最近、ボイラーの燃料で重油を使用しているところが減り、都市ガスやLPガスなどを使用する工場が増えてきました。
このような燃料転換がなぜ進むのか、今回はボイラーを重油からガス炊きに変更するメリットについて書いてみたいと思います。
こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。
1. ガス炊きボイラーとは?
ボイラーは、燃料を燃焼させて水を蒸気に変化させる機器ですが、この燃料に重油を使用する場合は重油炊きボイラー、LPG(液化石油ガス)やLNG(液化天然ガス)などのガスを使用する場合はガス炊きボイラーといいます。
以前まではガスの価格が高く、重油が安かったため、重油炊きボイラーが主流でしたが、最近ではガスを燃料としたボイラーも増えてきています。
2. ガス炊きボイラーのメリット
重油からガスに変換すると次のようなメリットがあります。
2-1. 燃焼効率が高い
液体燃料に比べ、気体燃料では空気と交じりやすく燃焼効率が高くなります。
これによって、すべての燃料を燃焼させるために必要な過剰空気量を減らすことが出来ます。
過剰空気を減らし、供給する空気の量を理論空気量に近づけることで、排ガスとしての熱損失を低減させることが出来ます。
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2-2. 排ガスの回収温度を下げられる
LPGやLNGでは、重油に比べ含有する硫黄分が少なく、エコノマイザなどで回収できる排ガスの温度を低下させることが出来ます。
これにより、ボイラー給水の温度を高めることができ、燃料代を削減することが出来ます。
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2-3. CO2削減になる
ガス燃料を使用することで得られる省エネ効果により、燃料代削減になるとともに、CO2排出量を削減することが出来ます。
環境省が定める温対法により、事業者は毎年CO2排出量を政府に提出する義務がありますが、この値を低減させ、温暖化の防止にもつながります。
2-4. すすによる効率低下を防げる
重油にくらべ、気体燃料は燃焼時に発生するすすが少なく、ボイラーの伝熱面を汚しにくく、ボイラー効率の低下を防止します。
重油を使用する場合は、定期的にスートブロー(すす吹き)などを実施することでこれを防ぎます。
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2-5. 現場環境が良くなる
重油は液体燃料のため、何かのタイミングで飛散すると工場の床などが油まみれになり環境的によろしくありません。
工場において、もっとも重視しなければならない「安全」が脅かされることになります。
2-6. 補助金が適用される
このような理由により、政府が積極的に燃料転換の補助金を出しています。
もし、燃料転換を考えられる方であれば、地域の代理店などに相談し、補助金情報の有無を聞いてみるのも一つのてではないでしょうか?
3. まとめ
最近、重油からガスに燃料を転換する事業者が多いように思いますので、簡単にメリットをまとめてみました。
但し、実際に変換する場合には燃料の調達コストや、設備の更新などの費用も掛かり、条件によってメリットデメリットも様々なので、いろいろな条件を考慮しながら検討することが必要になります。