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【ポンプ】ポンプやエンジン、送風機の「サージング」って何?

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ポンプや送風機の異常運転状態の1つに「サージング」という現象があります。

キャビテーションと並べられて比較されることがよくありますが、発生原理は全く違います。今回はサージングとは何か?どんな対策をすればいいのかについて解説したいと思います。

1. サージングとは?

サージングは一般的にはポンプや送風機に使われますが、同じ言葉でエンジンやタービン、ビールなどの業界でも違う意味で利用されているようです。

ついでなので、他の分野での「サージング」の意味についても記載しておきます。

  • ポンプのサージング
  • 送風機のサージング
  • エンジンのサージング
  • タービンのサージング
  • 黒ビールのサージング

ポンプのサージングと送風機のサージングは、ほぼ同じ原理で発生しますがそれ以外のものは発生原理や表す意味が違います。それぞれについて解説していきます。

1-1. ポンプのサージング

ポンプのサージングとは「吐出し量の少ない領域」で運転した際にポンプや配管が激しく振動して運転が出来なくなる状態のことを言います。次に示す、ポンプの性能曲線を例に説明します。

ポンプの性能曲線は、揚程、吐出し量、軸動力、電流値などの性能に関する数値がグラフ化されたもので、上の図は揚程と吐出し量だけを抜き出して記載しています。

ポンプには「揚程(加圧能力)」と「吐出し量(流量)」に相関関係があります。ポンプが行う仕事が一定の場合、吐出し量が多くなれば揚程が下がり、吐出し量が少なくなれば揚程が上がります。

揚程(m)は水を何m持ち上げることが出来るかという指標で圧力(Pa)に換算すると大体揚程1m=10kPaになります(厳密には温度や圧力によって多少変わります)。

上図の②の領域で運転する場合は、ポンプ二次側の負荷が変動して吐出し量が瞬時的に下がっても揚程が上がる(CからBの状態になる)ので、より流れやすくなり自然と安定した領域で落ち着くことになります。このような運転を行うのがポンプの平常運転という事になります。

一方①の領域で運転する場合は、吐出し量が下がると揚程も下がります。この領域で運転すると吐出し量と揚程が周期的に変動するようになり、ポンプや配管が振動します。

このように揚程と吐出し量の関係が右上がりの領域で運転した際にポンプや配管に振動が発生する現象をポンプのサージングといいます。

軸流ポンプや斜流ポンプの場合は、揚程と吐出し量の関係が右肩下がりなのでサージングは発生しませんが、遠心ポンプなど一部のポンプでは上図の①のような領域があり吐出し量の少ない領域で運転するとサージングが発生します。

1-2. 送風機のサージング

送風機の場合も、ポンプと同様に性能曲線があり「一次側圧力と二次側圧力の差」と「風量」に相関関係があります。圧力と風量の関係を表したものが次の図になります。

送風機の場合も、ポンプの運転と同様で風量と圧力の関係が右肩上がりになる低風量の領域で運転をすると、圧力と風量が大きく変動しダクトが振動します。これを送風機のサージングといいます。

送風機の場合は、ほぼすべての機種の性能曲線に上図のような「圧力と風量の関係が右上がりになる領域」があるため、低風量域で運転するとサージングが発生します。そのため、一般的にサージングと言われるのは液体のポンプではなく送風機に使われることが多いです。

サージングが発生すると、送風機が故障したりダクトが外れたりするのでサージング発生領域の運転にならないよう注意が必要です。

1-3. エンジンのサージング

エンジンのサージングはポンプや送風機とは違い、エンジン内スプリングの固有振動数が関係してきます。

エンジンのサージングは、エンジンの回転数が高い領域で、バルブのスプリング(ばね)が持つ固有振動数と同等になってしまい通常のエンジンの動きが出来なくなるという現象です。

この現象は一般的に「バルブサージング」と呼ばれ、動画のようにエンジンから異常音が発生し最悪の場合はエンジンが故障するようです。F1などのレーサー用のマシンでは、サージング対策としてばねではなく圧搾空気が用いられているようです。

次の動画を見ていただければ、エンジン内のスプリングの様子が分かります。

1-4. タービンのサージング

飛行機などのジェットエンジンで発生するタービンのサージングは次の動画のような空転状態のことを表します。

タービンのサージング現象は、タービンが回転しているにもかかわらず全く仕事ができないときに発生します。

例えば、羽根が複数枚回転するような多段タービンで前方の羽根が急に回転を止めたりすると後方の羽根が空気を押し込めなくなり空転状態になります。主に飛行機のジェットエンジンなどで見られる現象で、軸流式の圧縮機で発生することが多いようです。

ジェットエンジンの内部構造は次の動画で詳しく解説されています。

1-5. ビールのサージング

全く意味は変わりますが、ビール業界にもサージングと呼ばれる現象があります。

ビールのサージングはアイルランド生まれの「ギネスビール」を注いだ後に90秒程度待つと泡が上部に上がっていく現象のことをいいます。これは窒素の素粒子が二酸化炭素の素粒子より細かく、グラスに注いだ際に下に押し流されることで起きるそうです。

興味がある方はギネスビールで一度試してみてください。

2. サージングの対策

サージングが発生すると、機器の故障や配管のずれにつながるので対策が必要です。ポンプ、送風機、エンジンのサージング対策について解説します。

2-1. ポンプのサージング対策

ポンプのサージング対策は、吐き出し量を強制的に増やす事で解消します。

一番確実な方法としてはポンプにバイパスラインを設けてやることです。こうすればポンプの二次側から一次側に流体が一部戻ってくるので吐出し量が増加します。

ループ内だけの運転になっても、サージングが発生しないようにバイパスラインのバルブで調整してやればサージングの発生を防ぐことができます。

但し、この場合は最大吐出し量が制限されることになるので確認が必要です。

また、ポンプの出口バルブを調整して流量を調整するだけで解消する場合もあるのでまずはこちらを試してみましょう。

2-2. 送風機のサージング対策

送風機のサージング対策も基本はポンプと同様です。

送風機出口と入口をつなぐバイパスラインを設けてやって吐出し風量の一部を入口に戻すことで最低風量を確保します。

また、出口側に逃がしのラインを設けて、一部を外気に放出するという方法もあります。エネルギーとしては無駄になりますが、サージングは防止することができます。

2-3. エンジンのサージング対策

エンジンのサージングではエンジン内のスプリングが原因となっていたので、バルブスプリングを強くしたり、固有振動数の異なるスプリングを組み合わせたり、固有振動数の少ないスプリングを組み合わせることでサージングを防止することができます。

スプリングの代わりに圧搾空気を用いるという方法もあるようですが、費用がかかりすぎるため現実的ではないようです。

3. サージングとキャビテーションとの違い

サージングとよく比較されるキャビテーションですが発生原理は全く異なります。

キャビテーションはポンプ内部で液体の圧力が、その温度の飽和蒸気圧を下回り一部が蒸発してしまうことで発生します。ステップに分けると次のようになります。

  1. ポンプ内部で液体の圧力が、その温度の飽和蒸気圧より下がる
  2. 液体の一部が蒸発して蒸気の泡が発生する
  3. 蒸気の泡が凝縮してつぶれる
  4. 泡が潰れた衝撃でポンプや配管が振動する
  5. ポンプが故障する

ポンプには様々なタイプがありますが、特にプロペラを回転させることで加圧するようなポンプの場合、プロペラ周辺で液体の流速が上昇することで圧力が低下し、蒸発しやすくなります。

エコおじい
液体の流速と圧力の関係はベルヌーイの定理で説明できます。

キャビテーションが発生するかどうかの検証は、送る流体の温度とポンプへの押し込み圧力によって決まります。

通常、ポンプで何かを輸送する場合はキャビテーションを発生させないように、流体の温度と押し込み圧力を計算しながら適切なポンプを選定します。

エコおじい
厳密にいえばキャビテーションはいろいろな要素(プロペラ表面形状など)で発生するので、興味のある方は深く調べてみてください。
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4. まとめ

  • サージングはポンプ、送風機、エンジン、タービンなどで発生し機器の故障の要因になる。
  • ポンプ、送風機は低負荷の運転時に発生する。
  • エンジンは高回転域でスプリングの固有振動数と共振すると発生する。
  • タービンは空転時に発生する。
  • サージングとキャビテーションは全く違う現象。

サージングについて少しは理解できたでしょうか?

サージングと一言に行っても意味がたくさんあり混乱しやすいです。どの機器のサージング現象を表しているのか注意しましょう。

サージングやキャビテーションなど流体全体について詳しく知りたいという方にはこちらの書籍がおすすめです。少し値は張りますが現場で役立つ知識が豊富に乗っています。

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エコおじい

プラント系エンジニアです。「エネ管.com」というブログで工業系の技術に関する情報を発信しています。最近、Youtubeも始めました。応援よろしくお願いします。

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