 100A グローブバルブの場合
同様に100Aのグローブバルブで計算してみます。
この場合の伝熱面積は次の式で概算できます。
$$130×220×4×10^{-6}=0.1144[㎡]$$
これをもとに放熱計算を行うと、410W(=1476kJ/h)の放熱があることが分かりました。
これに熱量単価と稼働時間をかけると、年間約20,666円の放熱ロスがあると分かります。
2. バルブの保温をした場合の放熱ロス金額
次に、バルブを保温した場合の放熱ロスを計算します。保温の厚みを20mmとして、U値を計算し、伝熱面積と掛け合わせることで算出できます。
保温をした場合の放熱ロス計算方法については次の記事を参考にしてください。
【配管】保温の厚みと放熱の関係、最適な保温の厚みは何mm!?
結果は次の通りです。
- 50A グローブバルブ 19W(=67kJ/h) 年間935円
- 100 グローブバルブ 46W(=165kJ/h) 年間2,305円
それぞれの保温するメリットは、50Aのバルブで7,447円/年、100Aのバルブでは18,361円という事が分かりました。
これは、内部の流体の温度が高ければ高いほど、バルブサイズが大きければ大きいほどメリットも大きくなっていくことが分かります。
3. バルブ保温の投資採算性は?
バルブの保温を検討する場合、一般的な保温材を巻き付ける場合もあれば、メンテナンス性を考慮して保温カバーを付ける場合もあります。
今回はバルブカバーを付けることを想定して一般的なバルブの保温カバーの値段を調べてみました。
こちらのような保温カバーで50A用で13,200円、80A用で18,400円でした。大体1万円~2万円程度なので、放熱ロスの金額を考えると投資採算性は2~3年と言えます。
初期の段階で導入しておけば工事費も発生しないので非常に有効な省エネ対策と言えます。
4. まとめ
- 保温をしない場合のバルブの放熱ロスは50Aで約8300円、100Aで約20000円。
- 保温をすることで90%程度放熱ロスを防げる。
- 保温カバーの投資採算性は2~3年程度。
こう考えると、保温は確実に行い、経年劣化をメンテナンスする策が必要と言えます。
是非、バルブの保温を検討される際に参考にしてもらえればと思います。
実際には次のようなエクセルを用いて計算をしています。
実際にエクセルを使って条件を変えて計算したいという方は、ココナラでエクセルファイルを1000円で販売しているので購入していただけるとありがたいです。
「配管放熱の保温に関する計算を自動で出来ます」というサービスで検索してもらえると出てきます。
自分で1から作るとなると数時間はかかるので時間の削減になりますよ。熱の勉強をしたいという方にもおすすめです。
配管放熱の保温に関する計算を自動で出来ます 放熱計算を行い投資採算性を計算することができます。