電気と温度には切っても切れない関係があります。
今回はそのうちの一つ、センサーなどにも利用されているゼーベック効果とは何かについて解説していきます。
こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。
ゼーベック効果とは?
ゼーベック効果とは、2種類の金属の両末端をつなぎ合わせて各末端の温度に差をつけると起電力が生じ、回路中に電流が流れるという現象のことです。
なぜそんなことが起きるのか、詳しく見ていきましょう。
ゼーベック効果の原理
次の2点を理解していただけると非常にわかりやすいでしょう。
- 金属棒に温度勾配を与えると、その間には電位差が発生する。
- 同じ温度差でも金属によってどれだけの電位差が生じるかは異なる。
1本の金属棒の両端に温度差があると、その差に比例して金属棒の両端には電位差が生じます。つまり温度差が大きいほど電位差も大きくなります。またこれは両末端の温度差のみで決まり、金属の太さや長さ、途中の温度には影響を受けません。
温度差1℃あたりに生じる電位差の大きさをゼーベック係数といいます。ゼーベック係数は金属の種類によって異なります。
では2種類の金属A,Bを図のようにつないで、末端αの温度をT1、末端βの温度をT2 (T2>T1) としてみましょう。
このとき金属Aではβ→α方向に15 µV、金属Bではβ→α方向に10 µVの起電力が生じたとしましょう。するとその差の5 µVが回路全体の起電力として生じ、電流が流れます。この起電力を熱起電力といいます。
このようにそれぞれの金属の温度差による電位差の違いによって熱起電力が生じ電流が流れる、これがゼーベック効果です。
詳細な計算は後ろの章に書いていますので興味のある方は読んでみてください。
ゼーベック効果の使用例
ゼーベック効果を利用した装置として代表的なものに熱電温度計があります。
熱電温度計は簡単に表すと下の図のような構造になっています。
熱電対と呼ばれる2種類の金属を組み合わせた先端を測定対象に差し込み、先端と根元部分での温度差から生じる熱起電力を電圧計で測定します。
これだけだと測定できるのはあくまで金属の両末端の「温度差」です。測定対象の温度をきちんと測るためには電圧計につないでいる部分の温度がわからなければいけません。
一番簡単なのは冷水に浸けて0℃にしてしまうことですが、長期間使う温度計では現実的ではありません。なので実際には図に書いているように冷接点補償機能の付いた電圧計を使用します。
冷接点補償とは別途温度計を用いてそれぞれの接続部の温度を測り、本来の測定対象の温度計算に用いる機能です。これにより周囲の温度によらず測定をすることができます。
熱電対にはB熱電対、R熱電対など用いる金属の種類によって様々な種類があります。熱電対の種類によって測定できる温度帯が異なりますので、測定対象の温度に適した熱電対を選定してください。
ゼーベック効果による起電力の計算
細かい計算を含みますので興味の無い方は読み飛ばしていただいて大丈夫です。先ほどの金属A,Bを用いた回路に生じる熱起電力について詳しく見ていきましょう。
金属A,Bに生じる電位差VA,VBは温度による金属のゼーベック係数S(T)を用いて
$$V_A=\int_{T_1}^{T_2} S_A(T) dT$$
$$V_B=\int_{T_1}^{T_2} S_B(T) dT$$
として求めることができます。
このことより回路全体に生じる熱起電力Vは
$$V=V_A-V_B$$
$$=\int_{T_1}^{T_2} (S_B(T)-S_A(T)) dT$$
と表すことができます。
また、温度によるゼーベック係数の変化を無視すると
$$V=(S_A-S_B)(T_1-T_2)$$
と近似することができます。
まとめ
- ゼーベック効果とは2種類の金属の温度差で電流が流れる現象のこと。
- 熱電温度計はゼーベック効果を用いている。
- 熱起電力の大きさは各金属のゼーベック係数と温度差から計算することができる。
温度差から電流が生み出せること、ご理解いただけたでしょうか。
実はこの全く逆で、電流を流すことで温度差を生み出す「ペルチェ効果」という現象もあります。これについてはまた今後の記事で解説しようと思います。