安くて大量のエネルギーが得られる重油は、昔から工場や発電所などで多く利用されています。今では天然ガスやLPガスが増えてきて大分減りましたが、以前まではほとんどのボイラーが重油炊きでした。
重油というと、大型タンカーが輸送中に事故に合い、環境が破壊されるなんて話もよく聞くかと思います。
ところで、この重油は性質によって3つの種類に分けられるということはご存知でしょうか?今回は、エネルギー管理士試験でも頻出の重油の種類について解説したいと思います。
こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。
1. 重油とは?
重油、軽油、灯油、ガソリンなどの石油製品は、海底から掘り出された原油を沸点の違いによって分けること(蒸留)で作られます。
重油は、これらの石油製品の中でも最も重い部類に入り、蒸留塔の底部から取り出されます。
こちらの動画の最初の状態を見ていただくとわかるように、黒くてドロドロした液体です。このままでは綺麗に燃えないので、温めて柔らかくしてバーナーで噴霧させながら燃焼させます。
ちなみにこちらの動画は、重油と水を混合させてエマルジョン燃料を作り、燃焼実験をしています。エマルジョン燃料について詳しく知りたい方はこちら(外部リンク)
2. 重油の種類
重油はその性質によってA重油、B重油、C重油に分けられており、3つの分け方はJIS規格K2205(日本工業規格)(外部リンク)によって決められています。
品質の高い順にA重油>B重油>C重油となっています。
ちなみにJIS規格ではA重油=1種、B重油=2種、C重油=3種となっていて、A重油は硫黄分により1号・2号、C重油は動粘度によって1号・2号・3号に分けられています。
この6種類というのをしっかり覚えておいてください。ついつい3種類までで覚えてしまい、聞かれたときに答えられなくなります。
3. A重油とC重油の違い
A重油とC重油の違いについて見ていきたいと思います。B重油はAとCの間だと考えていただければと思います。
3-1. 動粘度
動粘度は「mm2/s」で表され、高ければ高いほど粘り気があります。
A重油は20以下でC重油は1号で250以下なので、C重油のほうが粘り気があります。
これによって、バーナーで噴霧するときに、A重油、B重油では加熱は必要ありませんが、C重油は80℃以上まで予熱してやる必要があります。
さらに、配管を通して燃料を輸送する場合にもC重油は20℃~30℃以上に保温しないと固まります。冬場はこの温度を下回ることがあるため、C重油の配管には電気や蒸気を用いて保温してやる必要があります。
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3-2. 灰分
灰分は燃えた後に残る灰の量を表し、高ければ高いほど灰が多いです。
灰分はA重油が0.05以下、C重油は0.1以下となっており、C重油のほうが燃えた後の灰が多いといえます。
灰が多いと、ボイラーの伝熱面などに付着し、ボイラー効率を低下させる割合が高いので定期的にスートブロア(スス吹き)をしてやる必要があります。
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3-3. 硫黄分
硫黄分は環境面やエネルギーコストに関係してきます。
A重油の1号は0.5以下、C重油は3.5以下となっておりC重油のほうが硫黄分が多いといえます。硫黄分が多いと、燃焼後に環境汚染の元凶となるSOxが発生しやすくなります。
また、排ガスの熱回収を行う際には低温腐食のリスクも増加します。
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4. A重油とC重油の価格の違い
ここまで見ると、同じ重油でもA重油のほうがはるかに扱いやすいということがわかります。それでもC重油が使われていることもあるので、どれほど価格に差があるのか見てみたいと思います。
こちらのサイト(外部リンク)でA重油とC重油の相場を見てみると2017年7~9月現在で、A重油は56900円/kL、C重油は43000円/kLとなっています。
大体A重油よりC重油のほうが25%程安いということになります。
※ 2020年1月ではA重油:66800円/kL、C重油:53050円/kLになっています。燃料費上がっていますね。
5. A重油とC重油の使用方法の違い
このような価格の違いから、A重油とC重油では使われ方が変わってきます。
一例をあげると次のようになります。
- A重油・・・中小型ボイラー燃料
- C重油・・・船舶の大型エンジン、大型工場・発電所、地域冷暖房などの大規模ボイラー
扱いやすさの違いを考慮しても、コストメリットのほうが大きくなるような大型の機器でC重油は使用されるようです。
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6. まとめ
- 重油は性質により6種類に分けられる
- A重油とC重油ではC重油のほうが20%程安い
- C重油は大型の機器で使用される
いかがだったでしょうか?
細かい数値を聞かれることもあるので、最低限6種類の違いについては理解しておきたいところですね。