配管

【配管】保温の厚みと放熱の関係、最適な保温の厚みは何mm!?

高温の流体を扱う場合、火傷防止や放熱ロスを削減するため保温は必須です。

しかし、いざ保温について検討しようと思うと何mm程度の厚みがあればいいのか?今、ついている保温の厚みは最適なのか?が分からないという方もいると思います。

そこで今回は保温の厚みと放熱ロスの関係、そこから分かる最適な保温の厚みについて検証した結果を書いていきたいと思います。

最適な保温の厚みはどれくらい?

今回は次の3パターンで計算を行いました。放熱ロスの計算方法についてはこちらの記事を参照にしてください。

【配管】放熱量を簡単に計算する方法。保温の効果はどれくらい?
  1. 高温流体200℃、外気温20℃の場合
  2. 高温流体400℃、外気温20℃の場合
  3. 高温流体90℃、外気温20℃の場合

計算に用いる条件は次のものを用いています。

  • 高温流体側熱伝達率 h1:10000 [W/㎡K]
  • 熱伝導率(鉄) λ1:84 [W/mK]
  • 配管厚み L1:5 [mm]
  • 保温材の熱伝導率 λ2:0.05 [W/mK]
  • 空気の熱伝達率 h2:20 [W/㎡K]

上記の条件で、配管の中に高温流体を流し、外気温20℃の時にどの程度の放熱ロスが発生するかを計算した結果、次のようなグラフが得られました。

横軸が保温の厚み(mm)で縦軸左が放熱量(W/㎡)、縦軸右が保温の表面温度(℃)を表しています。

どれも同じようなカーブを描いており、10mm程度までは放熱量が大きく下がっていますが、ある程度まで下がると、カーブは緩やかになっていきます。

つまり、保温の厚みは厚ければ厚いほど効果が得られるというものではなく、ある程度の厚みがあればそれ以上厚くしてもほとんど効果は得られないという事になります。

今回の場合、最適な保温の厚みは次のようになります。

  1. 高温流体200℃、外気温20℃の場合 ⇒ 20mm
  2. 高温流体400℃、外気温20℃の場合 ⇒ 20mm
  3. 高温流体90℃、外気温20℃の場合 ⇒ 15~20mm

内部流体の温度が2倍になったからと言って2倍の厚みが必要という訳でもなさそうです。

火傷防止という観点から見ても、保温の表面温度が50℃程度まで下がっていれば全く問題ないと言えます。

保温の厚みと省エネメリット

次に保温の厚みと省エネメリットについて考えてみたいと思います。

先ほどと同様の3パターンで、100A配管を100m保温した場合の放熱ロスを金額のグラフにしてみました。

年間ロス金額を計算するために次の条件を加えています。

  • 年間稼働時間:7000 [時間]
  • 熱量単価:0.002 [円/kJ]
  • 100A配管表面積:35.91 [㎡](100m当たり)

すると、次のようなグラフが得られました。

横軸が保温の厚み(mm)で縦軸左が放熱ロス金額(円/年)、縦軸右が保温の表面温度(℃)を表しています。

例え5mmであっても保温をするだけで数百万円のメリットが出ることが分かります。ただ、保温を分厚くすればするほど、保温コストに対して得られるメリットが少なくなります。

そのため、経済的に最もバランスのいい厚みを探っていく事になります。

保温の厚みと表面温度

保温の厚みが厚くなればなるほど表面温度は下がっていきます。

どの程度下がるかは、これまでのグラフの通りですが計算方法は熱収支と同様の考え方で次のように行っています。

【熱力学】ヒートバランスって何?計算方法や使い方は?

例えば、保温材表面で見た場合、単位面積あたりに入ってくる熱量(Qin)と出ていく熱量(Qout)は次の計算で表すことができます。

$$Qin=Uin×(t2-t1)$$

$$Qout=Uout×(t3-t2)$$

$$\frac{1}{Uin}=\frac{1}{h1}+\frac{L1}{λ1}+\frac{L2}{λ2}$$

$$\frac{1}{Uout}=\frac{1}{h2}$$

熱収支の釣り合う点によって温度は決まるので

$$Qin=Qout$$

t1:高温流体温度、t2:保温材表面温度、t3:空気温度

これらの方程式を計算することによって保温材の表面温度(t2)を計算することができます。

U値に関しては次の記事を参照してください。

【伝熱工学】熱伝導率と熱伝達率の違いは!?2つを合わせたU値の求め方

実際には次のようなエクセルを用いて計算をしています。

実際にエクセルを使って条件を変えて計算したいという方は、ココナラでエクセルファイルを1000円で販売しているので購入していただけるとありがたいです。

「配管放熱の保温に関する計算を自動で出来ます」というサービスで検索してもらえると出てきます。

自分で1から作るとなると数時間はかかるので時間の削減になりますよ。熱の勉強をしたいという方にもおすすめです。

配管放熱の保温に関する計算を自動で出来ます 放熱計算を行い投資採算性を計算することができます。

まとめ

  • 保温の最適な厚みは表面温度が50℃程度まで下がるポイント。
  • 今回の場合は20mm程度あれば十分。
  • 省エネ効果と投資のバランスを考えながら検討する。

高温流体の温度によってもう少し差が出るかと思いましたが、どちらも同じ厚みで問題なさそうという結果になりました。

保温の厚みについて計算したいという方は、是非参考にしてみてはいかがでしょうか?

【バルブ】バルブに保温は必要?年間放熱ロス金額と保温カバーの投資採算性について

続きを見る

配管

2024/7/7

【配管】ラプチャーディスクを設置する目的、安全弁との違いは?

産業施設やプラントの運用において、安全性を保つための圧力管理は非常に重要です。 過剰な圧力が発生すると、設備の損傷や事故の原因となり得るため、適切な圧力解放装置が必要です。 ラプチャーディスクと安全弁はその代表的な例ですが、それぞれの特徴や設置目的には明確な違いがあります。本記事では、ラプチャーディスクの設置目的と安全弁との違いについて解説します。 ラプチャーディスクとは ラプチャーディスクは、過圧保護を目的とした安全装置の一種です。主にプロセス産業や化学工場など、高圧の流体を取り扱う場所で使用されます。 ...

ReadMore

配管

2024/7/5

【配管】ストレーナに差圧計をつけるのはなぜ。設置するメリットは?

ストレーナは、流体システムにおいて異物や不純物を取り除くために使用される重要な機器です。 その中で、ストレーナに差圧計が設置されているのを見たことがある方もいるのではないでしょうか。本記事では、ストレーナに差圧計をつける理由について解説します。 ストレーナとは ストレーナは、流体(液体や気体)の中に含まれる固形物や異物を捕捉するための装置です。 流体がストレーナを通過する際に、フィルターが異物を取り除き、クリーンな流体だけが下流に送られます。これにより、ポンプやバルブ、熱交換器などの重要な機器が異物による ...

ReadMore

配管

2022/7/31

【配管】フランジ規格FFとRFの違い、使い分けは?

バルブや配管を接続するフランジにはJIS10Kなどの後ろにFFやRFという種別が記載されています。 低圧ではFFとRFでどちらを使っても問題ない場面が多いので使い分けが良く分からないという方も多いのではないでしょうか? この記事では、フランジの座面形状を表すFFとRFの違いについて解説します。 FFとRFの違い FF FFはFlat Face(フラットフェイス)の略で上の図のようにガスケットの座面を全面に仕上げたものを言います。主にJIS10K、JIS20K、JPI150、JPI300などの低圧で使用され ...

ReadMore

配管

2022/7/31

【配管】バッファータンクの役割とは?設置するメリットは

給排水系統や空気系統では負荷変動を抑えるためにバッファータンクが良く用いられます。 この記事では排水系統などで良く利用されるバッファータンクについて解説します。 バッファータンクとは バッファータンクとは気体や液体を一時的に貯留させるためのタンクです。レシーバータンクとも呼ばれ、給排水系統や空気系統などに設置されます。 バッファータンクを設けることで、設備のイニシャルコスト低減や工場の安定性を向上させることが出来、大きければ大きいほど変動許容率が上がります。 バッファータンクの役割 バッファータンクの役割 ...

ReadMore

配管

2022/7/31

【配管】バケットストレーナーとは何か、メリットデメリットを解説

ポンプや制御弁など重要な機器を保護するためにはストレーナーは必須です。 この記事では大口径の配管に良く採用されているバケットストレーナーとは何か、また、メリットデメリットについて解説します。 バケットストレーナーとは バケットストレーナーはバケット状のメッシュにて流体内の異物を取り除くための機器です。小口径で良く利用されるY型ストレーナに比べると大口径で利用されることが多い機器です。 内部のバケットは上部のカバーを取り外すことで取り出すことができ、定期的に洗浄を行うことで目詰まりなどを防止します。上部のカ ...

ReadMore

  • この記事を書いた人

エコおじい

プラント業界一筋のエンジニアです。「工業技術をどこよりも分かりやすく解説する」をテーマに2017年からブログ、Youtubeで情報発信をしています。保有資格はエネルギー管理士と電験三種です。

効率的に技術系資格取得を目指す方必見!当サイトおすすめの通信講座

最短で資格を取得するためには、いかに効率よく学習するかが最も重要です。

参考書だけでは分かりにくいという方には、全て解説動画で学べるSATの通信講座がおすすめです。日々の通勤時間など隙間時間を利用して無理なく効率的に学習を進めることが出来ます。

超シンプルで分かりやすいSAT『エネルギー管理士』

エネルギー管理士の通信講座です。イラストを多用したシンプルで分かりやすいテキストと動画がセットになっています。

他社と比較すると価格もお手頃で、特に熱力学などを学んだことのない初学者におすすめの通信講座です。

熱分野レビュー 電気分野レビュー 他社との比較

エネルギー管理士以外にも電験や衛生管理者など25の資格の通信講座を展開しています。

最短で電験取得を目指すならSAT『電気主任技術者講座』

イメージしにくい交流回路についても多様なイラストと解説動画で詳しく解説してくれます。独学ではなかなか勉強が進まないという方に特におすすめの講座です。電気について詳しく学べるので実務で電気を使うという方には最適な教材です。

電験三種レビュー 他社との比較

技術系資格の最高峰SAT『技術士合格講座』

論文添削やZOOMマンツーマン指導が付いており、面接対策もWeb上で行うことが出来ます。また、テキストは毎年改定されているので常に最新の教材で勉強することが出来ます。

-配管

© 2024 エネ管.com Powered by AFFINGER5

エネ管.comをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む