ポンプ

【ポンプ】粘度とポンプの関係、使い分けは?

数多くあるポンプの型式ですが、液体の粘度によって向き不向きがあることはご存知ですか?

今回は、高粘度の液体を輸送するためのポンプについて解説します。

粘度とは

粘度とは、流体のねばりの度合いを数値化したもので、µ(ミュー)が記号として用いられます。

単位はPa・s(パスカル秒)が一般的に用いられます。µは、液体の中で板が動くときに、板の移動方向とは逆方向に働く力である剪断応力(物体の断面に発生する力)を測定したときの比例定数です。

粘度に対し、流体の動きにくさを表したものを動粘度と呼びます。配管の圧力損失を計算するときなどに用いる指標です。粘度を、流体の密度で割ったもので、記号はv、単位はm2/s(平方メートル毎秒)が用いられます。

$$v=\frac{μ}{ρ}$$

粘度に関する詳細は、以前の記事でも紹介していますので、こちらもご覧ください。

【流体工学】流体の粘度を表す単位と比較について

続きを見る

粘度が高い液体の場合

粘度とポンプ選定にどのような関係があるのでしょうか。

粘度が高いと、ポンプの軸動力がより多く必要となるため、電動機の容量に関係が出てきます。液体温度を下げることで粘度を低下させ、ポンプを使うという方法もありますが、全てのケースで対応できるわけではありません。

水に用いられるような渦巻ポンプのような構造では対応できない場合、高粘度の液体に対しては以下のようなタイプのポンプが用いられます。

ダイヤフラムポンプ

ダイヤフラム(膜)を交互に移動させることで圧力変化を生み出し、液体を圧送する、間欠作動式のポンプです。溶媒や薬液などに用いられます。

チューブポンプ

ゴムやシリコンでできたチューブを変形させながら、液体を輸送します。産業分野の他、透析機など医療現場でも用いられています。薬品から食品、建築材料まで幅広く用いられています。

ギアポンプ

歯車を組み合わせた構造をしている、容積式ポンプの一種です。容積式流量計や、油圧駆動の機械の駆動機としても用いられる構造です。以下の動画は、内接型と呼ばれる構造のギアポンプの動作を表しています。油類に用いられることが多いです。

ねじポンプ

筒の中でネジが回ることで液体が移動する仕組みのポンプです。高粘度だけでなく、スラリー(固体混じりの液体)も対応可能なポンプです。食品や、排水処理などの用途に用いられています。

まとめ

  • 粘度は流体のねばりの度合いを数値化したもの、動粘度は流体の動きにくさを表したもの。
  • 液体のねばり度を示す粘度をポンプ選定で考慮する必要がある。
  • 高粘度の液体には対応した型式のポンプを選ぶ。

その他、食品や医薬品などでは衛生面も気になるので、本体・パッキンの素材や洗浄しやすさなども留意点でしょう。輸送対象に適したポンプの選定が重要です。

ポンプ

2022/4/10

【ポンプ】NPSHとは何か。考え方、計算方法について解説します

ポンプを選定する際に重要な指標としてNPSHがあります。 NPSHの考え方を間違えて、ワンポイントでポンプを選定すると非定常な運転時に異常が発生しポンプが故障するなどの事故につながります。この記事ではポンプのNPSHについて、考え方や計算方法を解説します。 NPSHとは NPSHはNet Positive Suction Headの略でポンプを選定する際に、どの程度の流入水頭を確保できるかを示す指標で単位はm(メートル)で表されます。 NPSHにはNPSH available(有効吸込ヘッド)とNPSH ...

ReadMore

ポンプ

2022/4/10

【ポンプ】ポンプの台数制御とは、仕組み、メリット、デメリットについて解説

液体の輸送に必要な機器であるポンプは工場の稼働状況や時間帯によっても、必要な液量が変わる現場が多いです。 そんな場合はポンプの台数制御を行うという考え方があります。 この記事ではポンプの台数制御とは何か、そのメリットやデメリットについて解説します。 ポンプの台数制御とは ポンプは24時間稼働させることが多く、流体を吐出するには大きなエネルギーが必要です。一方、使用先の必要量(ここでは負荷と呼びます)はいつも最大とは限りません。 そこで無駄なエネルギーを削減するための方法の一つとして「複数台のポンプを設置し ...

ReadMore

ポンプ

2021/11/14

【ポンプ】軸動力を計算する方法は?

ポンプを選定するときに、どのぐらいの大きさのモーターが必要になるのか計算で求めたいことってありますよね。今回はポンプの流量や差圧から軸動力を求める方法について解説したいと思います。 ポンプの軸動力を計算する方法 ポンプの軸動力は次の手順で求めることが出来ます。 ポンプの流量を求める ポンプの必要差圧を求める 流量と差圧をかける ポンプ効率で割る 実際に例を交えて解説します。 ポンプの流量を求める まず、ポンプの必要流量を求めます。 特に計算式があるわけではなく、使用先でどれだけの流量が必要かをリストにして ...

ReadMore

ポンプ

2022/3/3

【ポンプ】真空ポンプの原理とは?タイプ別に紹介!

以前の記事で、真空ポンプの種類について解説しましたが、「どうやったら真空が生み出されるのか」という原理的な面での解説が足りていなかったように思います。 今回は、真空ポンプの種類別に、真空状態を作り出す原理を詳しく解説していきたいと思います。 真空のはじまり 真空ポンプ、ではありませんが、真空の作り方として最も初期の活用例をご紹介します。 産業分野で最も初期の蒸気機関として知られる、ニューコメン機関をご存知でしょうか? トーマス・ニューコメンは産業革命の中心的存在であった、ジェームス・ワットよりも前に蒸気機 ...

ReadMore

ポンプ

2021/8/30

【ポンプ】粘度とポンプの関係、使い分けは?

数多くあるポンプの型式ですが、液体の粘度によって向き不向きがあることはご存知ですか? 今回は、高粘度の液体を輸送するためのポンプについて解説します。 粘度とは 粘度とは、流体のねばりの度合いを数値化したもので、µ(ミュー)が記号として用いられます。 単位はPa・s(パスカル秒)が一般的に用いられます。µは、液体の中で板が動くときに、板の移動方向とは逆方向に働く力である剪断応力(物体の断面に発生する力)を測定したときの比例定数です。 粘度に対し、流体の動きにくさを表したものを動粘度と呼びます。配管の圧力損失 ...

ReadMore

  • この記事を書いた人

エコおじい

プラント業界一筋のエンジニアです。「工業技術をどこよりも分かりやすく解説する」をテーマに2017年からブログ、Youtubeで情報発信をしています。保有資格はエネルギー管理士と電験三種です。

効率的に技術系資格取得を目指す方必見!当サイトおすすめの通信講座

最短で資格を取得するためには、いかに効率よく学習するかが最も重要です。

参考書だけでは分かりにくいという方には、全て解説動画で学べるSATの通信講座がおすすめです。日々の通勤時間など隙間時間を利用して無理なく効率的に学習を進めることが出来ます。

超シンプルで分かりやすいSAT『エネルギー管理士』

エネルギー管理士の通信講座です。イラストを多用したシンプルで分かりやすいテキストと動画がセットになっています。

他社と比較すると価格もお手頃で、特に熱力学などを学んだことのない初学者におすすめの通信講座です。

熱分野レビュー 電気分野レビュー 他社との比較

エネルギー管理士以外にも電験や衛生管理者など25の資格の通信講座を展開しています。

最短で電験取得を目指すならSAT『電気主任技術者講座』

イメージしにくい交流回路についても多様なイラストと解説動画で詳しく解説してくれます。独学ではなかなか勉強が進まないという方に特におすすめの講座です。電気について詳しく学べるので実務で電気を使うという方には最適な教材です。

電験三種レビュー 他社との比較

技術系資格の最高峰SAT『技術士合格講座』

論文添削やZOOMマンツーマン指導が付いており、面接対策もWeb上で行うことが出来ます。また、テキストは毎年改定されているので常に最新の教材で勉強することが出来ます。

-ポンプ

© 2024 エネ管.com Powered by AFFINGER5

エネ管.comをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む