プラント関係の仕事をしていると、必要提出書類の中に「ローディングデータ」があることが良くあります。
プラントを建てる側にとってはよく目にする資料ですが、メーカーや商社の方にとってはあまり見慣れないものかもしれません。今回はローディングデータとは何か、その目的について解説したいと思います。
ローディングデータとは
ローディングデータは機器の重さ、重心、大きさ、慣性力、許容変位量などを表す資料です。機器によってはアンカーボルトの位置や種類、打ち込み深さなども記載してあることがあります。
ポンプ、タンク、コンプレッサーなど基礎が必要な機器には必要とされるもので、運転時と停止時に重さが変わる場合はそれぞれの条件での運転荷重と静荷重の提示が必要になります。
主に建築設計にて機器を入れる建物の構造計算や基礎の設計に使用します。ローディングが大きく変われば建屋の設計が変わるので、当初の計画と変更がある場合は早めに連絡が必要です。
ローディングデータの目的
ローディングデータは主に建屋を作る側が使用する資料です。例えば次のようにプラント工事と土木工事を別の会社が請け負う分離発注の場合を考えてみます。

この場合、仕様の通りに機器を選定したり配置したりするのはプラントメーカーですが、実際にそれを入れるための建屋や基礎を作るのはゼネコンになります。
そこで、建築設計をするために必要な資料の一つがローディングデータです。プラントメーカーは選定した機器のメーカーに依頼し、実際に納入する機器のローディングデータを入手して建築設計を行う会社に提出する必要があります。
プラントメーカーからメーカーに出される仕様書にローディングデータの提出を求めているのはこのためです。ローディングデータは建物を設計する根本の資料になるので、納入する機器と条件が違うなどがないように注意する必要があります。
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ローディングデータが必要な時期
プラントが出来るまでの流れは大きく分けて次のようになります。
- 基本計画
- 機械設計
- 建屋、基礎設計
- 基礎工事
- 建屋工事
- 機械工事
この中でローディングデータが必要な時期は建屋、基礎設計を行う前になります。
流れとしてはプラント設計が機械の仕様を決定し、メーカーに購買仕様書を発行、メーカーは購買仕様書を元に機器を選定し、仕様や荷重条件をプラント設計に送付します。
プラント設計はメーカーから送付されてきた荷重条件を元に、基礎設計資料を作成し、土木、建築設計に提出という流れです。
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まとめ
- ローディングデータは機器の重さ、重心、大きさ、慣性力、許容変位量などを表す資料。
- 建物の構造計算や基礎設計に使用する。
- 納入する機器と条件が違うと設計のやり直しが発生するので注意する。
プラント関係の仕事は専門用語が多く、最初は分からないことが多いかもしれませんが、一つ一つ確認しながら抜け漏れのないように注意しましょう。
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