蒸気

【蒸気】スチームアキュムレータは何のために使われているの?

現場のボイラー室にアキュムレータと呼ばれる大きな装置を見たことはありませんか?

初めて見る方は、何のためにあるのだろうと思った方も少なくないはず。また省エネ検討時には名前が上がる装置でもあります。今回はスチームアキュムレータについて解説します。

こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。

スチームアキュムレータとは

まず語源から確認してみます。英語のaccumulateには「蓄積する」という意味があり、蒸気を蓄積するものだということがわかります。

スチームアキュムレータは、縦長もしくは横長の丸い筒型の構造をしています。サイズは20m3以上の大きなものが多いかと思います(小型で使用する用途は少ないはず)。

ボイラーから発生させた蒸気をスチームアキュムレータに配管し、そこから蒸気を各現場に送り出すという形で接続されています。

この大きな筒の中に高圧高温の熱水を溜めておき、工場での蒸気使用量が大きくなった時にアキュムレーター内の熱水が蒸発し、ボイラーでは足りない分の蒸気を賄うことができます。

つまりスチームアキュムレーターは蒸気を作り出すための装置ということです。

スチームアキュムレータのメリット

スチームアキュムレータはどんな用途で用いられるのでしょうか。一つ一つ確認していきましょう。

負荷変動を吸収できる

工場内で大きな装置が断続的に動く(バッチ運転)場合、その装置が動くときだけ多くの蒸気が求められます。

ボイラーの総蒸発量はその量を考慮しておく必要があるため、初期設備投資が大きくなってしまいます。

スチームアキュムレータを導入し、装置の最大蒸気使用量を確保できるだけの熱量をストックしておけば、ボイラーの選定は工場の平均蒸気使用量で計算することができます。結果としてコストダウンにつながります。

省エネになる

ボイラーの稼働は負荷変動を小さく、一定負荷で稼働を続けることが省エネにつながります。

例えば、昼夜で蒸気負荷が大きく変わる現場であっても、アキュムレータで変動分を吸収することができれば、ボイラーの燃料効率を高め省エネにつなげることができます。

スチームアキュムレータのデメリット

全ての現場においてスチームアキュムレータが有効とは限りません。デメリットにはどんなことが挙げられるのでしょうか。

蒸気使用量が少ない時でも熱を消費する

スチームアキュムレータ本体の容積が大きく、また内部の熱水を常に高温高圧に保つ必要があるため、周囲への放熱によるロスがあります。

ボイラー効率アップによる省エネメリットと、熱エネルギー損失を丁寧に計算した上で、導入を検討してください。

【配管】放熱量を簡単に計算する方法。保温の効果はどれくらい?

続きを見る

第一種圧力容器に該当するため検査費用が掛かる

年1回の検査期間による性能検査が義務付けられ、また使用には有資格者が必要です。ボイラー技士の資格不要な小型貫流ボイラーを使用している現場では、新たに有資格者が必要になるため、確認してください。

【圧力容器】第一種と第二種はどう違う?圧力容器の区分について

続きを見る

設置スペースが大きい

屋内に設置を検討する場合には、結構大きなスペースが必要です。スチームアキュムレータ導入よりも、小型貫流ボイラーを1台増やす方がスペースは節約できます。

必要となる蒸気量を確認した上で、該当するスチームアキュムレータのサイズを各メーカーに確認しましょう。

まとめ

  • スチームアキュムレータはボイラーで作られた蒸気を溜めておく装置
  • 省エネにつながるかどうか、熱利用負荷の変動を考慮した計算が必要
  • ランニングコストも大きいので、設置には検討が必要

アキュムレーターは導入する数が少ないので、経験がないという方も多いです。

検討する場合は、いろいろな条件を考慮する必要があります。

蒸気

2024/7/5

【蒸気】フラッシュタンクとは何か、設置する目的を解説

フラッシュタンクは、工業プロセスにおいて省エネルギーを考える上で重要な役割を果たす装置です。 この記事では、フラッシュタンクとは何か、設置する目的について解説します。 フラッシュタンクとは フラッシュタンクは、高温の凝縮水を低圧のタンクに入れ、再蒸発(フラッシュ)させた蒸気を再利用するためのタンクです。 高圧の蒸気が低圧に変換される際に、凝縮水が蒸発し蒸気が発生します。この蒸気はフラッシュ蒸気と呼ばれ、フラッシュ蒸気を回収、利用するためにフラッシュタンクが使用されます。通常、ボイラーや熱交換システムに接続 ...

ReadMore

蒸気

2024/4/22

【蒸気】主蒸気とプロセス蒸気の違い、求められる役割は?

工場の自家発電設備などを設ける場合に、蒸気系統を主蒸気とプロセス蒸気に分けている場合があります。 この記事では、主蒸気とプロセス蒸気の違いやそれぞれに求められる特徴について解説します。 主蒸気とは 主蒸気とはボイラーで発生させた高温高圧の過熱蒸気で主に発電用に利用されます。 温度としては約400~600℃程度、圧力は発電方式によりますが20MPaG以上になる場合もあります。ランキンサイクルの効率としてはタービン入口の蒸気温度、圧力が高ければ高いほど熱落差を大きく取れるため、発電効率が上がります。 主蒸気に ...

ReadMore

蒸気

2023/7/10

【蒸気】直接加熱をした場合の計算方法は?

前回、蒸気の圧力を下げると省エネになるのか?という記事で間接加熱の場合の計算を記載したので、今回は直接加熱についても書きたいと思います。 蒸気で直接加熱する場合の計算方法① まず、上の図のようにタンクに水をため、直接蒸気を投入して加熱する場合を考えます。この時、タンクには温度センサーを設置し、制御弁によってタンク内の温度を調整します。 次の条件で計算を進めていきます。 10℃の水、10トンを60℃まで加熱するのに0.3MPaGの蒸気はどれだけ必要か 直接蒸気を投入して計算する場合は間接加熱のように単純な計 ...

ReadMore

蒸気

2022/3/3

【蒸気】蒸気の圧力を下げると省エネになるのはなぜ?デメリットは?

先日読者の方から「蒸気の圧力を下げると省エネになるのはなぜか教えてほしい」という質問をいただきました。 そこで、今回はその回答を記事にしてみたいと思います。 蒸気の圧力を下げると省エネになるといわれる理由 熱交換器に供給する蒸気の圧力を下げると省エネになるといわれる理由は「圧力を下げた方が潜熱が増加するから」です。 熱交換器を用いた間接加熱では、被加熱物を加熱するのに使用するのは蒸気の潜熱です。交換熱量を加熱している蒸気の潜熱で割ると蒸気使用量が計算できますが、分子の潜熱が大きくなることにより使用量が小さ ...

ReadMore

蒸気

2021/8/29

【蒸気】減温注水って何?目的、計算方法は?

大型のプラントなどでは、蒸気配管に水を噴霧する減温注水があるところが多いです。 今回は、減温注水とは何か、目的や計算方法について解説したいと思います。 減温注水とは 減温注水とは過熱状態の蒸気に水を噴霧し、温度を下げることを目的に行われます。 一般的に蒸気タービンを回転させるための蒸気は、タービン効率を上げ、蒸気中の水滴によるタービンの減肉を防ぐために飽和温度より高い温度で利用されます。 この蒸気を過熱蒸気といい、過熱器によって作られます。過熱器はボイラーの排ガス熱や電気ヒーターなどを熱源とする場合が多い ...

ReadMore

  • この記事を書いた人

エコおじい

プラント業界一筋のエンジニアです。「工業技術をどこよりも分かりやすく解説する」をテーマに2017年からブログ、Youtubeで情報発信をしています。保有資格はエネルギー管理士と電験三種です。

効率的に技術系資格取得を目指す方必見!当サイトおすすめの通信講座

最短で資格を取得するためには、いかに効率よく学習するかが最も重要です。

参考書だけでは分かりにくいという方には、全て解説動画で学べるSATの通信講座がおすすめです。日々の通勤時間など隙間時間を利用して無理なく効率的に学習を進めることが出来ます。

超シンプルで分かりやすいSAT『エネルギー管理士』

エネルギー管理士の通信講座です。イラストを多用したシンプルで分かりやすいテキストと動画がセットになっています。

他社と比較すると価格もお手頃で、特に熱力学などを学んだことのない初学者におすすめの通信講座です。

熱分野レビュー 電気分野レビュー 他社との比較

エネルギー管理士以外にも電験や衛生管理者など25の資格の通信講座を展開しています。

最短で電験取得を目指すならSAT『電気主任技術者講座』

イメージしにくい交流回路についても多様なイラストと解説動画で詳しく解説してくれます。独学ではなかなか勉強が進まないという方に特におすすめの講座です。電気について詳しく学べるので実務で電気を使うという方には最適な教材です。

電験三種レビュー 他社との比較

技術系資格の最高峰SAT『技術士合格講座』

論文添削やZOOMマンツーマン指導が付いており、面接対策もWeb上で行うことが出来ます。また、テキストは毎年改定されているので常に最新の教材で勉強することが出来ます。

-蒸気

© 2024 エネ管.com Powered by AFFINGER5

エネ管.comをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む