燃料のエネルギーを電気と熱として有効に利用する方法の一つに背圧タービンがあります。
今回は蒸気タービンの一つ、背圧タービンについて解説したいと思います。
背圧タービンとは
背圧タービンは蒸気タービンの一種で排気圧力が大気圧以上のタービンです。
排気をプロセス加熱として利用することで、全体の熱効率を大幅に向上させることが出来ます。コージェネレーションシステムやコンバインドサイクルなどで良く利用されているタービンです。
また、大型のプラントでは発電目的以外でも電動ポンプと同じ用途で並列に設置し、停電時のバックアップとして利用している例も良くあります。
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背圧タービンのメリット
背圧タービンのメリットはプロセスでの利用先がある場合にエネルギー効率が上がるという点です。
まず、復水タービンを利用して発電する場合を考えます。この場合、次のような一般的なランキンサイクルの図になります。
- ボイラーで発生させた蒸気を復水タービンに入れる。
- 復水器で凝縮させて高い真空を作り出す。
- 復水はポンプでボイラーへ還す。
- 復水器で奪った熱は冷却塔で冷却する。
この時、供給する燃料のエネルギーを100とした場合、電力として取り出せるエネルギーは大体30程度で残りは小さな損失を無視すると、冷却塔で冷却されて大気に捨てられます。電気として取り出すには非常に効率的ですが、エネルギーとしては無駄も多くなります。
一方で背圧タービンの場合は次のような図になります。
- ボイラーで発生させた蒸気を背圧タービンに入れる。
- 背圧タービンから排気された蒸気をプロセス加熱に利用する。
- 復水を回収し、ポンプでボイラーへ還す。
この時、先程と同様に燃料のエネルギーを100とした場合、電力としては10程度しか取り出せませんが、加熱に60のエネルギーを利用するので全体として70のエネルギーを有効に利用できたということになります。
このように、背圧タービンは排気の利用先がある場合にとても有効です。また、機構としては同じですが、電力としてではなく液体を輸送するポンプとして動かしたり、空気を圧縮するエネルギーとして利用したりするものもあります。
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背圧タービンの制御方法
背圧タービンには様々な制御方法がありますが、代表的なものを紹介します。
排気圧力一定制御
タービン二次側の排気圧力が一定になるように、一次側のガバナによりタービンの蒸気飲み込み量を調整します。タービンの出力は成り行きになりますが、排気圧力が一定になるので、二次側の利用先で安定した加熱を行うことが出来ます。一般的に良く利用されている方法です。
出力一定制御
背圧タービンの出力(仕事)が一定になるように制御します。排気圧力は成り行きになりますが、出力を一定にできるため、出力制限がある場合やポンプとして利用するときに利用されます。排気を他の用途で利用する場合は、他の制御ラインを利用するなどで圧力を一定にする機構を検討する必要があります。
あまり聞いたことはありませんが、制御としては一次圧力を一定にする制御もやろうと思えばできます。どの制御にすべきかは何をするかによって使い分ける必要があります。
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抽気背圧タービンとは
背圧タービンの中でも、排気ラインが複数あるものを抽気背圧タービンと呼びます。1台のタービンで複数の圧力の蒸気を取り出せるため、複数の系統に排気を行いたいときに有効です。利用先での状況に合わせ抽気量を調整することができるのも抽気背圧タービンの特徴です。
一方で、抽気復水タービンもありますが、これは最終段の排気が復水器に入っているものを言います。抽気背圧タービンと名前が似ているので分かりにくいですが、排気圧力が違うというのが特徴です。
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まとめ
- 背圧タービンは排気圧力が大気圧以上のタービン。
- 排気圧力一定制御や出力一定制御が一般的。
- 抽気背圧タービンは抽気が数種類ある背圧タービンのこと。
背圧タービンは復水タービンに比べると電力として取り出せる量は少ないですが、全体としては効率が上がります。とても良く使われているタービンなので特徴を抑えておきましょう。