熱交換器を設置して工場から出る排熱を有効利用することは省エネルギー対策として有効です。
では、熱交換器を設置すれば最大どこまで熱を回収できるのでしょうか?
今回は熱交換器の最大交換熱量をテーマに解説したいと思います。
1. 熱交換器の最大交換熱量
熱交換器を利用して、どこまで熱を回収できるかは向流か並流かによって変わります。
1-1. 向流の場合
最も多い向流の場合、熱交換器で交換できる最大熱量は対数平均温度差が取れなくなるポイントまでということになります。
例えば、熱交換器を流れる2つの流体の入口温度が決まっていたとします。
仮に1つの流体の熱交換器出口温度を決めてやれば、交換熱量の計算からもう一方の流体の出口温度は勝手に決まります。
- 低温側入口温度:T1
- 低温側出口温度:T2=x
- 低温側比熱:c1
- 低温側流量:m1
- 高温側入口温度:T3
- 高温側出口温度:T4=y
- 高温側比熱:c2
- 高温側流量:m2
任意に決めてやる方の温度をx(=T2)、もう一方の流体の出口温度をy(=T4)とすると、yは次の式で表すことが出来ます。
$$y=T3+\frac{m1c1(y-T1)}{m2c2}$$
この値を元に、対数平均温度差を計算してみましょう。
xとyをそれぞれ対数平均温度差の式に当てはめると次のような式になります。
$$Ta=y-T1$$
$$Tb=T3-x$$
$$ΔT[LMTD]=\frac{Ta-Tb}{ln(Ta/Tb)}$$
xの値を小さくしていくと、どこかのタイミングで対数平均温度差が取れなくなります。
このポイントが熱交換器で回収できる熱量が最大になります。つまり、これ以上熱回収を行うと高温側と低温側の温度が逆転してしまうというポイントです。
いくら交換効率を高くしたところで20℃の水で80℃を10℃まで冷やすということは不可能です。温度は高いところから低いところに流れるという熱力学第二法則(エントロピー増大の法則)に反してしまいます。
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1-2. 並流の場合
並流の場合は2つの流体の温度差がなくなるポイントが最大交換熱量になります。
こちらは対数平均温度差ではなく熱計算のみで算出することができます。
先程と同様に、一方の流体の出口温度を決めてやり、もう一方の流体の出口温度を計算します。
$$y=T3+\frac{m1c1(y-T1)}{m2c2}$$
x=yとなるポイントで2つの流体の温度差が無くなり、これ以上の熱交換ができなくなります。
この2つの式を見ると、向流の方が熱交換効率が高いことがわかりますね。
2. 伝熱面積の計算方法
それぞれの流体の入出温度が計算できれば、必要な伝熱面積を計算することができます。
伝熱面積計算方法についてはこちらの記事を参照してください。
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最大まで熱交換させようと思うと、かなり大きな熱交換器が必要になる場合が多いです。
実際には、設置可能かも含めてメリットとコストの折り合いをつけながら出口温度を確定させます。
3. まとめ
- 回収できる最大熱量は向流と並流で変わる
- 向流のほうが回収熱量は大きくなる
- 熱量が計算できれば必要伝熱面積が分かる
熱計算は一見複雑に見えますが、やっている計算はほとんど同じなのでエクセルなどを利用して計算するとあまり難しいものではありません。
少しでも皆さんの熱計算に対する理解が深まれば幸いです。