科学技術系のニュースで「超伝導」という言葉を見かけることがありますよね。また産業分野では電力分野で「超電導技術」の紹介がされることがあります。
最近では、リニアモーターカーに利用される技術ということで注目を集めています。
今回は超電導の現象と用途について解説したいと思います。
超電導現象とは
特定の金属を冷却していくと、ある温度から急激に電気抵抗が下がりゼロになる現象が知られています。
超電導現象とは、次の2つの性質から説明されます。
- 電気抵抗がゼロになる
- マイスナー効果
それぞれについて詳しく解説します。
電気抵抗がゼロになる
1つ目が、電気抵抗がゼロであることです。電気に関する法則を思い出していただきたいのですが、
$$V=RI$$
$$P=VI=RI^2$$
V:電圧[V] R:抵抗[Ω] I:電流[A]
という関係がありますよね。
物体に電流が流れるときには、そのエネルギーの一部が熱として放出され、その度合いは物質の抵抗により決まります。電気抵抗がゼロということは、いくら電流が流れても電圧が変わらない、電力が消費されないので無駄なエネルギーが消費されないということを意味しています。
マイスナー効果
(引用:Wikipedia「マイスナー効果」)
2つ目がマイスナー効果です。
マイスナー効果とは外部から磁場をかけても、超電導体は磁力線を弾き、反発するという性質のことを指します。この現象から、磁石と反発するという性質(反磁性)を持ちます。1933年にドイツの物理学者によって発見、命名されました。
超電導現象は冷却すれば全ての金属で見られるわけではありません。最初に超電導の性質が発見されたのは水銀(-269℃)で、そこからより性能の良い(超電導の性質を持つ温度が高い)金属として、様々な銅酸化物系(-190 ~ -140℃)や鉄系超電導体(-247 ~ -218℃)が報告されています。新たな材料の探索や、超電導のメカニズムについての研究は現在も盛んに行われています。
一方、銀や銅など、電気伝導度の高い金属は超電導体にはならないことが知られています。
また日本語には「超電導」と「超伝導」という2つの表記方法があるようですが、両者に違いはないそうです。調べてみたところ、産業・工業系では「超電導」、理学系では「超伝導」が使われる傾向にあるとのことでした。ちなみに英語はSuperconductivityの一つだけです。
超電導の原理
温度を下げるとなぜ超電導現象が起こるのか、これを理解するには量子力学の専門知識が必要になるので、簡単にご説明します。
金属に電流が流れる際、金属内の電子の流れは通常バラバラで、電子同士がぶつかり合って、熱を生み出します。これを電気抵抗と考えてください。
温度を下げて超電導現象が発生すると、電子同士が対になることで、同じ方向を向き(位相がそろい)抵抗なしに電気を流すことができるようになるということです。
マイスナー効果の原理について、簡単に解説すると、超電導体は電気抵抗がゼロであることに対し、磁場の変化もゼロにする力が働くことに由来します。外部から磁場がかかっても、超伝導体の表面に電流が流れることで逆向きの磁場を発生させ、全体の磁場変化はなくなります。そのため、超電導体は磁石を寄せ付けない性質を持つことになります。
超電導の使用例
産業分野で利用されている例として、最も有名なものはリニアモーターカーでしょう。
モーターは電磁石・磁石の働きで軸が回転するものですが、回るのではなく直線状に伸ばした構造で推進力を与えるので「リニア(直線)」モーターと呼ばれます。
その中でも超電動時磁石を用いたものは、500km/hを超える速度を出すことが可能で、実用化に向けて準備か進められています。
磁力で浮き上げることで摩擦をなくし、高速化するのですが、その磁石に超電導が用いられています。超電導の性質を持つ金属で作った電磁石であれば、わずかな電流で半永久的に動かすことができ、エネルギーロスを減らせます。そのためリニアの車内には超電導を作り出すために冷凍機が設置されています。
リニアに利用されているピン止め効果はこちらの動画が分かりやすいです。
また医療分野ではMRI(核磁気共鳴画像法)装置にも使用されています。超伝導磁石を用いたMRIは、永久磁石を用いたタイプに比べて、磁場強度や空間均一性に優れていることが知られています。
電力部門では、送電線を超電導ケーブルにするための材料や冷却方法の研究も行われており、実用化すれば大幅に電力ロスをなくすことが期待できます。
まとめ
- 超電導とは低温で、電気抵抗ゼロの状態の現象のこと
- 超電導には磁石に反発する性質(反磁性)がある
- 研究が進んでいる分野であり、産業分野のブレークスルーが期待できる
超電導は古くから知られている現象ですが、今まさに実用化に向けた研究が進んでいるということですね。
リニアが事業化すれば私たち日本人にとっても、より身近な技術になるでしょう。電気に関する記事はこちらもおすすめです。