病院やホテルなどの大型施設では、機械室に熱交換器を設置し温水を循環させるループ方式が良く用いられています。
ループ方式は熱交換を行う場所が1か所でよく、メンテナンス性に優れた方式で循環させるには循環ポンプや膨張タンクなどの付帯設備が必要です。
設備が多い分、新たな設備の試運転を行う場合には、ポンプを回しても循環水が上手く流れないなどのトラブルが多いです。
今回は、温水のループ配管に温水が流れないという場合に考えられる原因と対策について記事にしたいと思います。
ループ配管で温水が上手く流れない原因
ループ配管でポンプを運転したのに水がうまく流れないという場合は、次のような原因が考えられます。
補給水が入っていない
そもそもループ配管に水を補給する元バルブが閉弁されていると、当然水は流れません。当たり前の話ですが、元バルブが現場から離れている場合も多く、開け忘れる可能性は十分にあります。
補給水のラインの圧力計などを確認し、補給水が来ていることを確認します。
ループ内のバルブがしまっている
ループ内にはメンテナンス性を考えて、縁切り出来るようにバルブがあることが多いですが、このバルブが1つでも閉弁しているとループ配管の温水は流れません。
すべて開けたと思っていても、開け忘れていることはよくあるので、図面を見ながらすべてのバルブが開いているかを確認する必要があります。
ポンプの回転が逆
ポンプの配線を間違えると、ポンプが逆方向に回転し、欲しい能力が得られない場合があります。ポンプの仕様書を確認し、ポンプが正しく回転することを確認しましょう。
ポンプの回転方向が逆の場合は、結線を変更する必要があります。3本の場合は、2本を入れ替えるとポンプは逆回転になります。
テープの取り忘れ
バルブ類には、取り扱い中にシート面に傷がつかないようにフランジにテープが付いている場合があります。このテープを取り忘れると、テープが邪魔をして水が流れなくなります。
バルブを開けたのに水が流れない場合は、配管の音や温度を確認しながらテープに取り忘れがないかを見ていきます。テープを取り外すにはバルブを外す必要があるので、結論付けるのが難しい要因でもあります。
エアが抜けていない
まず、設備の施工や設置に問題ないことが確認できると、次はエア抜きが上手くいっていない可能性があります。ループ配管が満水になっていない場合、ポンプのエア噛みが発生して能力が落ちたり、水が上手く押し出されないという場合があります。
エア抜きが上手くいっていない場合、まったく流れなかったり、流れたりながれなかったりという挙動を繰り返します。
ループ配管内の高いところにバルブやエア抜き弁がある場合は、そこで配管内のエア抜きを行ったり、ポンプ二次側のエア抜きネジを開いてエアを抜く必要があります。
ポンプの選定ミス
試運転時にはあまり考えたくないですが、ポンプの選定ミスという場合もあります。設計時に想定していたよりもループ配管が高くなる場合や長くなる場合はよくあるので、ポンプの選定には安全を見込んだ値を使用しますが、見込みが少ないと能力が不足する場合があります。
循環させたい水量と配管の長さ、高さ、圧力損失を計算してポンプの選定に問題がないことを確認しましょう。
ただ、ポンプの選定ミスの場合、ポンプそのものを交換しなければならず、コストがかかるので選定ミスを結論付けるのは最後にするのがおすすめです。
まとめ
ループ配管に水が上手く流れない場合に考えられる原因は
- 補給水が入っていない
- ループ内のバルブがしまっている
- ポンプの回転が逆
- テープの取り忘れ
- エアが抜けていない
- ポンプの選定ミス
1つの問題に対して考えられる原因は常に複数あります。是非、1つ1つ要因をつぶしていきながら現場トラブルを解決してください。