電気加熱について勉強していると「正味電力」とか「正味電力量」という言葉が出てきますよね。
正味電力と聞くと皮相電力のように何かしら定義があるように感じるかもしれませんが、実は言葉の定義はもっと単純なものでした。あまり調べても出てこないようなのでこの記事で解説したいと思います。
正味電力とは
正味電力とは実際に使用される正味の電力の事です。
例えば次の様な問題を考えてみます。
120kg、比熱0.52kJ/kgKの電気炉を20℃から620℃に20分で加熱する場合、必要な正味電力、正味電力量はいくらか?
これを次のような手順で解いていきます。
- 必要な熱量を計算する。
- kWに変換する。
- kWhに変換する。
必要な熱量を計算する
まず必要な熱量は質量、比熱、温度差をかけることで計算できるので、次のようになります。
$$120×0.52×(620-20)=37440$$
よって、電気炉を加熱するのに必要な熱量は37440kJということが分かります。言い方を変えると、この場合の正味熱量は37440kJということになります。
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kWに変換する
これを、kW、kWhに変換します。kWの定義は1秒間あたりの仕事量なので加熱時間が20分(=1200秒)ということを考慮すると次の式で計算できます。
$$37440÷1200=31.2$$
よって31.2kWの出力で20分加熱できればほしい熱量が得られるということになります。これを正味電力と呼びます。
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kWhに変換する
次にkWhに変換します。kWhは電力量を表し、1kWの出力で1時間加熱すると1kWh(=3600kJ)になります。よって次の式で計算できます。
$$37440÷3600=10.4$$
よって10.4kWの出力で1時間加熱した時の量になるので、必要電力量は10.4kWhということになります。この値を正味電力量と呼びます。
実際にはそれぞれの機器効率や放熱によって出力の全てが熱として伝わることはないので、必要な出力は正味電力の1.1~1.2倍程度になるというわけです。
まとめ
- 正味電力は損失がないとしたときに必要な電力。
- 必要熱量を計算して単位を変換すれば計算できる。
概念自体はとても単純ですが、言葉そのものに定義があるように感じてしまうと途端に分かりにくくなりますね。
是非、問題を解くときに混乱しないように注意しましょう。