プラントや工場などで廃棄されている熱を熱交換器で回収したいときその熱交換器がどの程度のサイズになるのか大まかな値を計算したいという事があります。
今回は、そんな時に使える熱交換器の伝熱面積計算方法について解説したいと思います。
1. 熱交換器の伝熱面積計算方法
熱交換器とは、温度の低い物質と温度の高い物体を接触させずに熱のやり取りをさせる機器です。
90℃ 1000kg/hの水を20℃ 2000kg/hで50℃まで冷やすためには何m2の熱交換器が必要になるか計算してみたいと思います。
Step.1 冷却に必要な熱量を計算する
1000kg/h 90℃の水を50℃まで冷却するために必要な熱量は次の式で計算することが出来ます。
この時、4.19kJ/kg℃は水の比熱です。この計算式から、1時間当たり167600kJの熱量を奪わなければいけないと分かります。この熱量は高温水側から冷却水側に受け渡されます。では、冷却水の温度は何℃になるのでしょうか?
Step.2 冷却側の出口温度を計算する
20℃ 2000kg/h冷却側の熱交換器出口温度をTcとすると、熱量の計算は次の式であらわされます。
$$Tc=40[℃]$$
よって、冷却水の出口温度は40℃になるという事が分かります。次にこの熱交換を行うのに必要な熱交換器の伝熱面積を計算します。
Step.3 熱交換器の伝熱面積を計算する
熱交換器で交換される熱量は次の式で表すことが出来ます。
Q:熱量(kJ)
A:伝熱面積(m2)
K:熱貫流率(kJ/m2h℃)
熱貫流率Kは総括伝熱係数Uとも呼ばれ、熱の伝わりやすさを表します。Kは物質ごとに固有の値が決められています。厳密に計算することも可能ですが、ここでは簡易な値を用います。
例えば水の場合は5000~10000kJ/m2h℃で計算することが出来ます。今回は安全を見て5000kJ/m2h℃を用います。
⇒ こちらの資料参照(外部リンク)
この式から、先程の交換熱量を利用してAを計算します。
先程の式を変換すると
ΔT(LMTD)は対数平均温度差を表しています。対数平均温度差については次の記事を参考にしてください。
【熱交換器】対数平均温度差LMTDの使い方と計算方法
今回の場合、向流で計算すると対数平均温度差は39℃になります。
それぞれの値を代入すると
$$A=0.86m2$$
よってこの熱交換を実施する場合は伝熱面積0.86m2以上の熱交換器が必要になります。
2. 伝熱面積が分かっている場合
熱交換器を選定するために計算するときは先程のやり方で問題ありませんが、熱交換器が既に決まっていてどのように熱交換されるのか知りたい場合はどうすればいいのでしょうか?
入口は先程と同じ条件で計算してみたいと思います。まず、熱交換器の伝熱面積を1.5m2だとします。
この時、未知数は高温側の出口温度Thと低温側の出口温度Tcという事になります。高温側と低温側の熱交換の式を立てます。
次に熱交換器の式を立てます。
未知数が2つで式が2つできたのでThとTcは算出することが可能です。
ただ、対数平均温度差の計算を実施しなければいけないので、実際に計算することはExcelを用いて計算します。今回の場合はTh=38℃ Tc=46℃という計算結果になりました。
伝熱面積が大きくなった分、より多くの熱交換が行われ、高温側の出口温度が低下しており、逆に低温側の出口温度は上昇しています。
3. まとめ
- 熱交換器は熱量を交換する機器
- 流体側のmcΔTと熱交換機のAUΔT[LMTD]を計算する
- 両者が等しくなるように方程式を立てる
いかがだったでしょうか?熱交換器の計算は一見複雑に見えますが、基本はこれと同様の式ばかりです。具体的に検討する際にはU値などが熱交換器メーカーによって変化するので条件を伝えて選定してもらいます。
ただ、それぞれの条件の意味を理解しておいた方が業務上スムーズにいくことも多いので是非ともマスターしておきましょう。