近頃では、企業も環境問題を意識するようになりボイラーなどの燃料をガス化することが増えています。燃料をガス化すれば、液体や固体燃料に比べて低い空気比で燃焼させることができ、さらに硫黄分をほとんど含まないので、酸性雨などの環境問題対策になります。
また、エコノマイザなどを利用する際も排ガスの酸露点を気にすることなく限界まで排ガスの熱を取れるので省エネルギーにもなります。実際に燃料が転換される際には、ガス燃料のメリットと燃料そのもののコスト上昇のデメリットを考えながら供給されます。
今回は、ガス燃料の中でよく利用されるLNG、LPG、都市ガスの違いについて書いていきたいと思います。
こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。
1. 液化天然ガス(LNG)
天然ガスは、自然界に存在する炭化ガスで常温、常圧では気体として存在しています。これを-162℃で冷却し、液化させることで運搬を容易にしたものを液化天然ガス(LNG)と呼びます。-162℃の天然ガスは液化させることで体積が約250分の1になります。
陸上の場合は気体の状態で、パイプラインを通して輸送されますが海を越える場合は、液化させたものをタンカーで輸送します。2018年現在の天然ガスの生産量は1位アメリカ、2位ロシア、3位イラン、4位カタールという結果になっています。
天然ガスの成分はほとんどがメタンCH4ですが、一部C2H6やC3H8以上の高級炭化水素を含む場合もあります。
もともとは輸送コストが高かったのですが、輸送技術の発展により近年燃料として利用する国が増えています。燃料を石油のみに依存していると、政情問題に大きく左右されてしまうので供給元の分散は非常に重要です。
2. 液化石油ガス(LPG)
液化石油ガスは、天然ガスのように自然界に存在するものもあれば、石油を精製する際に発生する副生ガスもあります。
石油を精製する場合、様々な炭化水素が混合された原油を蒸留などによって分けていきます。最終亭にはガソリンなどになりますが、その際にメタンやエタンなどの軽い炭化水素は気体として発生してきます。これを加圧・冷却により液化させたものが液化石油ガス(LPG)です。
国内でも石油精製を行う会社が積極的に販売や利用を促進する活動を行っています。都市ガスがない地域の過程でプロパンガスが利用されますが、これも液化石油ガスの一種です。
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3. 都市ガス
都市ガスは、街全体にガス配管を巡らせることで家庭用や工業用に利用できるようにしているガスです。主にある程度の人口が密集している地域で利用されています。プロパンガスに比べ、ボンベに詰めて各家庭まで運搬するコストがかからないので安くなります。
都市ガスは天然ガスや石炭ガス、液化石油ガスなど様々なガスを混合させ、規格に合った所定の熱量で供給されます。
代表的な都市ガスとしては「13A」と呼ばれるものがあります。13Aはメタン88%、エタン5.8%、プロパン4.5%、ブタン1.7%を含んでいます。この13という数字はウォッベ指数を表しています。ウォッベ指数は2017年の試験に出ましたのでぜひ覚えておいてください。
ウォッベ指数
ガスの空気に対する比重aと単位体積当たりのガスの総発熱量Hを用いてガスの性質を表すもの。燃焼器のノズルから噴出するガスの速度が、ガスの比重に影響を受けることを補正した燃焼性指標の一つ。
$$WI=H\sqrt{a}$$
4. まとめ
- LNG:天然のガスを液化させたもの
- LPG:石油由来の天然ガス、石油精製の副生ガス
- 都市ガス:人口で作り出すもの
気体燃料には、ほかにも油分解ガスやコークス炉ガスなど様々なものがあります。ただ、一般的によく利用されるのは上の3つなのでしっかり理解しておきましょう。