ボイラー効率を向上させる機器の一つに空気予熱器があります。
今回は空気予熱器とは何かについて解説したいと思います。こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらも合わせてご覧ください。
空気予熱器とは
空気予熱器はボイラーに送る燃焼用の空気を加熱する熱交換器のことを言います。
似たような役割をする機器にエコノマイザがありますが、エコノマイザはボイラー給水と排ガスを熱交換させるのに対して、空気予熱器は燃焼用の空気との熱交換を行います。
熱源はエコノマイザと同様に排ガスの事もあれば、プラント内にある廃温水などの排熱、蒸気タービンからの抽気蒸気を利用することもあり、利用方法はプラントによって様々です。
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空気予熱器の目的
空気予熱器を設置する主な理由は次の4つです。
ボイラー効率の向上
ボイラー効率は燃料などにより投入した入熱と排出された廃熱の割合によって決まるので、排ガスの熱を取るガス式空気予熱器を設置すれば、ボイラーからの廃熱を低減でき、ボイラー効率向上につながります。
また、排ガス温度の下限値は、燃料の組成によって決まりますが、硫黄分の少ない天然ガス(LNG)やプロパン(LPG)などの気体燃料であれば100℃以下まで下げることも可能です。
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二次側空気予熱器の腐食防止
石炭やバイオマス燃料など硫黄分の高い燃料を使用する場合、ガス式空気予熱器に常温の空気を供給すると伝熱面で排ガス中の水蒸気が結露し、硫酸が発生することによる低温腐食を引き起こす可能性があります。
そのため、ガス式空気予熱器の一次側に蒸気などを熱源とした蒸気式空気予熱器を入れる場合があります。この時の蒸気式空気予熱器の目的は二次側のガス式空気予熱器の腐食防止です。
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排熱の回収
空気予熱器の熱源は、燃焼空気より温度の高いものであればいいので、プラント内に廃温水や高温の排ガスなど熱源があれば廃熱回収に利用することが出来ます。
空気予熱器で燃焼空気を予熱しておけば、ボイラーの燃料を削減できるのでプラント全体のエネルギー効率を向上させることが出来ます。
失火の防止
バイオマスボイラなどの化石燃料ではない高水分の燃料を燃焼させる場合は、燃焼用の空気を予熱することで燃料の燃焼を助けることが出来ます。
大型のボイラとなると一度失火してしまうと再立ち上げに時間がかかるので、如何に燃焼を続けることが出来るかがプラントの安定稼働の1つの課題と言えます。
この場合の空気予熱器の目的は、高水分燃料による失火の防止になります。
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空気予熱器の方式
空気予熱器は空気と熱媒を熱交換させるので、エア用の熱交換器が利用されます。
フィンチューブ型
フィンチューブ型は伝熱面にフィン加工を施し、伝熱面積を大きくした機器です。省スペースでも伝熱面積を確保できるため、一般的なエアヒーターに良く用いられています。
どの程度の隙間でフィンを配置させるかは利用する環境などを考慮し、検討します。
ベアチューブ型
ベアチューブ型はフィン加工をしていないチューブを使用します。フィンチューブ型では対応できない特殊材質を利用する場合や、フィンとフィンの間にゴミが詰まる恐れのある場合などに利用します。
1本のチューブで賄える伝熱面積が小さくなるため、同じ交換熱量を確保する場合、フィンチューブ型と比較して機器は大きくなりますが、メンテナンス頻度を低減させることが出来ます。
フィンチューブ型とベアチューブ型のどちらが適しているかは、利用環境などを購買仕様書に詳しく記載し、過去の実績などから詳細に検討する必要があります。
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まとめ
- 空気予熱器はボイラー燃焼用の空気を予熱する熱交換器。
- 熱源は排ガス、蒸気、廃温水などがある。
- 主に熱効率の向上や腐食防止、失火の防止という目的で利用される。
同じ用途に見える熱交換器でも熱源や利用目的によって呼び方を変えたりするので、混同しないように注意しましょう。
空気予熱器と同じくプラントの熱効率を高める機器としては節炭器や給水加熱器があります。それらについても合わせてご覧ください。
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