電力

【電力】太陽光発電の原理をわかりやすく徹底解説します

最近よく目にするようになった太陽光発電ですが、太陽電池が太陽の光から電気を取り出す原理は結構複雑です。

今回は、太陽光発電の原理について解説したいと思います。

太陽光発電とは

太陽光発電は太陽の光を半導体で出来た太陽電池モジュールに当てることにより、発電を行う方式です。

2012年より始まった固定価格買取制度(FIT制度)で電力の買取価格が一定になったことから一気に普及が広がっています。

太陽光パネルと設置するだけで電気を取り出せるので非常に簡易ですが、気候条件により発電出力が左右されるなどのデメリットもあります。

太陽光発電の原理

太陽光発電は次のような原理により発電を行います。

  1. p型半導体とn型半導体を接合する
  2. 正孔と自由電子が移動し空乏層が出来る
  3. 空乏層に太陽光を当てると電子が伝導帯に移動(内部光電効果)
  4. 内蔵電界によって自由電子と正孔が移動
  5. 半導体間に起電力が生まれる(光起電力効果)

それぞれを詳しく見ていきます。

p型半導体とn型半導体を接合する

半導体の原料となるSi(ケイ素)は価電子が4つで次のように共有結合をしており、自由に動ける電子がないので電気伝導性はほとんどありません。

 

ここに、価電子を3つ持つB(ホウ素)を少量添加(ドープ)すると、共有結合の一つがはずれ空席が現れます。この空席をホールといい、ホールが移動することで電気を通すことが出来るようになります。

このような半導体をp型半導体と言います。

 

一方、添加(ドープ)するものを価電子を5つ持つP(リン)にすると、電子が1つ余ることになり、自由電子として動くことが出来るので、同様に電気を通すことが出来るようになります。

このような半導体をn型半導体と言います。

このp型半導体とn型半導体を接合したものが太陽電池となります。

正孔と自由電子が移動し空乏層ができる

p型半導体とn型半導体を接合すると、拡散現象により正孔はn型半導体側へ、自由電子はp型半導体側へ移動します。

これにより、境界面でそれぞれが結合し、接合面付近に正孔や自由電子などのキャリヤが存在しない空乏層(くうぼうそう)という領域が生まれます。

自由電子が移動してきたp型半導体側の空乏層は自由電子が過剰になることで負に帯電し、正孔が移動してきたn型半導体側の空乏層は正孔が過剰になることで正に帯電します。これにより内蔵電界が発生します。

半導体に太陽光を当てると電子が伝導帯に移動(内部光電効果)

ここで、半導体に太陽光を当てると光エネルギーにより価電子帯に存在していた電子が伝導帯へ移動します。もともと価電子帯の電子がいたところは空席になるので正孔に変わります。

これは、電子には価電子帯、禁制帯、伝導帯というエネルギー帯があり、禁制帯を飛び越えるだけのエネルギーを与えられると、エネルギーの高い領域に移動するというバンド構造の考え方です。

通常の半導体であればエネルギーを与えて電子が伝導帯に移動しても、一定時間が経てばエネルギー的に安定な価電子帯に戻ります。

エコおじい
この戻るときに発光する現象を利用したものがLEDですね。

内蔵電界によって自由電子と正孔が移動

pn接合をした半導体に太陽光を当てると、先程の理屈で自由電子と正孔が多数現れます。これが空乏層に発生した内蔵電界によって自由電子はn型半導体側に正孔はp型半導体側に振り分けられます。

エネルギーは低い方が安定しますが、p型半導体とn型半導体のエネルギー帯は空乏層でスロープ構造になっており、p型半導体の方が電子のエネルギーが高くなっています。ここで、下の図は電子のエネルギーを上向きに書いているので、正孔としては電子とは反対に上に行くほどエネルギーが低くなることに注意が必要です。

要は、通常の半導体結晶であれば太陽の光を当てたところで発電は出来ませんが、p型半導体とn型半導体を接合することにより特殊な性質を持ち、太陽の光から電気を取り出せるようになるというわけです。

ちなみに、フェルミ準位は電子が50%の確率で存在するエネルギー帯を表しており、p型半導体では自由電子は少ないので価電子帯に近いところにありn型半導体側では伝導帯に近いところにあります。

半導体間に起電力が生まれる(光起電力効果)

自由電子と正子が振り分けられることでp型半導体とn型半導体の間に電位差が生まれるので、これに負荷を繋げば電子が流れ電力を得ることが出来ます。

これにより太陽の光が当たり続ける限りは電気をうみだせる仕組みが出来ます。

まとめ

太陽光発電の原理は次のような流れになります。

  • p型半導体とn型半導体を接合する
  • 正孔と自由電子が移動し空乏層が出来る
  • 空乏層に太陽光を当てると電子が伝導帯に移動(内部光電効果)
  • 内蔵電界によって自由電子と正孔が移動
  • 半導体間に起電力が生まれる(光起電力効果)

太陽電池に関わらず、ダイオードなど半導体を利用したものにはこのpn接合が多く使われています。

最初は難しく感じますが、理屈が分かればどれも同じような仕組みで動くので理解しやすいかと思います。是非、一つ一つ丁寧に理解していきましょう。

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エコおじい

プラント業界一筋のエンジニアです。「工業技術をどこよりも分かりやすく解説する」をテーマに2017年からブログ、Youtubeで情報発信をしています。保有資格はエネルギー管理士と電験三種です。

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