ボイラーの燃焼室、過熱器などの燃焼装置では、燃料に含まれる物質が原因で配管や熱交換器を腐食させることがあります。
この腐食には「高温腐食」と「低温腐食」の2種類があり、それぞれの発生要因や対策が違います。
今回は、燃焼装置で注意するべき「高温腐食」と「低温腐食」の違いについて書きたいと思います。
高温腐食と低温腐食の違い
高温腐食と低温腐食の最も大きな違いは、読んで字のごとく腐食が発生し始める温度です。
高温腐食では、成分にもよりますが大体500℃以上、低温腐食では120℃程度で発生し始めることが多いです。
高温腐食とは?
高温腐食は、燃料中のバナジウム、ナトリウム、ニッケルなどの金属成分を含む灰が要因となって発生します。
灰に含まれる金属酸化物が伝熱面などに付着し、これが高温で融解することで、伝熱面の酸化被膜が壊され腐食を進行させます。このような腐食を高温腐食と呼びます。
高温腐食はいくつかの金属元素が要因で発生しますが、バナジウムが750~1500℃で一度、五酸化バナジウムに変化し、その後675℃の融点以上になって融解されることで腐食を発生させる現象のみ、「バナジウムアタック」という名称がついています。
高温腐食の対策
高温腐食の対策は発生要因を考慮すると、次のようになります。
- 伝熱面の温度が金属の融点以上にならないようにする。
- スートブロア(すす吹き)を実施する。
- 添加剤を入れて融点を上げる
- バナジウム、ナトリウム成分の低い燃料を使用する。
根本対策としては、排ガス温度を上昇させすぎないようにボイラーの構造を調整したり、スートブロワにより灰が長時間堆積しないようにします。また、燃料そのものに高温腐食の要因となる成分の多いものを使用しないというのも重要なポイントです。
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低温腐食とは?
低温腐食は、主に燃料中に含まれる硫黄成分が要因となって発生します。
硫黄が酸化され、それが排ガス中の水蒸気が凝縮した水に溶けることによって硫酸が発生し、金属面を腐食させます。
水蒸気の凝縮が始まり、伝熱面に結露水が発生すると腐食が進行するため、温度としては120℃程度で発生します。主に排ガスの温度が最も下がる節炭器(エコノマイザ)や空気予熱器などで発生します。
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低温腐食の対策
低温腐食の対策としては次のようになります。
- 硫黄分の少ない燃料にする。
- 排ガスの熱回収温度が酸露点以下にならないようにする。
- 添加剤で硫酸を中和する。
- SO3にならないように過剰空気を減らす。
特に硫黄成分の多い燃料を使用する場合は排ガスの温度を下げすぎないように、節炭器(エコノマイザ)や空気予熱器の伝熱面積を減らすなどの考慮が必要です。
低硫黄の燃料に転換すると、省エネルギーが図れるというのは低温腐食を気にせず、排ガスの熱回収を実施できることに大きな意味があります。
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まとめ
- 高温腐食は主に500℃以上で発生し、金属成分を含む灰が要因。
- 低温腐食は主に120℃付近で発生し、燃料中に含まれる硫黄成分が要因。
高温腐食と低温腐食は、どちらも配管や熱交換器を腐食するということは同じですが、発生要因が全く違います。
排ガスと熱交換を行う機器を設計する場合には十分に注意する必要があります。
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