タービン

【タービン】背圧タービンとは?メリットや制御方法について解説

燃料のエネルギーを電気と熱として有効に利用する方法の一つに背圧タービンがあります。

今回は蒸気タービンの一つ、背圧タービンについて解説したいと思います。

背圧タービンとは

背圧タービンは蒸気タービンの一種で排気圧力が大気圧以上のタービンです。

排気をプロセス加熱として利用することで、全体の熱効率を大幅に向上させることが出来ます。コージェネレーションシステムやコンバインドサイクルなどで良く利用されているタービンです。

また、大型のプラントでは発電目的以外でも電動ポンプと同じ用途で並列に設置し、停電時のバックアップとして利用している例も良くあります。

【熱機関】コージェネレーションとコンバインドサイクルの違いは?

続きを見る

【熱機関】コージェネレーションを導入するメリット、検討条件は?

続きを見る

背圧タービンのメリット

背圧タービンのメリットはプロセスでの利用先がある場合にエネルギー効率が上がるという点です。

まず、復水タービンを利用して発電する場合を考えます。この場合、次のような一般的なランキンサイクルの図になります。

背圧タービン_1

  1. ボイラーで発生させた蒸気を復水タービンに入れる。
  2. 復水器で凝縮させて高い真空を作り出す。
  3. 復水はポンプでボイラーへ還す。
  4. 復水器で奪った熱は冷却塔で冷却する。

この時、供給する燃料のエネルギーを100とした場合、電力として取り出せるエネルギーは大体30程度で残りは小さな損失を無視すると、冷却塔で冷却されて大気に捨てられます。電気として取り出すには非常に効率的ですが、エネルギーとしては無駄も多くなります。

一方で背圧タービンの場合は次のような図になります。

背圧タービン_2

  1. ボイラーで発生させた蒸気を背圧タービンに入れる。
  2. 背圧タービンから排気された蒸気をプロセス加熱に利用する。
  3. 復水を回収し、ポンプでボイラーへ還す。

この時、先程と同様に燃料のエネルギーを100とした場合、電力としては10程度しか取り出せませんが、加熱に60のエネルギーを利用するので全体として70のエネルギーを有効に利用できたということになります。

このように、背圧タービンは排気の利用先がある場合にとても有効です。また、機構としては同じですが、電力としてではなく液体を輸送するポンプとして動かしたり、空気を圧縮するエネルギーとして利用したりするものもあります。

【熱機関】ランキンサイクルとは?わかりやすく徹底解説します

続きを見る

背圧タービンの制御方法

背圧タービンには様々な制御方法がありますが、代表的なものを紹介します。

排気圧力一定制御

タービン二次側の排気圧力が一定になるように、一次側のガバナによりタービンの蒸気飲み込み量を調整します。タービンの出力は成り行きになりますが、排気圧力が一定になるので、二次側の利用先で安定した加熱を行うことが出来ます。一般的に良く利用されている方法です。

出力一定制御

背圧タービンの出力(仕事)が一定になるように制御します。排気圧力は成り行きになりますが、出力を一定にできるため、出力制限がある場合やポンプとして利用するときに利用されます。排気を他の用途で利用する場合は、他の制御ラインを利用するなどで圧力を一定にする機構を検討する必要があります。

あまり聞いたことはありませんが、制御としては一次圧力を一定にする制御もやろうと思えばできます。どの制御にすべきかは何をするかによって使い分ける必要があります。

【タービン】蒸気タービンの制御方法まとめ

続きを見る

抽気背圧タービンとは

背圧タービン_3

背圧タービンの中でも、排気ラインが複数あるものを抽気背圧タービンと呼びます。1台のタービンで複数の圧力の蒸気を取り出せるため、複数の系統に排気を行いたいときに有効です。利用先での状況に合わせ抽気量を調整することができるのも抽気背圧タービンの特徴です。

背圧タービン_4

一方で、抽気復水タービンもありますが、これは最終段の排気が復水器に入っているものを言います。抽気背圧タービンと名前が似ているので分かりにくいですが、排気圧力が違うというのが特徴です。

【タービン】内部抽気圧力制御と外部抽気圧力制御の違いとは?

続きを見る

まとめ

  • 背圧タービンは排気圧力が大気圧以上のタービン。
  • 排気圧力一定制御や出力一定制御が一般的。
  • 抽気背圧タービンは抽気が数種類ある背圧タービンのこと。

背圧タービンは復水タービンに比べると電力として取り出せる量は少ないですが、全体としては効率が上がります。とても良く使われているタービンなので特徴を抑えておきましょう。

タービン

2024/7/8

【タービン】軸流タービンとは何か、メリットデメリットを解説

発電所などで一般的に利用されている復水タービンよりも効率の良いとされているタービンとして軸流タービンがあります。 本記事では、軸流タービンの基本構造と仕組み、そのメリットとデメリットについて解説します。 軸流タービンとは 軸流タービンは、流体が軸に沿って直線的に流れるタイプのタービンです。 流体(通常はガスや蒸気)は、タービンのブレードを通過しながら、そのエネルギーを回転運動し、発電や機械の駆動を行います。 軸流タービンは、流体の運動エネルギーを直接回転運動に変える効率的な設計が特徴で、主に火力発電所など ...

ReadMore

タービン

2023/12/31

【タービン】復水器とは何か、種類や役割について解説

火力発電所などに設置される非常に重要な熱交換器の一つに復水器があります。 この記事では、復水器とは何か、その役割や種類について解説します。 復水器とは 復水器とはタービンで仕事を終えた蒸気を冷却し、凝縮させるための大型の熱交換器です。 ランキンサイクルで発電を行う場合に利用されます。一般的には冷却水を循環させて蒸気の持つ凝縮潜熱を冷却塔で排熱するのがほとんどですが、水源が確保できないなどの理由から空気冷却などを行う場合もあります。 復水器の器内をどれだけ高真空にできるかによって発電所全体の効率が大きく変わ ...

ReadMore

タービン

2022/4/10

【タービン】抽気復水タービンとは、メリット、制御方法について解説

火力発電プラントで良く利用されているタービンに抽気復水タービンがあります。 この記事では、抽気復水タービンとは何か、メリットや制御方法について解説します。 抽気復水タービンとは 抽気復水タービンとは蒸気タービンの中段から低圧の抽気蒸気を取り出すことができるタービンです。最終段の排気は復水器により復水に戻ります。 主蒸気を全量復水器に送る復水タービンと比べると電力として取り出せる仕事は減りますが、抽気蒸気を加熱源として給水の加熱やプロセス等に利用することでプラント全体のエネルギー効率を向上させることが出来ま ...

ReadMore

タービン

2022/2/28

【タービン】蒸気タービンの制御方法まとめ

蒸気タービンの制御は用途によって様々ですが、大きく分けるといくつかのパターンに分類することが出来ます。 この記事では、蒸気タービンの制御方法についてまとめています。 蒸気タービンの制御方法 蒸気タービンの制御方法は大きく分けると次の4パターンに分かれます。 発電電力制御 発電用の蒸気タービンで最も多く利用されているのが発電電力制御です。発電機の出力が設定値になるように、ガバナ(制御弁)を開閉させ、蒸気タービンに供給する蒸気量を調整します。 主に売電を目的とした発電プラントで用いられます。発電機の出力を一定 ...

ReadMore

タービン

2022/8/27

【タービン】内部抽気圧力制御と外部抽気圧力制御の違いとは?

抽気タービンには抽気蒸気の圧力を制御する方法として内部抽気圧力制御と外部抽気圧力制御があります。 今回はそれぞれの違いについて解説します。こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。 内部抽気圧力制御とは 内部抽気圧力制御は蒸気タービンのユニット内に圧力制御弁を組み込み、抽気圧力を一定にする制御方式です。図に表すと次のようになります。 内部抽気圧力制御の場合、抽気圧力を一定にするようにユニット内部の制御弁が動くので、タービン中段から取り出す抽気圧力が一定になります。一方 ...

ReadMore

  • この記事を書いた人

エコおじい

プラント業界一筋のエンジニアです。「工業技術をどこよりも分かりやすく解説する」をテーマに2017年からブログ、Youtubeで情報発信をしています。保有資格はエネルギー管理士と電験三種です。

効率的に技術系資格取得を目指す方必見!当サイトおすすめの通信講座

最短で資格を取得するためには、いかに効率よく学習するかが最も重要です。

参考書だけでは分かりにくいという方には、全て解説動画で学べるSATの通信講座がおすすめです。日々の通勤時間など隙間時間を利用して無理なく効率的に学習を進めることが出来ます。

超シンプルで分かりやすいSAT『エネルギー管理士』

エネルギー管理士の通信講座です。イラストを多用したシンプルで分かりやすいテキストと動画がセットになっています。

他社と比較すると価格もお手頃で、特に熱力学などを学んだことのない初学者におすすめの通信講座です。

熱分野レビュー 電気分野レビュー 他社との比較

エネルギー管理士以外にも電験や衛生管理者など25の資格の通信講座を展開しています。

最短で電験取得を目指すならSAT『電気主任技術者講座』

イメージしにくい交流回路についても多様なイラストと解説動画で詳しく解説してくれます。独学ではなかなか勉強が進まないという方に特におすすめの講座です。電気について詳しく学べるので実務で電気を使うという方には最適な教材です。

電験三種レビュー 他社との比較

技術系資格の最高峰SAT『技術士合格講座』

論文添削やZOOMマンツーマン指導が付いており、面接対策もWeb上で行うことが出来ます。また、テキストは毎年改定されているので常に最新の教材で勉強することが出来ます。

-タービン

© 2024 エネ管.com Powered by AFFINGER5

エネ管.comをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む