電熱ヒーターや熱交換器の能力を考えるときはkW(キロワット)で表記されていることが多いです。
ワット数が高ければ高いほど、たくさんの熱を伝えることが出来ますが、ヒーターを選ぶときに一体どの程度の能力のものを選べばいいか分からない事ってありますよね?
今回は、電熱ヒーターのワット数と伝熱能力について考えてみたいと思います。
※ こちらの記事は動画でも解説しています。
1. 電熱ヒーターのワット数
電熱ヒーターのワット数は外部にできる仕事量を表しています。水を貯めた水槽に電熱ヒーターを入れた場合、仕事は水の温度を上げることです。ワットはJ/s(ジュール/秒)なので、1ワットは1秒間に1ジュールの仕事をすることが出来るという事になります。
つまり、100kWの電熱ヒーターを選べば、1秒間に100kJの仕事が出来るという事になります。
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2. 電熱ヒーターの加熱速度
単純に電熱ヒーターの仕事が全て効率100%で水に伝わると仮定しましょう。100Lの水を20℃(常温)から60℃に昇温させることを考えます。
この場合、水の比熱を4.19kJ/kgK、比重を1kg/Lとすると、昇温させるのに必要な熱量は次の式で計算できます。
100kWの電熱ヒーターは1秒間で100kJの熱を伝えることが出来るので、昇温させるのにかかる時間は
つまり、100kWの電熱ヒーターで100Lの水を20℃から60℃に暖める野にかかる時間は167.6秒だと分かります。この計算では単純に能力が半分になれば倍の時間、ヒーターの能力が倍になれば時間は半分という事になります。
実際には例えヒーターの能力が高くても、電熱効率が100%になる事はなく、またヒーターの汚れや水の撹拌速度によって熱の伝わりやすさは変わるので計算より長い時間がかかることになります。
このように、ヒーターのワット数は大きければ大きいほど、被加熱物に早く熱を伝えることが出来ます。
3. 電熱ヒーターで消費されるエネルギーは?
ヒーターのワット数が高ければ伝熱能力が高く、早く昇温が出来ます。では熱帯魚の水槽のようにヒーターで水を加熱して、一定の温度を保つ場合はどうでしょうか?
この場合、温度センサーを水槽内に入れて、設定温度より実際の温度が低くなるとヒーターに電流が流れ、温度が高くなると電流が止まるという運転になります。
このように一定温度を保つ運転を行う場合、ヒーターに求められる能力は放熱によって外気に奪われる熱量のみという事になります。放熱量の計算はこちらの記事をご参照ください。
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ワット数の大きなヒーターを利用した場合は、すぐに昇温して負荷率の低い運転を続ける。放熱分を賄える程度のワット数の小さなヒーターを利用した場合は、ゆっくり昇温して負荷率の高い運転を続けるという事になります。
電熱ヒーターの負荷率によってエネルギー効率は変わってくるので、単純に大きい物を選んでおけば安心というわけでもなさそうです。また、実際に必要な能力よりも大きすぎるヒーターを選んでしまうと温度制御性やランニングコストも悪くなるので注意が必要です。
4. まとめ
- 電熱ヒーターのワット数は加熱能力を表す
- ワット数の大きなヒーターを選ぶと昇温速度が速くなる
- 一定の温度を維持したいだけという場合は放熱分を賄えるヒーターを選べばいい
- 能力が過剰すぎると制御性が悪くなりランニングコストも上がる
ヒーターの能力を選ぶ場合、ワット数表記なので慣れてない方は分かりにくいですが是非上のような考え方で計算してみてはいかがでしょうか?
熱に関する理解が深まると思います。