ボイラー効率や燃料単価などを計算する場合には、各燃料が保有するエネルギーの値を使います。このとき、燃料の熱量を表す値には「高位発熱量」と「低位発熱量」と呼ばれるものがあります。例えば、A重油の高位発熱量は45.2MJ/kg、低位発熱量は42.7MJ/kgです。
では、この「高位発熱量」と「低位発熱量」の違いは何でしょうか?今回は燃料のもつ2つの発熱量の違いについて解説してみたいと思います。
こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。
高位発熱量と低位発熱量の違い
高位発熱量と低位発熱量の違いは、燃料中に含まれている水分の蒸発潜熱を含むか含まないかということです。蒸発潜熱を含めたものを高位発熱量、蒸発潜熱を差し引いたものを低位発熱量といいます。
ちなみに水の蒸発潜熱とは、水が水蒸気に変化するのに必要な熱量のことです。圧力によって変化しますが、大気圧下で100℃で沸騰する場合は、蒸発潜熱は2256kJ/kgです。
それぞれの言葉の定義を見てみましょう。
高位発熱量
高発熱量(高位発熱量)もしくは総発熱量は、燃焼後の生成物を燃焼前の温度に戻し、生成した水蒸気がすべて凝縮した場合の発熱量である。燃焼で生成された水が液体で存在するような一般的な温度で燃焼反応のエンタルピー変化を想定しているため、総発熱量は燃焼熱に等しい値となる。熱量計で測定される熱量は高発熱量である。
(出典:Wikipedia)
まず、燃料の発熱量を熱量計で算出するときには、高位発熱量を測定することになります。
低位発熱量
低発熱量(低位発熱量)もしくは真発熱量は、燃料中の水素から生成する水および本来含まれている水分の蒸発熱を高発熱量から差し引いたものである。すなわち、生成した H2O はすべて水蒸気として計算されるため、水を蒸発させるのに必要な蒸発潜熱は含まれない。燃焼ガス温度の計算には通常、低発熱量が用いられる。
(出典:Wikipedia)
基本的に燃焼計算を行う場合は、燃料のもつエネルギーは低位発熱量で考えます。
その理由は、燃焼させたときに発生する水蒸気は排ガス中に含まれるため、大気に放出されてしまうからです。
ボイラー効率なども、燃料の低位発熱量をベースに考えるため、エコマイザ(排ガスと給水の熱交換機)などを導入すると、低位発熱量に含まれない水の凝縮潜熱を回収できるため、ボイラー効率が100%を超えたりします。
高位発熱量だけだと、毎回低位発熱量を計算しなければならず面倒です。低位発熱量は学者がエンジニアのためにまとめてくれたやさしさだとも言えます。
低位発熱量を用いてボイラー効率を計算
例題として次の問題を解いてみます。
重油10kgから0.5MPaGの飽和蒸気が150kg発生した。
このボイラーの効率は何%か?
ただし、重油の低位発熱量は42700kJ/kg、飽和蒸気の比エンタルピーは2756kJ/kg、給水温度は20℃とする。
解答
まず、重油10kgの熱量を計算します。
$$10kg×42700=427000kJ/kg$$
0.5MPaGの飽和蒸気を1kg発生させるのに必要な熱量は給水温度20℃なので
$$2756-(4.2×20)=2672kJ/kg$$
150kg発生させたので
$$2672×150=400800$$
よってボイラー効率は
$$\frac{400800}{427000}=93.9%$$
低位発熱量はこのように使用します。
低位発熱量を使って計算すると、ガス燃料の場合はボイラー効率が100%を超えることがあります。詳しい話はこちらの記事をご覧ください。
【ボイラー】ボイラー効率って何?100%を超えるのはなぜ?
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高位発熱量から低位発熱量を計算する方法
高位発熱量と低位発熱量の関係は次の式で表すことができます。
ただ、計算する際に厄介なのが、燃料中の成分に水分とは別に水素が入っていた場合は注意が必要です。
燃料中の水素は燃焼すると水になるので、もとから入っている水に燃焼で発生する水を足さなければいけません。
この時、例えば水素1kgから水は何kg発生するでしょうか?
水素の燃焼式を参考にします。
水素の原子量が1、酸素の原子量が16なので、水素4kg(左辺)からは水が36kg(右辺)、つまり水素1kgから水が9kg発生するということがわかります。
まとめると、燃料の高位発熱量から低位発熱量を計算するときに必要な条件は次の4つです。
- 燃料の高位発熱量(kJ/kg)
- 燃料中の水分量(%)
- 燃料中の水素(%)
- 水蒸気の潜熱(kJ/kg)
例えば燃料の高位発熱量30000kJ/kg、水分量3%、水素4%、凝縮潜熱2200kJ/kgだとすると低位発熱量は上の式を使うと
低位発熱量は29142kJ/kgということになります。
まとめ
- 高位発熱量と低位発熱量の違いは水分の潜熱を含むかどうか。
- 水蒸気は排ガスとして放出されるため、実際には使用できない。
- ボイラー効率などの計算で使用する際は低位発熱量を使う。
- 高位発熱量から低位発熱量を計算することが出来る。
高位発熱量と低位発熱量の違いは水分を含むかどうかですが、普段熱量を計算する場合は低位発熱量だけでよさそうですね。
少しでも参考にしていただければと思います。