ボイラーの代表的な種類の一つに「炉筒煙管ボイラー」があります。
最近では、新たに入れることの少なくなったものですが、今回は炉筒煙管ボイラーのメリットやデメリットについて解説してみたいと思います。
こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。
炉筒煙管ボイラーとは
炉筒煙管ボイラーとは、水を入れた円筒の中に煙管を複数通し、燃焼室のガスを通すことで蒸気を発生させるボイラーです。
丸ボイラの一種で熱源としては、重油やガスが一般的です。
最近では、大型工場以外では効率のいい貫流ボイラーが設置されることが多く、新規に炉筒煙管ボイラを入れることは少なくなりました。
炉筒煙管ボイラーの内部構造についてはこちらの動画が分かりやすいので載せておきます。
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炉筒煙管ボイラーのメリット
炉筒煙管ボイラーのメリットは次のようになります。
- 負荷変動に強い
- 大容量でキャリーオーバーが発生しにくい
- 保有水量が多いので水質管理が容易
- 蒸気の乾き度が高い
炉筒煙管ボイラーの強みは、保有水量が多いので小型貫流ボイラーに比べると安定性が高いです。
また、数トン単位の大容量の蒸気を発生させることを前提にするため、長期に連続運転をする工場に納入されることが多いです。
キャリーオーバーはボイラーから水分が、蒸気と一緒に運ばれていくことを言います。キャリーオーバーが発生すると、蒸気の流速で水分が流れていくのでバルブや配管などの機器寿命を低下させる要因になります。
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炉筒煙管ボイラーのデメリット
一方、デメリットは次のようにないます。
- 放熱が多い
- 貫流ボイラーに比べ、ボイラー効率が悪い
- 小型貫流に比べ起動時間が長い
メリットと関係するものが多いですが、保有水量が多いので安定性があるかわりにロスも多いです。
例えば、大量の飽和水をタンク内に貯湯しているため、貫流ボイラーに比べると放熱が大きくなります。
また、それにより燃料から蒸気にどれだけエネルギーが移ったかを示すボイラー効率も低くなる傾向があります。小型貫流ボイラーが96%程度をうたっているのに対し、炉筒煙管は85~95%程度になっています。
ボイラー効率をすこしでも上げるためには燃料をガス化し、エコノマイザを設置する必要があります。
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まとめ
- 水を貯めた円筒の中に煙管が多くあるボイラー。
- 炉筒煙管ボイラーは大容量で負荷変動に強い。
- その分、起動に時間がかかり効率が悪くなる傾向がある。
以上、炉筒煙管ボイラのメリットデメリットについてでした。
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