最近の工場では、新設の段階からステンレスの配管を採用することが多いように思います。
以前は、配管の材質は基本的に鉄だったので数年使用すれば錆が出てきて、それが要因でバルブなどを何度交換しても固着してしまうなんてことがあったかとおもいます。
ステンレスにすれば、鉄に比べて錆びにくいので、長期的な運用を考えればステンレス配管にしておくほうがいいということになります。
では、ステンレス配管はいい事ずくめなのでしょうか?今回は、ステンレス配管にすることによるデメリットについてまとめてみたいと思います。
こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。
1. ステンレス配管とは?

ステンレス配管とは、言葉の通りステンレスでできた配管のことです。
ステンレスは鉄とニッケルとクロムの合金で、自身のまわりに不動態と呼ばれる薄い酸化被膜を作ることで、鉄に比べて酸化しにくい性質があります。
ただ、あくまで錆びにくいというだけで絶対に錆びないわけではないので注意が必要です。
2. ステンレス配管のデメリット
新設の段階から標準で設置されるステンレス配管ですが、次のようなデメリットがあります。
2-1. 値段が高い
まず一番に挙げられるのが、ステンレス配管は値段が高いことです。
モノタロウ(外部リンク)で検索してみると、目安の金額が出てきました。
- ステンレス配管 25A 4m 11000円
- 鉄配管 25A 4m 4390円
ステンレス配管は鉄配管に比べ、約2.5倍の値段がします。
短距離であれば気にならないかもしれませんが、大型の設備になるとコストに大きな差が出てきてしまいます。
2-2. 熱膨張が大きい
ステンレス配管は鉄配管に比べ、熱膨張しやすいという性質があります。
そのため、配管を施工する際はUベントやフレキシブルチューブなどで熱膨張を吸収してやらなければいけません。
膨張率を鉄配管と同じように設計すると、フランジが外れたり、配管に亀裂が入るなどのトラブルが発生してしまいます。
2-3. 熱伝導率が低い
金属の熱伝導は、内部を自由に動き回る自由電子によって変化します。
ステンレスは鉄に比べ、ニッケルやクロムが入っているため、自由電子の動きを妨げ、熱伝導率が下がります。
輸送配管では放熱が多少下がるためメリットになりますが、熱交換器などに使用する場合は注意が必要です。
同じ交換熱量で設計した場合は、伝熱面積を多少大きく取る必要があります。
2-4. 焼け付きが発生しやすい
ステンレスは、ボルトを占めるときなどに無理な方向に力が加わると金属同士が溶着する「焼け付き」が発生しやすいという特徴があります。
これを工事関係者の間では「かじる」や「がじる」といいますが、焼け付きが発生してしまうとボルトが取れなくなり、最悪の場合新品と交換しないといけなくなります。
ステンレスの製品を扱う場合は、上手くボルトが入らなかった際に無理に力を掛けず丁寧に扱う必要があります。
3. まとめ
ステンレス配管のデメリットは
- 値段が高い
- 熱膨張が大きい
- 熱伝導率が低い
- 焼け付きが発生しやすい
配管ではありませんが、、ステンレスは粘り気があり、加工が難しいという特徴もあります。
錆びないということで非常に利用が増えてきたステンレス配管ですが、これらを注意しながら扱う必要がありそうです。
コストを考えると、錆がどうしても発生しやすい水配管のみステンレス配管にするなんてこともありかもしれませんね。
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