同分野内の似ている言葉って覚えにくいですよね。今回は電気分野におけるインダクタンスとインピーダンスについてです。
全く異なることを表す値ですので、これを機に覚えてみてはいかがでしょうか。
動画でも解説していますので、こちらもあわせてどうぞ。
インダクタンスとは
インダクタンスとは、導体に電気を流した時の磁場の起こりやすさを示した値です。
ループ状の電線(コイル)に電気を流すと、磁場が発生し、この磁場が起電力を発生させます。電流の値が変化すると磁場が変化し、電磁誘導が起こります。この現象のことを自己誘導と呼んでいます。
電流の度合いによって自己誘導による起電力が変化します。起電力をVとすると、以下の式で表されます。
$$V=L×\frac{dI}{dt}$$
Iは電流の変化量でtは時間で、dI/dtは時間あたりの変化量を表します。この時の係数Lのことをインダクタンスと呼びます。
名称は誘導するという意味のinductから来ています。単位は、アメリカ人科学者ジョセフ・ヘンリーの名前から、ヘンリーHで表されます。変圧器を理解する上で重要な数値となります。
自己インダクタンスと相互インダクタンスの違いについてはこちらの記事をご覧ください。
-
【電気】自己インダクタンスと相互インダクタンスの違いとは?
続きを見る
インピーダンスとは
交流回路で電気抵抗のようなものを表した値のことです。
抵抗器インピーダンスZは以下の式で表されます。
$$Z=\frac{V}{I}$$
Vは電圧、Iは電流なので、直流の場合の電気抵抗の式と同じですね。
単位は抵抗と同じくオームΩが用いられます。数値が大きいほど電気が流れにくく、小さいほど流れやすいです。英語impedanceには障害物という意味もあります。
インピーダンスは回路の種類によって異なる式を持ちます。
例えばコイルによるインピーダンスであれば、インダクタンスLの時、インピーダンスは次の式で表されます。
$$Z=jωL$$
この時jは虚数単位、ωは角周波数を表します。
インピーダンスは形があるものではなく、概念的なものですが、音波を用いた機器関係でよく用いられる数値です。音の出力側と受け側で、同じインピーダンスの機器を揃えるのが望ましいとされています。
まとめ
- インダクタンスは磁場の起こりやすさを示す値
- インピーダンスは交流回路の抵抗を表す値
今回は簡単ではありますが、インダクタンスとインピーダンスの違いを並べて比較してみました。
参考になればと思います。皆さんの勉強の導入として役立ててもらえればと思います。
電気
2024/8/15
【電気】熱電素子とは何か、種類や原理、活用事例について解説します
熱電素子は、熱エネルギーと電気エネルギーを相互に変換する技術で、エネルギー効率の向上や省エネルギー化に重要です。この技術は、エネルギーの再利用や温度制御など、さまざまな分野で活用されており、今後の持続可能な社会の実現に重要な役割を果たすと期待されています。 本記事では、熱電素子の基本概念、種類、原理、および具体的な活用例について詳しく解説します。 熱電素子とは 熱電素子とは、温度差を利用して電気エネルギーを生成したり、逆に電気を流すことで温度差を作り出したりする半導体素子のことです。この技術は、ゼーベック ...
ReadMore
電気
2022/7/31
【電気】シリコンドロッパとは何か?設置する目的について
UPSなどの非常用の蓄電池を設置する制御盤の中には良くシリコンドロッパという機器が設置されています。 この記事ではシリコンドロッパとは何か、設置する目的について解説します。 シリコンドロッパとは シリコンドロッパは直流電圧を降下させる機器で、蓄電池などを設置する場合などに利用されます。シリコンダイオードの電圧降下が電流に関わらず一定であるという特性を利用しています。 一般的にプラントの電気設備では、停電時などに設備を停止させないように制御用電源としてUPS(無停電電源装置)等が設けられています。ただ、UP ...
ReadMore
電気
2022/6/3
【電気】相電圧と線間電圧、相電流と線間電流の違いを徹底解説
三相交流回路の特徴の一つとして相電圧、線間電圧、相電流、線電流というものがあります。これらは結線方法によってそれぞれ特性が変わりますが、ただ単に特性を暗記するだけではそれぞれの特性を混同してしまします。 この記事では、相電圧と線間電圧の違い、相電流と線電流の違いについて解説します。 相電圧・線間電圧、相電流・線電流の違い 相電圧・線間電圧、相電流・線電流の違いを一言で表すと次のようになります。 相電圧:一相にかかる電圧 相電流:一相に流れる電流 線間電圧:電源と負荷を結ぶ電線間の電圧 線間電流:電源と負荷 ...
ReadMore
電気
2021/12/19
【電気】磁力線と磁束の違いとは?
電気の勉強をしていると電気、磁気で似ているような言葉が多く出てくるので分かりにくいですよね。 今回は、磁気の中でも概念が似ている磁力線と磁束の違いについて解説したいと思います。 こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。 磁力とは まず、磁力とは磁界の間に働く力のことを言います。磁極が異なる場合は吸引力が働き、磁極が同じであれば反発力が働きます。 上の図のように磁荷m1[Wb](ウェーバー)とm2[Wb]の物体があった場合、それぞれに働く磁力は次の式で計算することが出 ...
ReadMore
電気
2021/8/29
【電気】コンデンサと電界の関係を解説します
コンデンサに電荷がたまると極板間には電界が発生します。 電界は極板間の距離と電圧によって決まってくるのですが、コンデンサの電気容量も距離が関係してくるなど複数の要素が絡みあっているので分かりにくいと感じる方も多いのではないかと思います。 今回は、コンデンサの電界の強さについて解説したいと思います。こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。 電界とは 電界とは静電力が働く空間のことです。電荷の周囲には電界が生じ、電界の中に電荷を置くと引っ張られたり押されたりします。 電 ...
ReadMore