発電機やタービンの制御として代表的なものにドループ制御とアイソクロナス制御があります。
この記事では、ドループ制御とアイソクロナス制御の違いについて解説します。
ドループ制御とは
ドループ特性とは速度垂下特性とも呼ばれ「発電機の周波数が低下すると負荷率が増加し、周波数変化を抑制するように働く特性」のことを言います。
同期発電機の周波数が変動した時に、どの程度の負荷変動があるかは発電機特性の速度調定率によって決まります。例えば次の図のように速度調定率が4%の同期発電機が50Hz、負荷率50%で運転している場合、瞬時に周波数が4%上昇すると負荷率は0%となり、逆に4%低下すると負荷率は100%になります。
これは、系統の負荷に対し、発電出力が足りない時は周波数が減少し、発電出力が過剰な時は周波数が上昇するということから、系統の周波数変動を抑えるために発電機に持たせている特性です。
同期発電機が系統と接続しているときは、発電機の回転速度は系統の周波数によって決まります。この時、発電機にどの程度の負荷(kW)を出力させたいかは、ドループ特性の直線の位置(速度設定値)がどこに設定されているかによって決まります。
例えば、次の図のように50Hzで負荷率50%で運転している場合(図上の黒点)、速度設定値を上げると特性直線が上に平行移動し、負荷率が上昇します(赤点)。逆に速度設定値を下げると特性直線が下に平行移動し負荷率が減少します(青点)。
常に定格出力運転を行うような小型発電所の場合は、系統の周波数に対し、常に負荷率100%となるように速度設定を上限付近まで上昇させた状態で運転を続ける事となります。
このようにドループ特性の速度設定値を変化させながら、目的の発電出力が得られるように制御を行う方法を「発電出力のドループ制御」と呼びます。
速度調定率の違う複数の発電機が並列に接続されている場合で負荷を均等に分担させたい場合は、それぞれの発電機の速度設定値を上下させながら負荷率が一定となるような制御を行います。
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アイソクロナス制御とは
一方で、アイソクロナス制御は負荷に関わらず周波数が一定になるよう制御を行う方法で、速度一定制御や調速制御とも呼ばれます。
主に系統から切り離された状態で、プラントの自立運転を行う場合に利用されます。
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ドループ制御とアイソクロナス制御の使い分け
ドループ制御とアイソクロナス制御の使い分けは次のようになります。
- ドループ制御:系統と連系している場合、複数の発電機が並列で接続されている場合。
- アイソクロナス制御:系統と解列されており、かつ周波数の制御を行う発電機に利用する。
例えば次のように、母線と解列された状態で複数の発電機が並列接続されている場合は、周波数を決める発電機をアイソクロナス制御とし、残りの発電機をドループ制御とするのが一般的です。
ドループ制御とアイソクロナス制御は場合に応じて、制御方法切替が出来るようになっていることが多く、プラントに自立運転機能がある場合はアイソクロナス制御が出来るようにしておくのが一般的です。
まとめ
- ドループ制御は発電出力を一定にするよう速度設定値を制御する方法。
- アイソクロナス制御は周波数が一定になるよう回転速度を制御する方法。
- 系統と連系しているか解列されているかで制御方式を切り替える。
ドループ制御とアイソクロナス制御は普段あまり聞きなれない制御なので、少し分かりにくいかもしれません。
実際に運転を見る機会があれば、どちらの制御方法で動いているのか、また、なぜその制御を行っているのかを考えながら見てみてはいかがでしょうか。