ボイラー効率とは、燃料の持つエネルギーの何%が蒸気に変換されたかという指標です。
ボイラー効率を計算する方法としては2つの方法があります。
- 入出熱法
- 熱損失法
どちらも計算すると当然同じ結果になるのですが、考え方が違います。
ボイラー効率とは
ボイラーは、燃料などの熱で水を蒸気に変換するための機器ですが、入ってきた熱量をすべて蒸気に変えられるわけではありません。
当然、排ガスや定期的に行うブローなどにより、熱の一部は外に捨てられてしまいます。
今回は、わかりやすくするためにブローは無視して、排ガスのみで熱を失うとします。
例えば、上のボイラーであれば給水と燃料の持つ熱量を合計⑩とすると、蒸気として出ていく熱量は⑧なので、このボイラー効率は80%という事になります。
これをそれぞれ2つの方法で式に表すと以下のようになります。
入出熱法
入出熱法でボイラー効率を計算するとこのような式になります。
上の図に当てはめると
このような式になり、ボイラー効率は80%になります。
熱損失法
一方、熱損失法で同様に計算を行うと次のような式になります。
こちらも上の図に当てはめると
計算すると同様にボイラー効率は80%となります。
ボイラー効率が100%を超える理由
ボイラーのスペックを見ていると「ボイラー効率100%以上を実現」みたいな文章が書かれているのを見ることってありませんか?
ボイラー効率が100%以上になる理由は、ボイラー効率を計算するときに低発熱量を用いているからです。
高発熱量と低発熱量の違いは、燃料中に含まれる水分が蒸発することによって発生する蒸気の潜熱を含むかどうかで、含むものを高発熱量、含まないものを低発熱量と呼びます。
つまり、廃熱回収を実施して水蒸気の潜熱を回収することができれば、低発熱量に含まれないエネルギーを利用できるため、ボイラー効率が数字上100%を超えます。ただ、実際には燃料以上のエネルギーを取り出せているわけではなく、高発熱量基準だと100%を超えることはありません。
高発熱量と低発熱量の違いは、下記を参考にしてもらえればと思います。
【燃料】高位発熱量と低位発熱量の違いとは
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ボイラー効率が100%以上になる条件
ボイラー効率が100%以上になるには次の3つの条件が必要です。
エコノマイザで熱回収をしている
ボイラーでは燃焼後の排ガス中に多くのエネルギーを含み、何もしなければ通常5~10%程度のエネルギーロスが発生します。
そこで、ボイラー効率を高めるためにエコノマイザ(節炭器)を設置し排ガスと給水を熱交換させることで排熱回収を実施します。
排ガスの出口温度が低い
ボイラー効率を100%以上にするためには、排ガス中に含まれる水蒸気の潜熱を回収しなければいけません。
水蒸気の潜熱を回収するためには、大気圧で蒸気の飽和温度が100℃だということを考えると、100℃以下になるまで熱回収を実施しなければいけません。
ボイラー効率100%以上をうたうボイラーでは、エコノマイザの伝熱面積を大きく取り、排ガスの出口温度は100℃以下まで下げる必要があります、
燃料がガス
排ガスの温度をできるだけ下げようと思うと、酸露点の問題が出てきます。
酸露点による低温腐食は、燃料中に含まれる硫黄が酸化されたあと、結露水に溶け込み硫酸になることで、配管や熱交換器を腐食する現象です。
これを防ぐためには、硫黄分が極端に少ない燃料を使用する必要があります。
そこで、重油や石炭では実施できず、必然的にLNGやLPGなどのガス燃料を使用することになります。
最近では、ガス炊きボイラーが増えてきたことで、「ボイラー効率100%以上」という言葉を見ることも多くなってきました。
【ボイラー】燃料を重油からガス炊きに更新するメリット
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まとめ
- ボイラー効率には入出熱法と熱損失法がある。
- ボイラー効率が100%を超える理由は計算に低位発熱量を用いるから。
- ボイラー効率が100%以上になるためには3つの条件がある。
実際には、蒸気、給水の熱量はその圧力の比エンタルピー(kJ/kg)×質量(kg)で表され、燃料の熱量は低位発熱量(kJ/kg)×質量(kg)で表されますが、基本の考え方は上のようになります。
試験以外の実務でボイラー効率を計算する場合は、比熱や流量などのデータを自分で取ってこなければならないので、計算よりもそちらの方が大変です。
ボイラー効率が100%以上と聞くと、魔法のような気がしますが、実際にはそんなうまい話もないですね。ボイラー効率の考え方について少しでも参考にしていただければと思います。
その他ボイラーに関する記事はこちらになります。
【ボイラー】ボイラーとは何か、詳しく徹底解説します
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