現在、多くの火力発電所ではランキンサイクルの中でも再生サイクルが用いられています。
この記事では再生サイクルで必ず用いられる給水加熱器とは何かについて解説します。
給水加熱器とは
給水加熱器とは、蒸気タービンの抽気蒸気を利用してボイラー給水を加熱するための熱交換器です。給水加熱器を設置した熱サイクルを再生サイクルと呼び、発電所で良く利用されるランキンサイクルをより高効率にするものとされています。
一般的に復水器から脱気器までの間に設置するものを給水の圧力から低圧給水加熱器、脱気器からボイラーまでの間に設置するものを高圧給水加熱器と呼び、発電所の出力によって設置の必要性が検討されます。
給水加熱器の多くはシェル&チューブ型の熱交換器が用いられ、加熱を終えた蒸気ドレンは脱気器や復水器に回収するのが一般的です。
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給水加熱器のメリット
給水加熱器を設置するメリットは熱サイクル全体の効率が向上することです。
通常、タービンで仕事を終えた蒸気は最終的に復水器で冷却され、冷却分の熱量は有効利用できませんが、給水加熱器を設置することで熱として利用出来るようになります。また、加熱を終えた蒸気ドレンは脱気器や復水器に回収することで純水として再利用されます。
給水の温度が上昇することで、低圧給水加熱器の場合は「脱気器の加熱蒸気」、高圧給水加熱器の場合は「ボイラーへ供給する燃料」を削減することが出来ます。給水加熱器を設置するかどうかは発電所全体の熱収支を計算し、コストメリットの観点から検討します。
給水加熱器で上げられる給水温度の限界は、加熱に用いる蒸気の圧力(飽和温度)によって決まるため、計画しているタービンの抽気圧力やボイラードラムの圧力を考えて、現実的な設計温度を検討します。
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給水加熱器のデメリット
コストが上がる
給水加熱器を設置することで、熱交換器本体や工事の費用が掛かります。また、定期的に伝熱管の清掃などメンテナンスが必要となるためランニングコストも増加します。
これにより、小出力の発電所では熱効率が上がることによる収益増加分を賄えなくなります。
給水側の圧力損失が上がる
給水加熱器を設置することで、給水側の圧力損失が上がるため、給水ポンプの必要揚程が増加します。これによりポンプの機器費用と運転にかかる動力のコストが増加します。
設置スペースが増える
給水加熱器には一般的にシェル&チューブ型熱交換器が用いられ、熱交換量も大きい事からかなりの設置スペースを取ります。
給水加熱器の多くは蒸気タービンがある建屋に設置しますが、建屋のスペースが限られている場合は配管ルートの都合上設置を見送る場合があります。
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まとめ
- 給水加熱器は再生サイクルで利用する熱交換器。
- 給水加熱器の設置により熱サイクルの効率が向上する。
- 給水加熱器を設置することでコストや設置スペースが増加する。
給水加熱器は設置によるメリットも大きいですが、運転コストの増加等にもつながります。設置しているプラントを見かけた場合は、なぜ設置されているのかについて考えてみてはいかがでしょうか。