配管の設計を行う際、配管膨張について検討するかと思います。
フレキシブルチューブと伸縮継手って似た用途だけどどう使い分けるの?という疑問をお持ちの方も多いと思いますので、今回は伸縮継手とフレキシブルチューブの使い分けについて解説してきたいと思います。
フレキシブルチューブとは
フレキシブルチューブとは、その名の通り柔軟性のある配管のことで、各種のステンレスで製作されているものが多いです。
配管部分はベローズ(蛇腹)構造になっており、配管誤差の調整、振動の吸収に用いられる他、製品によっては直角に曲げたりU字構造にしたりして接続することも可能です。
ベローズの構造により用途が分けられていることがあるので、メーカーの仕様をよく読んで選定してください。
ベローズは周囲に、金属線・板を編み込んだブレードで保護されています。1インチほどから350A程度までのサイズバリエーションがあります。
伸縮継手とは
伸縮継手とは、主に配管の軸方向の膨張・収縮の影響を吸収するための継手のことです。
金属配管は、高温流体を流したり、直射日光に晒されたりする環境では数cmも膨張するため、膨張・収縮の影響を考慮した配管設計・施工が不可欠です。伸縮継手には主に2タイプあります。
1つ目はスリーブ形です。構造としては外側の筒と内側の筒の間にパッキンがあり、配管長の増減に対してパッキンが漏れを防ぎながら、2つの筒が移動します。

もう1つがベローズ形伸縮継手です。配管の膨張をベローズで吸収する原理をしていて、その構造により自由型、外圧型、ヒンジ型、ユニバーサル型、シンバル型など様々なタイプがあります。以下のイラストは最もシンプルな自由型を表しています。
伸縮継手は大きなものでは、600Aほどの配管径もラインナップされています。スリーブ形の方が、一般的に伸縮量が大きく取れるとされますが、パッキン漏れの可能性はあります。
ベローズ形は完全に閉鎖され漏れの心配はありませんが、金属疲労による破損のリスクはあります。
伸縮継手とフレキシブルチューブの使い分けは?
- 配管軸方向のズレ:伸縮継手
- 配管軸方向以外のズレ:フレキシブルチューブ
用途で記載した通り、配管軸方向のズレに対しては伸縮継手、軸方向以外のズレに対してはフレキがよいと思われます。
一方で、フレキも軸方向の膨張をある程度吸収できるため、膨張が大きくない場合はフレキで対応な場合もあります。フレキは他にも、振動対策・地盤沈下対策や、配管施工の誤差吸収にも使われます。
余談ですが、ポンプと配管接続時の振動対策には、ゴム製の継手(フレキシブルジョイントなど名称)も用いられます。
まとめ
- フレキシブルチューブは柔軟性のある配管。
- 伸縮継手は軸方向の膨張・収縮を吸収する継手。
- 配管軸方向のズレに対しては伸縮継手を用いる。
- 配管軸方向以外のズレに対してはフレキシブルチューブを用いる。
2つの使い分けについてイメージできたでしょうか。
筆者の経験的には、配管サイズが小さければフレキが使われている現場が多いように思います。またベローズ形の継手は種類が多いので、よく調べた上で検討されてください。
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