ボイラー

【ボイラー】エコノマイザとは何か。空気予熱器との違い、メリット計算方法は?

ボイラーの効率を上げるために排ガスの熱を利用することは非常に重要です。

今回はボイラー効率に影響を与えるエコノマイザとは何かについて解説していきたいと思います。

エコノマイザとは?

エコノマイザは節炭器とも呼ばれ、ボイラーの排ガスと給水を熱交換させる熱交換器です。ボイラー給水の温度を上げることで燃料代を削減することができます。

節炭器と言われる理由は、以前石炭炊きのボイラーが一般的だったことから来ています。

最新の小型貫流ボイラーの場合は、標準で設置されていることも多く、大型の水管ボイラーの場合は排ガス量や給水温度を計算しながら複数ユニットになって設置されていることが多いです。

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エコノマイザの注意点

エコノマイザで注意すべきことの一つに排ガスの温度が酸露点以下になることによる低温腐食があげられます。

ボイラー給水の温度が低いと、エコノマイザの伝熱面で排ガス中の水蒸気が凝縮し、その水分中に排ガス中の硫黄が溶け込むことで硫酸が発生します。これにより水管が腐食され、穴あきなどのトラブルを起こすことを低温腐食と言います。

これを防止する方法としては、次のようなものがあげられます。

  • ボイラー給水を酸露点以上まで昇温させる。
  • 硫黄分の少ない燃料を使用する。
  • 伝熱面を低温腐食に強い材質に変更する。

大型ボイラーの場合は、脱気器の圧力によってボイラー給水の温度は決まるので、脱気器圧を上げたり、そもそもの要因となる燃料中の硫黄分を取り除いてしまうなどの対策があります。

また、伝熱面の材質を低温腐食に強いものに変更するというのも初期コストは上がりますが、有効な策の一つです。最近では伝熱面にガラスを使用したエコノマイザなども開発されているようです。

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エコノマイザと空気予熱器の違い

エコノマイザと同様にボイラー効率を上げるものの一つに空気予熱器があります。

エコノマイザが排ガスとボイラー給水と熱交換させるのに対し、空気予熱器は燃料を燃焼させるときに使用する空気と熱交換させます。

空気予熱器はガス流れからいうと、エコノマイザの二次側に設置されることが多く、エコノマイザを出た排ガスの熱量をさらに取りたい時に利用します。

燃焼用の空気温度が上がれば、燃焼効率が向上し、燃料の使用量を低減できたり不完全燃焼によるすすの発生を防止することができます。

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エコノマイザのメリット

エコノマイザのメリットは、排ガスの熱を給水で回収することによってボイラー効率が上がることです。

ボイラー効率は、供給した燃料の何%が有効な熱エネルギーとして利用されるかを表す指標なので、ボイラー効率が上がれば上がるほど、使用する蒸気量が同じでも燃料を少なくできると言えます。

ボイラー効率についてはこちらの記事で詳しく書いているので参考にしてください。

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エコノマイザを入れるとボイラー効率は5~10%向上すると言われています。効果に幅があるのは、条件によって上昇する効率が変わるからです。

例えば、現状の給水温度が低ければ低いほど、排ガスから取れる熱量が増えるのでメリットは大きくなります。

エコノマイザを設置することで、どの程度の効率向上が見込めるかは設置するボイラーのメーカーに給水温度や燃料の種類、蒸気量などを伝えれば計算することができます。

但し、硫黄分を含む重油などを使用する場合は、給水温度が低すぎると酸が発生する場合があるので注意が必要です。

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エコノマイザのメリット計算方法

エコノマイザを導入することでどの程度ボイラー効率が上がるかが分かれば、メリットを計算することができます。

例えば、ボイラー効率が80%の状態でエコノマイザを設置し、90%まで向上したと仮定します。

この場合、100の燃料を投入すると、有効に伝わる熱量は80から90に上がることになります。

必要な蒸気量は一定なので、もともと100の燃料を使用して作っていた蒸気と同じ量を作るのに必要な燃料は次の計算で算出することができます。

$$100×\frac{80}{90}≒89$$

つまり、ボイラー効率が10%向上することで燃料代は11%削減できるという事になります。

同様に、ボイラー効率が80%から85%に向上したと仮定すると次の式から6%の燃料代削減になることが分かります。

$$100×\frac{80}{85}=94$$

稼働時間などから年間の燃料代が分かれば、そこに削減できる%を掛けると年間のメリットを計算することができます。

削減できる割合は非常に大きいですが、年間の稼働時間が短い場合は、投資採算的にエコノマイザを付けないほうが良い場合もあります。

ボイラー効率の向上率よりも燃料削減率の方が少し大きくなるという事が重要です。

エコノマイザのデメリット

エコノマイザは、エネルギー効率の向上やコスト削減に効果的な装置ですが、いくつかのデメリットも存在します。以下に、エコノマイザの主要なデメリットを解説します。

初期コストの高さ

エコノマイザの導入には、高い初期投資が必要です。装置自体の価格に加え、設置工事費や配管改造費がかかるため、初期費用はかなりの額になることがあります。

特に、既存のシステムに後付けする場合、工事の複雑さやシステムの適合性を考慮する必要があり、コストが増加する可能性があります。長期的なコスト削減効果と初期投資のバランスを慎重に評価する必要があります。

メンテナンスの手間

エコノマイザは、効率的に運用するためには定期的なメンテナンスが欠かせません。特に、伝熱面に付着する汚れやスケールを定期的に除去しないと、効率が低下し、エネルギー消費が増加するリスクがあります。

これにより、運用コストが増加することがあります。また、メンテナンス作業には専門知識が必要な場合が多く、技術者の確保や教育にもコストがかかります。

腐食と劣化のリスク

エコノマイザは高温の排ガスと接触するため、腐食や劣化のリスクが伴います。

特に、ボイラーの排ガス中に含まれる硫黄酸化物が水蒸気と反応して硫酸を形成し、これがエコノマイザの伝熱面に付着して腐食を引き起こすことがあります。腐食が進行すると、エコノマイザの性能が低下し、最悪の場合、装置の交換が必要になることもあります。

腐食対策として、耐酸性の高い材料を使用することや、燃料の選定に注意することが求められます。

設置スペースの制約

エコノマイザの設置には一定のスペースが必要です。既存の設備にエコノマイザを追加する場合、設置場所の確保が課題となることがあります。

特に、限られたスペースしかない工場や施設では、他の設備や配管との干渉を避けながら設置場所を確保することが難しい場合があります。このため、エコノマイザの導入が現実的でないケースも存在します。

まとめ

  • エコノマイザはボイラーの排ガスと給水を熱交換させるもの。
  • 酸露点に注意する必要がある。
  • 空気予熱器は排ガスと燃焼空気を熱交換させるもの。

小型ボイラの場合、エコノマイザは、標準で設置されている場合がほとんどですが、まれに設置されていない場合もあります。

費用対効果が非常に大きいので、新規で購入される場合はエコノマイザの設置は必須と考えて良さそうです。

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  • この記事を書いた人

エコおじい

プラントエンジニア兼Webライターです。「工業技術をどこよりも分かりやすく解説する」をテーマに2017年からブログ、Youtubeで情報発信をしています。ライティングなどのお仕事のご相談はXのDMからお願いします。

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