ボイラーのカタログを見ていると、相当蒸発量という言葉がよく出てきます。
今回は、相当蒸発量とは何かについて解説してみたいと思います。
こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。
相当蒸発量とは
相当蒸発量とは100℃の飽和水を100℃の飽和蒸気にすると想定した際の能力を表します。
ボイラーの能力を表すには、1時間あたりにどれだけの蒸気を発生させることが出来るかというkg/hやton/hが用いられることが多いです。
しかし、最大能力は給水の温度や蒸気の設定圧力によって大きく変化するので比較するために相当蒸発量という指標が用いられます。(※ 相当蒸発量は基準蒸発量や換算蒸発量ともいわれ、それぞれの意味は同じになります。)
相当蒸発量は次の式で計算することが出来ます。
$$Ge=\frac{G(h2-h1)}{2257}$$
Ge:相当蒸発量、G:実際蒸発量、h2:発生蒸気のエンタルピー、h1:給水のエンタルピー
この時、分子は実際の加熱能力、分母は大気圧100℃の蒸気の潜熱を表します。
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相当蒸発量と実際蒸発量の換算
ボイラーのカタログなどを見る場合は、相当蒸発量で能力を比較することが出来ますが、実際にボイラーを使用する場合に重要なのは実際蒸発量です。
例えば相当蒸発量が2000kg/hのボイラーで、実際蒸発量を簡易的に計算する場合は、次の手順で算出できます。
- ボイラーの能力をkJ/hで表す。
- 実際の蒸気1kg/hを発生させるのに必要な熱量を計算する。
- 1を2で割る。
まず、相当蒸発量からボイラーの能力を計算します。
今回の場合、100℃の飽和水を加熱して1時間に2000kg/hの蒸気を発生させることができるのでボイラーの能力は次のようになります。
$$2257×2000=4514000kJ/h$$
次に、実際の蒸気1kg/hを発生させるのに必要な熱量を算出します。ボイラーの設定圧力が0.8MPaG、給水温度が20℃だとすると、それぞれのエンタルピーは蒸気表から
- 0.8MPaGの蒸気:2773 kJ/kg
- 20℃の水:84 kJ/kg
これの差が求めたい値になるので
$$2773-84=2689kJ/kg$$
よって、ボイラーの能力を実際に蒸気を発生させるのに必要な熱量で割ると
$$4514000÷2689≒1679kg/h$$
ということになります。
相当蒸発量に対して16%も小さい値が出ています。この式からも、ボイラーの能力が同じであれば、給水の温度が高い方が発生できる蒸気量は増えるということがわかります。
使用条件によって、相当蒸発量と実際蒸発量はこれだけの差があるので、選定の際には注意しましょう。
ただし、ボイラーの効率は給水温度や燃料の種類など、様々な条件で変わってくるので、精緻な値が知りたいという場合はボイラーメーカーに問い合わせる必要があります。
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まとめ
- 相当蒸発量は100℃の飽和水を100℃の飽和蒸気にすると想定した際の能力。
- 相当蒸発量と実際蒸発量の変換は計算により算出できる。
- 精緻な値はボイラー効率が影響してくるので、メーカーに問い合わせが必要。
相当蒸発量と実際蒸発量の違いについてでした。
熱関係の機器は、電気と違い、実際の使用環境が機器選定時と大きく異なることが多いです。選定を間違えないよう、十分に注意しましょう。
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