工場やプラントでは、日々大量の燃料を燃焼させることでエネルギーを得ています。最近では、再生可能エネルギーの割合も増えてきましたが、それでも全体の割合だとわずか3%程度で、まだまだ化石燃料の重要性は以前と変わっていません。
ただし、燃焼させて熱を得るという目的は同じでも、燃料には様々な種類があり、それぞれに特徴があります。今回は、燃料とは何かについて解説します。
燃料とは
燃料とは、化学的または物理的なエネルギーを貯蔵し、それを必要に応じて放出する物質を指します。
燃料の主な役割は、エネルギーを効率的に供給することにあります。エネルギーを放出する際には、通常、燃焼などの化学反応が伴い、これにより熱や光、動力が生み出されます。
燃料は、古代から人類の生活において重要な資源であり、現代でも産業活動や交通、日常生活において不可欠な存在です。燃料の適切な利用は、持続可能な社会を築くためにも重要です。
燃料の種類
燃料はその物理的状態や起源に基づいて大きく分類されます。それぞれの燃料には、特有の性質と用途があり、使用されるシーンや目的に応じて選択されます。
固体燃料
固体燃料には、石炭、木材、バイオマスなどが含まれます。
これらの燃料は、古くから利用されており、特に石炭は産業革命以降、主要なエネルギー源として広く利用されてきました。固体燃料の特徴は、比較的低いコストで大量に貯蔵できる点にあります。
しかし、燃焼時に大量の二酸化炭素や有害物質を排出することが環境面での課題となっています。バイオマスは、再生可能エネルギーとして注目されていますが、供給量の安定性や効率性に課題があります。
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液体燃料
液体燃料の代表例には、ガソリン、ディーゼル油、重油などが挙げられます。
これらの燃料は、主に化石燃料として地下資源から採取され、精製されて利用されます。液体燃料は、エネルギー密度が高く、容易に輸送・貯蔵ができるため、自動車や航空機、船舶の動力源として広く利用されています。
しかし、有限な資源であるため、持続可能性や環境負荷が問題視されています。近年では、バイオ燃料などの代替エネルギーも開発されています。
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気体燃料
気体燃料には、天然ガス、プロパン、ブタン、水素などがあります。気体燃料は、燃焼効率が高く、燃焼時に有害物質の排出が少ないため、クリーンエネルギーとして注目されています。
天然ガスは、都市ガスとして広く使用され、家庭用から産業用まで幅広い用途で利用されています。一方、水素は、燃料電池やクリーンエネルギーの次世代のエネルギー源として期待されていますが、技術的な課題やインフラ整備の遅れが普及の妨げとなっています。
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燃料の利用目的
燃料は、その用途に応じて様々な形で利用されます。主要な利用目的には、熱源、光源、動力源、電気の4つが挙げられます。
熱源
熱源としての燃料は、最も基本的な利用形態です。
石炭、木材、天然ガスなどの燃料が燃焼することで、熱エネルギーが放出されます。この熱は、暖房や調理、工業プロセスなどで広く利用されています。
特に、石炭や木材は歴史的に暖房や金属の精錬などで重要な役割を果たしてきました。現代では、天然ガスや電気が主流となっていますが、依然として地域や用途によっては固体燃料が利用されています。
光源
燃料は、光源としても利用されます。
伝統的な例としては、油灯やガス灯が挙げられます。これらは、燃料の燃焼により光を発生させる仕組みで、電気が普及する以前は主要な光源として広く使われていました。
現在では、照明の多くが電気によるものですが、災害時や電力供給が不安定な地域では、依然として燃料を使った光源が重要です。特に、ポータブルな燃料灯やランプはアウトドア活動などでも利用されています。
動力源
燃料は、機械や車両の動力源としても重要な役割を果たしています。
ガソリンやディーゼル油は、自動車、船舶、航空機などの内燃機関で広く使用されており、これにより人や物資の移動が可能となっています。
また、天然ガスや液化石油ガス(LPG)は、バスやトラックなどの大型車両や工業用機械の燃料として利用されています。さらに、水素などの新しい燃料が、燃料電池車や電動車両の動力源として注目されています。
電気
燃料は、電力を生成するためにも利用されます。
火力発電所では、石炭、天然ガス、重油などの燃料が燃焼し、その熱エネルギーを利用して蒸気を発生させ、タービンを回して発電します。
この方法は、世界中で広く用いられており、特に石炭と天然ガスは主要な発電燃料となっています。しかし、環境負荷の観点から再生可能エネルギーへの転換が進められており、将来的にはよりクリーンな燃料が求められるでしょう。
燃料の主な成分
燃料の主な成分には、炭素、水素、酸素、窒素が含まれています。これらの成分は、燃料のエネルギー密度や燃焼特性に大きな影響を与えます。
炭素
炭素は、多くの燃料の主要成分であり、燃焼時にエネルギーを放出する重要な役割を果たします。
石炭、石油、天然ガスなど、化石燃料のほとんどは炭素を多く含んでおり、これが燃焼して二酸化炭素(CO2)を生成します。
炭素含有量が高い燃料ほど、エネルギー密度が高くなりますが、同時にCO2の排出量も増加します。現在、CO2の排出を抑えるための技術開発や、代替エネルギーの利用が進められています。
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水素
水素は、クリーンエネルギーとして注目されている燃料成分です。
燃焼時に水しか生成しないため、環境負荷が低いのが特徴です。水素を主成分とする燃料は、燃料電池車や一部の発電所で利用されています。
また、液体燃料や気体燃料の一部にも水素が含まれており、その量が燃焼効率や発熱量に影響を与えます。しかし、水素の製造・貯蔵・輸送には高度な技術とコストが必要であり、普及にはまだ課題が残されています。
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酸素
酸素は、燃焼反応において必要不可欠な成分です。燃料中に含まれる酸素は、燃焼効率を高める役割を果たし、完全燃焼を促進します。
特に、アルコール類やバイオマス燃料などには酸素が含まれており、その結果、クリーンな燃焼が実現します。
しかし、酸素含有量が高すぎると燃料のエネルギー密度が低下するため、バランスが重要です。燃焼に必要な酸素は、通常、大気中から供給されますが、一部の特殊な燃料では酸素を含む物質が添加されています。
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窒素
窒素は、燃料中に微量含まれる成分であり、燃焼過程で窒素酸化物(NOx)を生成する原因となります。
NOxは大気汚染物質の一つであり、環境や健康に悪影響を及ぼすため、その排出削減が求められています。燃料の精製過程では、窒素含有量を低減する技術が用いられており、特にクリーンディーゼルやガソリンなどでは窒素含有量が厳しく管理されています。また、NOxの排出を抑えるための触媒技術も進化しています。
燃料に求められる条件
ゴミもその辺に落ちている落ち葉もすべて燃やせばエネルギーを発生するので燃料だと言えます。
ただ、工場などで燃料として使用する場合には、製品を安定的に製造するために次のような条件を満たす必要があります。
- 安定供給
- 貯蔵、運搬、取り扱いが容易
- 発熱量が大きい
- 環境面で問題ない
安定供給
災害や情勢などにより、燃料の供給が止まってしまうと工場やプラントの機能が停止してしまうため、燃料として扱う際には安定供給が必須になります。また、そのためには世界中に豊富に分散して確保できる先があるということも重要になります。
実際には、安定供給が可能な燃料をいくつか組み合わせ、分散させることで事業継続性(BCP)を高めていきます。
貯蔵、運搬、取り扱いが容易
燃料は採掘した後、運搬し、貯蔵しておく必要があります。
そのため、貯蔵、運搬のコストをできるだけ抑えるということが求められます。
燃料としては優秀な天然ガスなどの気体燃料がなかなか普及できなかったのも、貯蔵、運搬にコストがかかるということが理由でした。最近では、冷凍技術などの高まりにより貯蔵、運搬が容易になったことで普及が加速しています。
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発熱量が大きい
燃料として扱うためには、少ない量で多くのエネルギーを発生させることが重要です。
単位質量あたりの燃料を燃焼させた際に発生する熱量には高位発熱量と低位発熱量がありますが、燃焼した際に水蒸気は排ガスとして排出されるため、低位発熱量の大きい燃料が優秀な燃料ということになります。
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環境面で問題がない
燃料を燃焼させると、SOxやNOxが発生することがあり、環境に悪影響を与える場合があります。
そこで、環境的に問題がないように燃焼空気を過剰に供給したり、硫黄分の少ない燃料に転換したりという対策が必要になります。
これは、排ガスの熱回収や省エネルギーにも大きく影響してきます。
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まとめ
- エネルギーを発生するものはすべて燃料と呼ばれる。
- 固体燃料、液体燃料、気体燃料がある。
- 工場で使用するには4つの条件を満たす必要がある。
燃料にはさまざまな種類があり、それぞれ特徴が異なります。それぞれの違いを理解していきましょう。