電気

【電気】赤外加熱とレーザー加熱の違いは?

以前、電気加熱について、種類ごとに原理と特徴をまとめました。

今回は電気をエネルギー源にして、対象物に熱を伝える方法のうち、赤外加熱とレーザー加熱の違いについて解説したいと思います。

この動画の内容は、画像とテキストでも解説しています。

赤外加熱とは

赤外加熱とは、その名の通り赤外線によって伝えられる熱エネルギーで加熱をする方法です。

目に見える光は可視光と呼ばれ、波長の短さ順に紫・青・緑・黄・赤の順で並ぶのですが、赤色波長(780nm)よりも長い領域であるため赤外線と言います。ちなみに、地球に熱を与えてくれる太陽からの光は、約4割が赤外線と言われています。

780nm~1000µmという広範囲が赤外線に該当し、大きく分けて4µmより下が近赤外線、4µm以上が遠赤外線と呼ばれます。

近赤外線は、2000-3000℃程度のフィラメントから発せられる電磁波で、白熱電球やハロゲンランプなどが用いられます。近赤外線はエネルギー密度が高く、急速加熱に向くという特徴があります。また、熱が対象の中まで吸収(透過)されます。

遠赤外線は、数百~1000℃の発熱体から発せられる電磁波で、セラミックや石英などを用いたヒーターが用いられます。エネルギー密度が低く、加熱速度はゆっくりですが、一定の熱量を送り続けられることが特徴です。熱はほとんど透過せず、対象物の表面のみを温めることができます。

産業分野では、乾燥や表面加熱の用途で、遠赤外加熱が用いられることが多いようです。例えば、乾燥工程では、温風を作るわけではなく、赤外線を照射し熱エネルギーを伝えています。温度制御をする場合、ヒーターそのものの温度や、被加熱物との間の空間の温度は成り行きで、被加熱物表面温度のみがコントロールされています。

赤外線を用いて温度を測定する仕組みに放射温度計があります。

【温度計測】放射温度計の原理、メリットデメリットは?

続きを見る

レーザー加熱とは

レーザー加熱は、レーザー光を集中させて熱を発することで加熱をする方法です。

レーザーとはLight Amplification by Stimulated Emission of Radiationの省略語で、直訳すると「放射の誘導放出による光増幅」という意味です。そして、レーザー光とは波長が単一方向で、長さが一定、波が揃っている電磁波のことを指します。

レーザー光の発生方法を簡単に説明します。

原子に外部からエネルギー(光など)が加えられると、不安定な励起状態となり、安定した基底状態に戻る際に光を発生します(誘導放出)。放射された光が、他の励起状態にある原子に当たることで、さらに同じ方向の光が発せられます(増幅)。

これがレーザーの原理です。

レーザー光に用いられる波長は広範囲で、炭酸ガスレーザー(10.6µm)、YAGレーザー(1064nm)、半導体レーザー(650〜1080nm)などが産業分野で用いられています。特に、加熱に用いられるのは赤外線波長(780nm)より長いものが多いです。

ピンポイントで表面を加熱できることが特徴で、1000−3000℃程度の高温領域も可能です。溶接、溶着、加工などの用途に用いられています。

【電気】アーク加熱と抵抗加熱の違い、使い分けは?

続きを見る

赤外加熱とレーザー加熱の使い分けは?

両者は光を使うということで共通した電気加熱の原理ですが、得意分野が異なるため、使い分けで迷うことはなさそうです。

技術的な理解を深めるため整理をしておくと、

  • 赤外加熱は、光の波長の中でも可視光より長く、マイクロ波より短い波長(780nm~1000µmの間)の光を利用。
  • レーザー加熱は、波長は問わず(実用的には193nm~10600nm)、レーザー光を利用。

赤外レーザーという分類も存在し、加熱に用いられています(一般にはこれもレーザー加熱と呼ばれています)。

まとめ

  • 赤外加熱は、赤外線による放射熱で加熱を行う。
  • レーザー加熱はレーザー光の収束による熱エネルギーで加熱を行う。
  • それぞれ特徴が違い使い分けが明確。

エネルギー管理士試験対策としては、光による加熱として、一括りにして覚えてしまいましょう。

電気に関する記事はこちらもおすすめです。

電気

2024/8/15

【電気】熱電素子とは何か、種類や原理、活用事例について解説します

熱電素子は、熱エネルギーと電気エネルギーを相互に変換する技術で、エネルギー効率の向上や省エネルギー化に重要です。この技術は、エネルギーの再利用や温度制御など、さまざまな分野で活用されており、今後の持続可能な社会の実現に重要な役割を果たすと期待されています。 本記事では、熱電素子の基本概念、種類、原理、および具体的な活用例について詳しく解説します。 熱電素子とは 熱電素子とは、温度差を利用して電気エネルギーを生成したり、逆に電気を流すことで温度差を作り出したりする半導体素子のことです。この技術は、ゼーベック ...

ReadMore

電気

2022/7/31

【電気】シリコンドロッパとは何か?設置する目的について

UPSなどの非常用の蓄電池を設置する制御盤の中には良くシリコンドロッパという機器が設置されています。 この記事ではシリコンドロッパとは何か、設置する目的について解説します。 シリコンドロッパとは シリコンドロッパは直流電圧を降下させる機器で、蓄電池などを設置する場合などに利用されます。シリコンダイオードの電圧降下が電流に関わらず一定であるという特性を利用しています。 一般的にプラントの電気設備では、停電時などに設備を停止させないように制御用電源としてUPS(無停電電源装置)等が設けられています。ただ、UP ...

ReadMore

電気

2022/6/3

【電気】相電圧と線間電圧、相電流と線間電流の違いを徹底解説

三相交流回路の特徴の一つとして相電圧、線間電圧、相電流、線電流というものがあります。これらは結線方法によってそれぞれ特性が変わりますが、ただ単に特性を暗記するだけではそれぞれの特性を混同してしまします。 この記事では、相電圧と線間電圧の違い、相電流と線電流の違いについて解説します。 相電圧・線間電圧、相電流・線電流の違い 相電圧・線間電圧、相電流・線電流の違いを一言で表すと次のようになります。 相電圧:一相にかかる電圧 相電流:一相に流れる電流 線間電圧:電源と負荷を結ぶ電線間の電圧 線間電流:電源と負荷 ...

ReadMore

電気

2021/12/19

【電気】磁力線と磁束の違いとは?

電気の勉強をしていると電気、磁気で似ているような言葉が多く出てくるので分かりにくいですよね。 今回は、磁気の中でも概念が似ている磁力線と磁束の違いについて解説したいと思います。 こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。 磁力とは まず、磁力とは磁界の間に働く力のことを言います。磁極が異なる場合は吸引力が働き、磁極が同じであれば反発力が働きます。 上の図のように磁荷m1[Wb](ウェーバー)とm2[Wb]の物体があった場合、それぞれに働く磁力は次の式で計算することが出 ...

ReadMore

電気

2021/8/29

【電気】コンデンサと電界の関係を解説します

コンデンサに電荷がたまると極板間には電界が発生します。 電界は極板間の距離と電圧によって決まってくるのですが、コンデンサの電気容量も距離が関係してくるなど複数の要素が絡みあっているので分かりにくいと感じる方も多いのではないかと思います。 今回は、コンデンサの電界の強さについて解説したいと思います。こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。 電界とは 電界とは静電力が働く空間のことです。電荷の周囲には電界が生じ、電界の中に電荷を置くと引っ張られたり押されたりします。 電 ...

ReadMore

  • この記事を書いた人

エコおじい

プラント業界一筋のエンジニアです。「工業技術をどこよりも分かりやすく解説する」をテーマに2017年からブログ、Youtubeで情報発信をしています。保有資格はエネルギー管理士と電験三種です。

効率的に技術系資格取得を目指す方必見!当サイトおすすめの通信講座

最短で資格を取得するためには、いかに効率よく学習するかが最も重要です。

参考書だけでは分かりにくいという方には、全て解説動画で学べるSATの通信講座がおすすめです。日々の通勤時間など隙間時間を利用して無理なく効率的に学習を進めることが出来ます。

超シンプルで分かりやすいSAT『エネルギー管理士』

エネルギー管理士の通信講座です。イラストを多用したシンプルで分かりやすいテキストと動画がセットになっています。

他社と比較すると価格もお手頃で、特に熱力学などを学んだことのない初学者におすすめの通信講座です。

熱分野レビュー 電気分野レビュー 他社との比較

エネルギー管理士以外にも電験や衛生管理者など25の資格の通信講座を展開しています。

最短で電験取得を目指すならSAT『電気主任技術者講座』

イメージしにくい交流回路についても多様なイラストと解説動画で詳しく解説してくれます。独学ではなかなか勉強が進まないという方に特におすすめの講座です。電気について詳しく学べるので実務で電気を使うという方には最適な教材です。

電験三種レビュー 他社との比較

技術系資格の最高峰SAT『技術士合格講座』

論文添削やZOOMマンツーマン指導が付いており、面接対策もWeb上で行うことが出来ます。また、テキストは毎年改定されているので常に最新の教材で勉強することが出来ます。

-電気

© 2024 エネ管.com Powered by AFFINGER5

エネ管.comをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む