流量計の種類や測定原理によっては、他のデータによる補正が必要なケースがあります。
今回は蒸気流量計の補正の必要有無について、解説します。
こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。
蒸気流量計の補正とは?
蒸気の計測を行う流量計にはいくつかの原理があります。
差圧式、渦式、電磁式などがメジャーな型式と言えます。ここの原理については過去の記事でまとめていますので、ぜひご覧ください。
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どのタイプも体積を測定するタイプの流量計です。質量を測定するコリオリ式流量計は蒸気には対応していません。
さて、蒸気という気体は温度によって密度が異なることが知られています。例えば100℃の蒸気は約600g/m3なのに対し、180℃の蒸気は約5100g/m3の密度です。
同じ体積でも、密度変化により重さが変わるため、質量で蒸気を測定するためには温度による補正が必要となります。
言うまでもありませんが、蒸気のコスト計算は、燃料代だけでなく水の使用量も関係するため、蒸気も質量計算する必要があります。
実際には、流体の体積を測る測定部の他に、温度を測定する熱電対などが流量計に付属していることが多いです。もしくは流量計の近くに温度計を設置します。
2つのデータを、PLCなどの計算機内で蒸気表の補正式に当てはめた計算値、つまり蒸気質量が出力されます。
余談ではありますが、なぜ蒸気は補正を気にする必要があるのでしょうか?
他のガスの使用とは異なり、多くの場合蒸気は飽和状態で用いられます。そのため、温度変化による圧力変化、つまり密度変化の変動が大きいです。
密度の変化影響を受けない(小さい)種類の蒸気として、過熱蒸気があります。こちらを読んでいただければ、飽和状態とそれ以外の気体の性質の違いが理解できるかと思います。
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補正機能がないとどうなる?
温度による補正を使用しないまま蒸気流量計を使っていると、正しく使用量を測ることができません。
流量計の初期設定で、蒸気の温度もしくは圧力を設定するはずですが、その値より実際には大きい温度の蒸気が流れていると流量が過少に計測され、小さい温度だと過大に計測してしまうことになります。
流量計を設置している場所の温度(圧力)変化が大きい場合には、補正機能を正しく使う必要があると言えます。
蒸気温度が10℃変わると、蒸気の密度は1m3あたり1kg前後変わるため、質量計算した際には大きな違いが出ます(温度によって変化率が異なります、詳しくは蒸気表をご確認ください)。
一方で常に一定の温度の場所、例えば蒸気のメイン配管の場合には圧力変動が小さいと考えられるため、補正機能への設備投資は避けてもよいと言えます。
まとめ
- 蒸気は温度が変わると密度も大きく変わる
- 温度変化が大きい場所には流量計の温度補正が必要
蒸気流量計を設置している場所ごとに、必要か不要か判断するのがよいでしょう。
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