鉄配管にステンレスの機器を接続すると錆びるというのを聞いたことはないでしょうか?
最近では錆び対策として、ステンレスの機器が増えていますが、配管自体は鉄のことが多く、異種金属の接続による錆びを気にすることも多いです。
例えば、ステンレスの板に鉄のボルトを接続するとボルトがすぐにボロボロになったり、ステンレスのシンクに濡れた鉄くぎを置いておくと、鉄くぎが錆びるなどといった現象が代表的です。
今回は、ステンレスと鉄を接続するとなぜ錆びるのか?について解説してみたいと思います。
こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。
1. ステンレスと鉄を接続すると錆びる?

ステンレスと鉄を接続した場合、異種金属接触腐食が発生し、鉄の錆び(腐食)が促進されます。
これは、ステンレスと鉄のイオン化傾向の違いにより、部分的に電池が形成され、鉄のイオン化が進められるためです。これを「異種金属接触腐食」と言います。
ステンレスは鉄にニッケルやクロムを混合した合金で、自身の周りに安定した「不動態被膜」を形成するため腐食されにくい金属です。
それがゆえに、鉄と接触させた場合には、鉄のイオン化が勧められてしまいます。ステンレスと鉄以外にもイオン化傾向の違う金属を接続した場合は同様の反応が起きます。

ステンレスと鉄の大きさに違いがあれば、錆びの発生速度も変わります。例えば、鉄が小さくステンレスが大きい場合は腐食速度が速く、逆の場合は腐食速度は緩やかになります。
一般的な金属のイオン化傾向
K,Ca,Na,Mg,Al,Zn,Fe,Ni,Sn,Pb,Bi,Cu,Hg,Ag,Pt,Au(左:高、右:低)
2. 異種金属接触腐食を防ぐ方法

ステンレスと鉄を接続する際に発生する異種接触腐食を防ぐには次のような方法があります。
2-1. 絶縁パッキンを使用する
接続部のパッキンに絶縁パッキンを利用し、鉄から発生した電子が移動しないようにします。
これにより、電流が流れなくなり鉄の腐食を防止することができます。
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【配管】ガスケットとパッキンの違いは?
2-2. 湿度が低い屋内に設置する
電池を形成するためには、2種類の金属の間に電気を通す電解液が必要です。
通常、ステンレスと鉄を接続させた場合には、空気中の水分が薄い水膜を発生させて電池を形成します。
そのため、湿度が低い屋内に設置しておけば、異種金属を接触させた場合にも、腐食速度を抑えることができます。
2-3. 塗料を塗る
接続部に塗料を塗れば、水と接触することもなくなるため電池が形成されなくなります。
屋外に設置する場合は、塗料がはがれると水が入り込み腐食が進むので、定期的に塗りなおしなどの対策が必要です。
3. まとめ
- ステンレスと鉄を接続すると鉄の腐食が促進される。
- イオン化傾向の違う金属を接触させる場合は同様の現象が起きる。
- 絶縁させるか、水分を取り除くことで腐食を防止できる。
異種金属接触腐食を発生させないよう、施工業者によっては明確なルールが設けられている場合もあります。
鉄の配管にステンレスの機器を選定する場合には注意しましょう。
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