回転機を動かす制御盤の中を見たときに、動力回路として大きな部品がいくつも設置されているのを見たことあるでしょうか。
それは回転機用のスターデルタ(Y-Δ)切り替え用の回路かもしれません。
この記事ではスターデルタ(Y-Δ)回路の特徴や使用する理由について解説してみたいと思います。
動画でも解説しているので動画のほうがいいという方はこちらもどうぞ。
スターデルタ始動法とは
あるものが止まっている状態で動かすときに必要な力は、動いている状態よりも大きいことが知られています。回転機の軸を回す場合においても、始動時にかかる力が最も大きいです。
回転機には定格電流という、機器の使用時に流しても問題がない電流の保証値を表したものがありますが、始動時にはこの8−10倍の電流が流れるとされています。この量の電流値が流れても問題ない設計を考えると、ブレーカー、電気配線、マグネットコンダクターなど様々な部品のサイズアップが必要となり、高価になってしまいます。
そこで始動時にかかる電流負荷を下げて、設備投資を抑えるために活用されているのがスターデルタ始動法です。
三層誘導電動機において用いられるこの手法は、モーターへの配線方法を最初のスター(Y)型から、途中でデルタ(Δ)型に切り替えることで始動電流を1/3に抑えることができます。
回路名の由来は文字通り、回転機の固定子巻線に対して1本ずつ接続されている(Y字)になっているのでスター型、各固定子巻線を三角型に接続して各頂点に配線したものがデルタ型です。
スターデルタ始動法の特徴は?
上記のような配線をすることにより、どんな違いが出るのでしょうか。
固定子巻線のインピーダンス(電圧と電流の比、直流における抵抗のような概念です。ここでは深く気にしないでください)をZとし、電圧Vをそれぞれにかけることを考えます。
スター結線では各相に流れる線電流は(V/√3)/Zとなり、デルタ結線では√3(V/Z)となります。よってスター結線の方がデルタ結線時の1/3の電流で起動することができ、始動時の負荷を下げることができます。
しかし、この低い電流値のまま回転機を回すと想定通りの能力を出せないため、途中でパワーアップするためにデルタ回路に切り替えます。
この切り替え時間決定にはタイマーが用いられ、始動から0.5秒前後に切り替わることが多いです。実際の結線切り替えにはマグネットコンダクターが用いられ、スター・デルタの両方が同時に通電しないように通常インターロックが用いられます。
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スターデルタ始動法が用いられる基準は?
小型の回転機の場合はスターデルタ始動法を用いる必要がないとされています(用いても問題ありませんが過剰投資になります)。
基準としては、200Vでは11k W以上、400Vでは30k W以上の回転機を使用する場合にはスターデルタを採用してください。
ちなみにスターデルタではなく、最初から全電圧をかけて始動する方式のことを、直入始動法と呼びます。
回転機の交換時に確認することは?
回転機を更新する際に、「生産物が変わったので容量を上げたい」「省エネのためにモーターの容量を下げたい」という要求が出ることがあります。
制御盤などの周辺機器を更新せずに回転機だけ変えた方がコストも抑えられますが、消費電力が変わる場合には注意が必要です。
容量アップの場合には、ブレーカーと配線サイズを上げる必要がありますし、上記のスターデルタ始動の基準が変わる場合(例えば7.5kWか11kWに更新を検討)には、制御盤内のスペース確保が必要となります。
逆に容量をダウンする場合にも、制御板内の電気機器を適切なサイズに変える他、太い配線がモーター端子箱に入らない可能性があるため確認が必要です。
まとめ
- スターデルタ始動法が初期電流を小さくすることで、過剰な設備投資を抑えるために用いられる
- 回転機の電力が変わる場合には、制御側の機器・配線も変更が必要
スターデルタ始動法の内容と、実際の使用上の注意点についてまとめました。詳しい電流計算式について学びたい方は、スターデルタ変換・原理について調べてみてください。