ものづくりの現場において、原料・製品・ユーティリティなどを送るために使われる回転機は、生産の要と言えます。
トラブル時にはメーカーに来てもらうというのが一番ですが、人手不足の時代ですから、すぐに来てもらえるとは限りません。トラブルの推定原因を現場で特定することが、早期の問題解決につながります。
ポンプのトラブルにはいくつかの種類が考えられますが今回は「圧力が上がらない」にフォーカスして解説していきます。
細かな部品や修理方法はメーカーや修理業者のサイトに譲るとして、物理現象の解説と、考えられる調査・対応策を述べていきます。(ここでは渦巻ポンプを想定しています、加圧の原理によって現象が変わるので注意してください)
ポンプの圧力が低下するとどうなるか
生産に問題が出てくるのは言わずもがなですが、念のためどんな懸念点があるか具体例をあげてみます。
- いつもより蛇口から出る液体の勢いが弱くなる、必要量を出すのに時間がかかる。
- 上層階へ押し上げる圧力が足りず、液体が届かない。
- 遠距離への輸送の場合、配管圧力損失に負けてしまい液体が送られない。
- 水量が足りず他の場所でも皆がバルブを全開にするので、ますます圧力が下がる。
上記のような問題が発生したら、ポンプ圧力低下を疑ってください。
ポンプの圧力低下を確認する方法
ここからが調査方法です。ポンプの圧力低下の原因を探るには、周辺情報も確認する必要があります。以下の4点をまずは確認してみてください。
圧力計の表示がいつもより高い/低いか
運転中のポンプの電流値が、定格電流より高いか低いか確認してください。
送り出す側の圧力はどこから下がっているか
場所によって圧力が高い・低いということがあるので、場所と圧力を確認してください。ポンプ直後は圧があるのに、使用先では低くなっているということがあります。
流量計の値が使用量と比べて多い/一致しているか
実際の使用量と流量計の値が、おおよそ合っているかどうか確認してください。
推定される物理的原因
その上で、圧力が下がる原因を物理的に考えてみます。
送り出す液体が少ない
ポンプに入る手前側の時点で、液体が足りていないことがあります。ポンプの入り口側の圧力が小さすぎないか確認してください(いつもより小さければ液量も減少していることが考えられます)。
また揚水する負荷が下がるため、ポンプ電流値が下がることが予想されます。バルブが閉まっていないか、配管が閉塞していないか疑ってください。またキャビテーションが原因で空転していることも考えられるため、現地での異音がないか確認してください。
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送り出した側の使用量が多すぎる
液体の使用量が多く、ポンプの吐出可能量のスペックを上回ってしまうと圧力を維持できなくなります。
生産量が以前より増えた、屋外配管が破損して漏れているなんてこともあります。またパッキンの劣化によって、ポンプの軸部分からの漏れ量が多すぎることが原因の場合もあります。
ポンプ吐出側の圧力が下がっていればこれらの原因が疑われます。
送り出すための力が足りない
ポンプそのものの力が下がっていることがあります。例えばインペラーが破損したり、ゴミが絡まったりしていると押し出す能力が下がります。
またライナーリングが摩耗すると吸い込み側と吐出側の隙間が大きくなってしまい、加圧されずに抜けていく水量が増えます。
ポンプ手前圧力が正常で、流量計の値におかしい点がない場合は疑ってください。
電流値は原因によって、上がるケースと下がるケースがあります。異物が噛み込むと電流値が上がりますし、流れる隙間が大きくなりすぎると電流は下がります。
電力が足りない、ということは稀ですがあり得ます。自家発電や、大型装置の使用で電圧が変動するような場所も注意が必要です。
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送り出す道が塞がっている
ゴミやサビで配管流路が小さくなっていることが原因です。
外部からの異物混入(虫など)や配管内側のスケールが剥がれて流れたなどの事象が考えられないか、探ってください。この場合、ポンプ吐出側の直近の圧力は高く、液体の使用側では圧力が下がっています。
このように現象別に分けていくと、ポンプメーカーや修理業者の方に来てもらう必要があるのは、2と3の一部だけだということがわかります。
全く別原因のケース
上記の他に、「誰かがバルブを閉めて開け忘れていた」ということがよくあります。基本的なところから疑い、考えられる原因を一つずつ潰していきましょう。
まとめ
ポンプの圧力低下の現象は4つのパターンに分けられる
原因を特定することが早期の解決につながる
ポンプの圧力低下に関する現象別の原因について、その他のWebサイトでは明確な原因別対処方法が多かったので、調査観点からまとめてみました。お仕事の参考になればと思います。