エンジニアリング業界にいると必ず聞く言葉に、「プロセス」「ユーティリティ」があります。
初めて聞く人は、聞き慣れないカタカナ語に戸惑いますよね。今回はこのプロセスとユーティリティの違いについて、わかりやすく説明していきます。
こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。
プロセスとは
日本語でも浸透しているプロセスという言葉ですが、エンジニアリング業界では製品の製造過程のことを指します。
プロセスが意味するものはプラントや工場の業種によって異なります。例えば、石油化学プラントなら樹脂や繊維などの化学製品、食品工場なら食品原料や完成品がプロセスとなります。
製品を作ることを目的に、運転条件などを決めながら設計するエンジニアをプロセスエンジニアと呼んだりします。
ユーティリティとは
日本語では用役(ようえき)と訳されるそうですが、日常英語では公共事業・料金のことを指します。
エンジニアリング業界ではそれより幅広く、以下の様なものをユーティリティと呼んでいます。
- 水(水道水、地下水)
- 純水
- 電気
- 燃料(ガス、重油)
- 蒸気
- 冷却水
- ブライン
- 熱媒油
- 窒素
- 圧縮空気(計装用空気)
他にも該当するものがあるかもしれませんが、よく現場で使われるのは上記のユーティリティでしょう。ご覧いただく様に、原料以外で製造工程に欠かせないものがユーティリティと言えます。
大規模プラントでは用役という言葉そのものが部署の名前になっており、これらの動力源を管理することもあります。
いずれも、不足したり停止したりすると生産に大きな影響を与える非常に重要な要素です。
なぜ使い分けるの?
プロセスとユーティリティは、熱エネルギー・運動エネルギーを与える、または受け取る関係にあり、直接的に混ざることがありません。
プロセスエンジニアリングにおいて、プロセスとユーティリティを明確に分けて考えることは、全体像をよりシンプルにとらえるため重要な過程と言えます。
例えば工場設計時に、
- レーンの右側にプロセス、左側にユーティリティをまとめる。
- 1階にプロセス、2階にユーティリティをまとめる。
などと決められて工事されていれば、のちに点検やメンテナンスがしやすくなることが考えられます。
逆にその都度工事し、統一感なく施行されている場合、十数年後に改造するとなった際、「配管図が複数あり、どれが正しいのかわからない」「どこにつながっているか不明な配線がある」といった事態に見舞われてしまいます。
ちなみにプロセス・ユーティリティは、業界や工程によって定義が変わります。燃料は、石油精製業界ではプロセスですが、その他の業界ではユーティリティになります。
純水は、ボイラーにとってはユーティリティですが、食品や医療品製造工程においてはプロセスです。使用する人の立場をよく理解し、誤解が生じないように注意しましょう。
まとめ
- プロセスは製造過程における原料や完成品を表す。
- ユーティリティは熱や運動エネルギーを与える媒体を表す。
- 業種によってプロセスとユーティリティは変わる。
設備・装置を製造する会社にも、プロセス設備が得意な会社と、ユーティリティ設備が得意な会社、両方取り扱っている会社があります。
今度調べられるときには、意識して確認をされてみてください。