ボイラー

【ボイラー】プライミングとフォーミングの違い

ボイラーは、産業や日常生活で広く使用される重要な装置です。

その中で、プライミングとフォーミングという現象は、ボイラーの効率と安全性に影響を及ぼす重要な問題です。本記事では、プライミングとフォーミングの違い、これらが引き起こす悪影響、そしてそれらを防ぐための対策について解説します。

プライミングとフォーミングの違い

プライミングとフォーミングは、いずれもボイラー内で発生する現象ですが、それぞれ異なるメカニズムと影響を持っています。

プライミングとは

プライミングは、ボイラーの水位が急激に変動し、蒸気とともに水がボイラー外に運ばれてしまう現象です。

通常、ボイラー内で生成された蒸気は水から分離され、乾いた蒸気として供給されるべきですが、プライミングが発生すると、水滴が蒸気に混入し、蒸気の品質が低下します。この現象は、ボイラーの運転条件や水質管理が適切でない場合に発生しやすくなります。具体的には、ボイラー内の水の急激な沸騰や圧力変動が原因となります。

これは、炭酸水を振ってから蓋を開けると中の液体があふれ出すことに似ています。

  1. 炭酸水を振ると、溶けていた二酸化炭素が気化して内圧が上がる
  2. 蓋を開けることで一気に内圧が下がる
  3. 液体が泡立ち、あふれ出す

これがボイラーで発生するのがプライミング現象です。

フォーミング

フォーミングは、ボイラー内で泡が生成され、その泡がボイラーの表面に付着する現象です。泡が形成されることで、蒸気の分離が困難になり、蒸気の品質が低下します。

フォーミングの原因は、水中に含まれる不純物や有機物の存在です。これらの物質がボイラー水中で泡を形成し、その泡が持続することでフォーミングが発生します。特に、油分や洗剤などの有機物がボイラー水に混入すると、フォーミングのリスクが高まります。

フォーミングでイメージするのは、石鹸や洗剤を溶かした水に空気を入れると泡立つというイメージが近いです。

  1. 水は空気が入っても表面張力によって泡がすぐ消える
  2. 石鹸水や洗剤が混ざると界面活性によって水の表面張力が下がる
  3. 空気が入ると泡立つ

ボイラー水中に不純物が混じることによって泡立ちが発生するのがフォーミングです。

石鹸の原料は油脂なので、感覚的にも理解できるかと思います。

プライミング、フォーミングが与える影響

プライミングやフォーミングはボイラーの効率と安全性に直接的な悪影響を及ぼします。

蒸気の品質低下

プライミングとフォーミングの最も直接的な影響は、蒸気の品質の低下です。

プライミングが発生すると、蒸気とともに水滴がボイラー外に運ばれます。これにより、蒸気の乾き度が低下し、熱交換器などの加熱効率が低下します。

フォーミングでは、泡がボイラーの加熱面に付着し、蒸気の分離が困難になります。その結果、泡とともに不純物が蒸気に混入し、蒸気の品質がさらに低下します。

機器の腐食や摩耗

蒸気の品質低下に伴い、機器の腐食や摩耗が進行するリスクが高まります。

プライミングによって蒸気中に含まれる水滴が蒸気タービンや配管内の金属表面に衝突すると、その衝撃で金属が削られたり、腐食が進行したりします。

フォーミングによる泡も、ボイラー内の金属表面に付着して腐食の原因となります。これらの現象は、機器の寿命を短くし、突発的な故障を引き起こす可能性があります。特に、蒸気タービンのブレードや配管内の摩耗は、重大な機器トラブルを招く可能性があります。

水撃発生リスクの増加

プライミングによって蒸気管内に水が混入すると、水撃現象が発生するリスクが増加します。水撃現象とは、蒸気管内で急激に動く水が配管に強い衝撃を与える現象で、これが繰り返されると配管が損傷したり、破裂につながることがあります。水撃現象は、高圧蒸気システムにおいて特に危険であり、配管の破損は重大な事故につながる可能性があります。

フォーミングも蒸気の流れを妨げることで水撃を引き起こす原因となり得ます。

ランニングコストの増加

プライミングとフォーミングは、ボイラーの運転コストを増加させる要因となります。

まず、蒸気の品質低下により、蒸気機器の効率が低下し、燃料消費量が増加します。さらに、機器の腐食や摩耗が進行すると、メンテナンスや修理の頻度が増え、コストがかさみます。また、水撃現象による配管の損傷や破損は、高額な修理費用を必要とします。これらの影響により、ボイラーの運転コストが大幅に増加し、経済的な負担が増すことになります。

プライミング、フォーミングの対策

プライミングやフォーミングを防ぐためには、適切な対策が必要です。

プライミング対策

プライミングの対策としては次のようなものが挙げられます。

  • ボイラーの負荷を急変させない
  • 水位を適正に保つ
  • 水質管理を行う

プライミングを防ぐためには、ボイラーの運転条件を最適化し、水位管理を徹底することが重要です。まず、ボイラーの運転圧力や温度を安定させることで、急激な圧力変動を防ぎます。急激な圧力変動はプライミングの主要な原因となるため、適切な制御システムを導入することが有効です。

また、ボイラー内の水位を適切に管理することも必要です。水位計や水位制御により、常に適切な水位を維持しましょう。

水処理装置により給水の品質を管理し、不純物や有機物の含有量を低減することも重要です。

フォーミング対策

  • 水質を監視する
  • 薬剤を添加する
  • ボイラー内部の清掃

フォーミングを防ぐためには、まず水質管理を徹底することが必要です。ボイラーに供給する水の品質を厳しく管理し、有機物や油分の混入を防ぎます。これには、水処理薬剤の使用や定期的な水質検査が含まれます。

また、フォーミングを抑制するために、ボイラー水に表面活性剤を添加することが効果的です。表面活性剤は泡の生成を抑え、既に生成された泡を分解する効果があります。

さらに、ボイラー内部を定期的に清掃し、内部に付着した汚れやスラッジを除去することも重要です。これにより、フォーミングの原因となる不純物を取り除きます。最後に、ボイラーの運転条件を適切に維持し、過剰な負荷や急激な負荷変動を避けることで、フォーミングの発生を防ぎます。安定した運転を心がけることが、フォーミング対策の基本となります。

まとめ

  • ボイラ水を持ち出す現象にはプライミングとフォーミングがある

  • プライミング、フォーミングは発生要因が違う

  • 発生要因を理解したうえで対策をすることが重要

プライミングとフォーミングはどちらもキャリーオーバーを発生させる要因となりますが、発生要因などが違います。

対策も変わってくるので間違えないように注意しましょう。

その他ボイラーに関する記事はこちらになります。

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エコおじい

プラントエンジニア兼Webライターです。「工業技術をどこよりも分かりやすく解説する」をテーマに2017年からブログ、Youtubeで情報発信をしています。ライティングなどのお仕事のご相談はXのDMからお願いします。

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