大型のプラントなどでは、蒸気配管に水を噴霧する減温注水があるところが多いです。
今回は、減温注水とは何か、目的や計算方法について解説したいと思います。
減温注水とは
減温注水とは過熱状態の蒸気に水を噴霧し、温度を下げることを目的に行われます。
一般的に蒸気タービンを回転させるための蒸気は、タービン効率を上げ、蒸気中の水滴によるタービンの減肉を防ぐために飽和温度より高い温度で利用されます。
この蒸気を過熱蒸気といい、過熱器によって作られます。過熱器はボイラーの排ガス熱や電気ヒーターなどを熱源とする場合が多いです。
過熱蒸気は、輸送中に復水が発生しにくく駆動用としては優秀ですが、熱伝達率が低く、物体を加熱する用途としては不向きです。そこで、過熱蒸気の温度を下げるために利用されるのが減温注水です。
減温注水の目的
減温注水を行う目的には次の2つがあります。
伝熱能力を上げる
過熱蒸気はそのままでは非凝縮ガスの空気同様に熱伝達率が非常に低くなります。
そこで、抽気タービンから出てくる仕事を終えた過熱蒸気をプロセスの加熱などに利用したい場合は、飽和温度近くまで温度を下げてやる必要があります。
飽和温度を狙って注水を行うと、飽和温度以上に温度が下がらず、水が供給され続けるため、飽和温度+αの制御ポイントで水が噴霧されます。
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配管コストを下げる
過熱蒸気の温度が高すぎると、それに耐えうる配管材質にする必要があり配管コストが跳ね上がることがあります。これを防止するために減温注水を行います。
また、過熱器だけの制御では温度が上がりすぎた際に下げる機構がないため、出口温度を安定させ、配管の仕様範囲内に抑えることも減温注水の役割の一つになります。
減温注水の計算方法
欲しい温度まで減温するのに必要な減温注水の水量は質量と熱量の二次方程式から求めることが出来ます。例えば、次のような条件で減温注水がどれだけ必要か計算してみましょう。
過熱蒸気の比エンタルピーは蒸気表から確認することが出来ます。
まず、注水の流量をX[kg/h]、減温後蒸気の流量をY[kg/h]とすると、次の式が成り立ちます。
$$Y=5000+X・・・(1)$$
次に、合流後の熱量が入口蒸気と注水の熱量の合計になることを考えると、次の式が成り立ちます。
$$3213×5000+167X=2871Y・・・(2)$$
この二次方程式を解くと、減温注水の量を計算することが出来ます。
今回の計算では必要な注水量は約632kg/hになります。
また、少し条件を変えて合流後の蒸気が合計5000kg/hになるように計算すると、入口蒸気は4439kg/h、注水は561kg/hになります。
どんな条件でも、質量と熱量はそれぞれの合計だということを意識すれば簡単に計算することが出来ます。ただ、実際に注水を供給するためには、蒸気配管よりも高圧にしてやる必要があるので、どの程度の圧力が必要かは減温器メーカーに確認する必要があります。
まとめ
- 減温注水は過熱蒸気の温度を下げるために使用される。
- 伝熱能力の向上や配管コストを下げることが目的。
- 流量と熱量で方程式を立てると計算できる。
大型のプラントでは当たり前のように使用されている減温注水ですが、なぜ減温が必要なのかがイメージできたでしょうか?
是非、減温注水をしている箇所があればなぜその温度になっているのかを考えてみてください。
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