ボイラーや加熱炉など、バーナで燃料を燃焼させることで熱を発生させる装置で省エネルギーを考える場合、バーナに供給する空気の量は非常に重要な要素になります。
この時に出てくるのが「空気比」という考え方です。
この記事ではエネルギー管理士の試験でも良く問われる「空気比」について解説してみたいと思います。
1. 空気比とは?
空気比は次の式で表すことができます。
燃料を燃焼させるためには酸素が必要です。その酸素を絶やさないために、一定量の空気を送り続ける必要があります。
このとき、完全燃焼させるために必要な最小の空気量を理論空気量といいます。空気比は理論空気量に対して、実際に供給する空気量の比率のことをいいます。
燃焼バーナで発生した熱はすべてが有効に利用できるわけではなく、一部排ガスとして外気に排出されます。
そのため、理論空気量に対して空気を過剰に供給しすぎると、排ガスの量が多くなりエネルギーロスになり、供給する空気量が少ないと、不完全燃焼により黒煙などが発生し環境汚染につながります。
一般的には環境汚染のほうが問題になるため、理論空気量に対して多少過剰に空気を供給します。
工場のエネルギーコストの大半を占めるボイラーや加熱炉燃料の削減につながるため、空気比の調整はエネルギー管理の重要な課題となります。
また、空気比が少なくても完全燃焼が出来るという事で、最近では燃料が重油からガス燃料に変わることも多くなっています。
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2. 空気比を計算してみよう
空気比を算出してみます。
今回は1molのメタンを完全燃焼させるのに必要な空気量を実際に計算してみたいと思います。
燃焼物:メタン1mol 供給空気量 :250Lとした場合の空気比は?
まず、メタンの燃焼反応式を作ります。
$$CH4+2O2=CO2+2H2O$$
この式により、メタン1molを燃焼させるためには酸素が2mol必要になるとわかります。
1molの気体の体積は標準状態で22.4Lのため、必要な酸素量は44.8Lとなります。
空気中の酸素が占める濃度を21%とすると、
$$理論空気量=44.8×\frac{1}{0.21}≒213.3$$
実際の供給空気量は250Lなので空気比は
となります。
実際には燃料中には、他の成分や水分なども含まれるため、もう少し複雑な計算が必要になります。
ただ、計算の流れは同じで理論酸素量⇒理論空気量⇒空気比という順番になります。
3. 空気比はいくらにすればいい?
実際に使用する場合、空気比は一体どの程度にすればいいのでしょう?
空気比の基準値は省エネ法で目安が定められています。
空気比が基準値に対して大きく外れていると、立入調査の際に減点対象になるなどの罰則が設けられています。
実際に空気比がどの程度で管理されているかは工場のボイラー日誌等を見れば確認することができると思います。
4. 空気比の調整方法
空気比を調整するには、供給する燃料の流量に対して供給する空気の量を変化させる必要があります。
ボイラーなどの空気量制御は燃料の供給量に対して、どの程度の比率で空気を送り込むか(ダンパーの開度を調整するか)という比率制御が一般的です。
比率のパラメーターはボイラーのプログラムに組み込まれているため、ボイラーの取り扱い説明書などを参照する必要があります。
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5. まとめ
この記事のポイント
空気比は理論空気量に対して供給する空気の割合
理論空気比は理論酸素量から計算できる
空気比の基準は省エネ法で決められている
空気比の計算は、燃焼計算の問題で必ず出てきます。
基本的な考え方を押さえて数回問題を解けば、応用的な内容にも対応できるのではないでしょうか?