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【配管】放熱量を簡単に計算する方法。保温の効果はどれくらい?

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配管や熱交換器に保温をすべきか検討するのに、現在の放熱量を簡単に計算したいときってありませんか?

インターネットで検索すると、放射率などの難しい計算が出てきますが実際にはそこまで精緻な値っていりませんよね。ということで今回は、簡単な条件から放熱量の概算を出す方法や保温の効果について書いていきたいと思います。

こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。

1. 放熱とは?

放熱とは、熱エネルギーを周りに拡散していくことをいいます。

熱エネルギーは、常に温度の高いところから低いところへ流れていくので、物を加熱していなくても、そこに温度差があれば勝手に逃げてしまいます。逃げたエネルギーは、電気や蒸気などの熱源で補填されるため熱ロスになります。これを放熱ロスと呼びます。

放熱ロスは、省エネの観点からできるだけ減らしたいですが、それには保温を施工するためのコストがかかるわけです。

コストとメリットの関係を考えるためにも、放熱量の簡単な計算というのは必要になります。

2. 放熱量の計算

放熱量を計算するのに必要な条件は次の7つです。

  1. 高温側の熱伝達率 h1(W/m2K)
  2. 高温側の温度 t1(℃)
  3. 伝熱面の熱伝導率 λ(W/mK)
  4. 配管の厚み L(m)
  5. 低温側の熱伝達率 h2(W/m2K)
  6. 低温側の温度 t2(℃)
  7. 表面積 A(m2)

ここで、分かりにくい値として1.3.5があります。

熱伝導率と熱伝達率の違いについては次の記事を参考にしてください。

【伝熱工学】熱伝導率と熱伝達率の違いは!?2つを合わせたU値の求め方

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それぞれの物質の熱伝達率は固有の値がないので概算値を与えてやる必要があります。

こちらのサイト(外部リンク)にのっている平均熱伝達率を参考にしてみてみましょう。

このグラフによると、風速によって熱伝達率が変化するようなので、晴れの日の風速を3m/secとします。そうすると、空気の熱伝達率は大体20W/m2K程度だとわかります。

一方、加熱源が高温の温水だとすると、配管内を流れる水の流速は2~3m/sとして、熱伝達率は5000W/m2Kだとわかります。

熱伝導率は材質によって固有値になります。今回は鉄として84W/mKとします。厚みは5mmとします。

これを目安にして計算してみましょう。

2-1. U値を求める

まずは、上の条件を利用して、熱貫流率(熱通過率)を計算してみます。

熱貫流率は、熱の伝わりやすさを表す指標で記号Uで表され、次のような式で計算できます。

$$\frac{1}{U}=\frac{1}{h1}+\frac{L}{λ}+\frac{1}{h2}$$

単位は今回の場合ではW/m2Kになります。

式にすると複雑に見えますが、表していることは単純です。

  • 熱が伝わりやすい媒体を使ったほうがUは大きくなる。
  • 熱が伝わりやすい材質を使ったほうがUは大きくなる。
  • 薄いほうがUは大きくなる。
エコおじい
こう考えると当たり前ですね。

それぞれに値を代入してみます。

$$\frac{1}{U}=\frac{1}{5000}+\frac{0.005}{84}+\frac{1}{20}$$

$$U=19.9[W/m2K]$$

2-2. 面積と温度を掛ける

求めた熱貫流率に、面積と温度差を掛け合わせると放熱量が算出できます。

今回の場合は伝熱面積を1m2、高温水の温度を90℃、外気温を20℃とすると、放熱量は次のように算出することができます。

$$放熱量=1×19.9×(90-20)=1393[W]$$

1m2あたりからの放熱量は1393[W]だと計算することができます。

1時間当たりの放熱量はこれに3600をかけて5015kJ/hだとわかります。

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3. 放熱を防ぐための保温

保温とは、一般的に温度を一定に保つことが目的ですが、工業の分野では主に2つの目的で利用されます。1つ目は省エネ、2つめは安全対策です。

保温をすれば、放熱ロス量を減らせるので、加熱源に使用する燃料代を減らすことができます。また、保温をすると、むき出しになる部分の表面温度が下がるのでやけど防止にもなります。

この2つの観点で、保温は設計の段階で必須になっていることも多いのではないかと思います。

4. 保温をした場合の放熱量の計算

まず、保温をした場合と保温をしない場合で変化する値はU値です。

熱貫流率は次の式で計算することができます。

$$\frac{1}{U}=\frac{1}{h1}+\frac{L1}{λ1}+\frac{1}{h2}$$
  • 高温側の熱伝達率 h1(W/m2K)
  • 伝熱面の熱伝導率 λ1(W/mK)
  • 配管の厚み L1(m)
  • 低温側の熱伝達率 h2(W/m2K)

これが保温をすると、配管に加えて断熱材が間に入るので、次のような式に変化します。

$$\frac{1}{U}=\frac{1}{h1}+\frac{L1}{λ1}+\frac{L2}{λ2}+\frac{1}{h2}$$
  • 保温材の熱伝導率 λ2(W/mK)
  • 保温材の厚み L2(m)

放熱量を計算した時の条件で、保温をした場合の放熱量を計算してみましょう。

保温材の熱伝導率はこちらのサイト(外部リンク)を参考に0.05W/mKとして厚みを100mmと仮定します。

その他の条件は以下の通りです。

  • h1=5000
  • λ1=84
  • L1=0.005
  • h2=20

それぞれの値を代入すると次のような式ができます。

保温をしない場合

$$\frac{1}{U}=\frac{1}{5000}+\frac{0.005}{84}+\frac{1}{20}$$

$$U=19.9[W/m2K]$$

保温をした場合

$$\frac{1}{U}=\frac{1}{5000}+\frac{0.005}{84}+\frac{0.1}{0.05}+\frac{1}{20}$$

$$U=0.49[W/m2K]$$

保温をしない場合と比べて、熱の伝わる量は約97%減らすことができます。保温の効果は絶大ですね。

実際には、保温の材質や厚みを変動させながら、コスト、メリットがベストになるところを探すことになります。

エコおじい
厚みがあればロスは防げますが、その分保温のコストが上がります。
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5. まとめ

  • 放熱とは熱エネルギーを周りに拡散していくこと。
  • 放熱量の計算はU値、伝熱面積、温度差で計算できる。
  • 保温をすると放熱の90%以上をなくすことが出来る。

放熱量を算出するときは、空気側の熱伝達率をいくつで考えるかによって大きく変わります。

また、配管や熱交換器は保温をするだけで、放熱ロスをほとんど防げるということがわかりました。省エネ法でトップランナー制度に断熱材が追加されたのも、こうしてみるとよくわかりますね。

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エコおじい

プラント系エンジニアです。「エネ管.com」というブログで工業系の技術に関する情報を発信しています。最近、Youtubeも始めました。応援よろしくお願いします。

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