ランキンサイクルでタービンの仕事を求めるためには、タービン入口と出口の蒸気のエンタルピー差(熱落差)が必要になります。
今回は、タービン出口の蒸気の乾き度の求め方、エンタルピーの求め方、仕事の求め方について解説したいと思います。
こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。
1. タービンの仕事の求め方
ランキンサイクルでタービンの仕事を求めるためには次の4つのステップが必要です。
- タービン出口の蒸気の乾き度を求める
- タービン出口の蒸気の比エンタルピーを求める
- タービン入口の比エンタルピーと出口の比エンタルピーの差に流量を掛ける
- タービンの仕事の単位に変換する
1-1. タービン出口の蒸気の乾き度を求める
(引用:Wikipedia 蒸気のH-s線図)
タービンに供給された高温高圧の過熱蒸気は、タービン中で熱量を奪われながら可逆断熱膨張(等エントロピー変化)をすることで、一部が飽和水に戻ります。
このように、一部飽和水を含む蒸気を湿り蒸気といい、飽和蒸気と飽和水の割合を表す指標を乾き度といいます。
例えば乾き度が0.8(80%)とすると、8割が飽和蒸気、2割が飽和水ということになります。
タービン出口蒸気の乾き度を求めるためには、入口の過熱蒸気の比エントロピーsがわかれば求めることが出来ます。
理想状態では、タービンでは摩擦などが全くなく等エントロピー変化のため、出口の湿り蒸気のエントロピーも入口と同じsになります。
エントロピーから、乾き度を求めるには次のような計算を行います。
乾き度をx、タービン出口の飽和水の比エントロピーをs'、タービン出口の飽和蒸気の比エントロピーをs''とするとエントロピーsは次のように表されます。
$$s=s''・x+s'・(1-x)$$
この式を変形させると
$$x=\frac{s-s'}{s''-s'}$$
このように乾き度をエンタルピーで表すことが出来ます。
1-2. タービン出口の蒸気の比エンタルピーを求める
上の式で、それぞれのエントロピーから乾き度が求まったので、次はタービン出口の蒸気の比エンタルピーを求めます。
乾き度は飽和蒸気と飽和水の割合を表すので比エンタルピーを求める式は次のようになります。
飽和水の比エンタルピーをh'、飽和蒸気の比エンタルピーをh''とすると、タービン出口の湿り蒸気の比エンタルピーhoutは
$$hout=h''・x+h'(1-x)$$
この式によってタービン出口の蒸気の比エンタルピーを求めることが出来ます。
1-3. タービン入口の比エンタルピーと出口の比エンタルピーの差に流量を掛ける
タービン入口と出口の比エンタルピー差に蒸気流量を掛ければ、タービンでの熱落差を求めることができます。
タービンを通過する蒸気流量をm[kg/h]とすると、過熱蒸気のエンタルピーhinとすると、タービンの熱落差は
$$Δh=m・(hin-hout)$$
このように、熱落差を求めることになります。
タービンの軸部分などで、摩擦が全くなく、タービン効率100%の場合は熱落差がタービンの仕事になります。
1-4. タービンの仕事の単位に変換する
タービンの出力は[kW]が多いので、熱落差の[kJ/h]を[kW]に変換します。
このように変換することで、タービン出力に変換することができます。
【熱力学】ワットとジュールの変換方法
2. まとめ
タービン仕事の求め方は次にようになります。
- タービン出口の蒸気の乾き度を求める
- タービン出口の蒸気の比エンタルピーを求める
- タービン入出の比エンタルピーの差に流量を掛ける
- タービンの仕事の単位に変換する
ランキンサイクルは計算も多いので、一つ一つ丁寧に解いていくことを心がけましょう。
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