電気機器の結線図などを見ていると「この機器はシールドケーブルで接続してください」という言葉が書かれていることがありますよね?
一体、何のために「シールドケーブル」を使用するのでしょうか?
- 「シールドケーブルって何?」
- 「シールドケーブルは接地(アース)しないといけないの?」
この記事では、そんな疑問を抱える方のために、シールドケーブルの種類や設置方法などをまとめました。
こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいいという方はこちらもどうぞ。
1. シールドケーブルとは?
シールドケーブルとは、信号を伝達するためのケーブル線(芯線)と被膜(シース)の間に、ノイズの混入を防ぐ目的で芯線の周囲を覆うように配置される導体があるケーブルのことです。
ノイズと一口に言っても、レベルの大きさや周波数、発生するメカニズムが様々なため、ノイズを効果的に遮断するシールドケーブルを採用することが安定したシステムを構築するのに重要になってきます。
2. シールドケーブルの種類
シールドケーブルには大きく分けて、信号線がノイズを受けにくくするシールドケーブルと、信号線からノイズを周囲にまきちらさないシールドケーブルがあります。
前者を静電シールドケーブル、後者を電磁シールドケーブルと呼ぶことがあります。
2-1. 静電シールドケーブル
静電シールドケーブルは、静電誘導や不要輻射といった外来ノイズから信号を守るためのシールドケーブルです。
シールド材として銅やアルミなどの金属テープやメッシュ状の編み線で芯線を覆うことでノイズ電流を捕まえ、アースに逃がすことで、信号線をノイズの影響から遮断する効果を持たせています。通常の配線に用いているシールドケーブルはこちらの効果を狙ったものになります。
4-20mAのアナログ信号を用いて、機器を制御する場合も静電シールドケーブルが利用されます。
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2-2. 電磁シールドケーブル
一方の電磁シールドケーブルは、電源ラインなどの大電流を流す芯線から出る磁束によって周囲の信号線に影響を与えないよう、磁束をケーブルの外に出さないことを狙ったシールドの方法です。
鉄と銅を使って芯線をシールドすることで、磁束を閉じ込めるシールドケーブルです。鉄を使っているため、折り曲げや屈曲には弱いのが欠点です。
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3. シールドケーブルに接地(アース)は必要?
静電シールドケーブルも、電磁シールドケーブルも接地は必要ですが接地するポイントが違ってきます。
3-1. 静電シールドケーブルの場合
まず静電シールドケーブルですが、こちらはシールドケーブルの片端のみを接地します。理由は以下です。
- 信号や電源から流れ出した電流は、必ず送出元に戻ってくる性質(ここではリターン電流と呼称します)がある。
- 両端を接地するとシールド線を電流が流れるパスができる。
- リターン電流は送出ラインの最短経路を通る性質があるため、2.の経路を流れる確率が高くなる。
- 電磁シールドケーブルの説明にもある通り、電流が流れると磁束が発生する。
- 信号で使用した電流がリターン電流としてシールド線に流れると磁束が発生し、せっかく施したシールドが原因でノイズが発生する。
ですので、片側のみを接地することで2のリターン経路を作らないことが重要になります。
3-2. 両方とも設置しない場合
次に両方とも接地しない場合ですが、この場合は2で述べたシールドでノイズ電流を捕まえてノイズ減に戻す経路が作られないことになり、シールドとしての役割を果たすことができません。
さらにシールド自体がコンデンサのように電荷を蓄えてしまう可能性もあります。静電気などにより電荷をためてしまうと、何かの拍子に電荷を放出した場合、スパイク状のノイズを発生する原因になってしまいます。これも信号線からすると好ましくありません。
ですので接地は必ず実施する必要があります。また、接地の際は抵抗値が小さくなるよう注意するのがシールド効果を大きくするポイントです。
3-3. 電磁シールドケーブルの場合
次に電磁シールドケーブルの場合ですが、こちらは両端を接地するようにします。
その理由はシールドの内面をリターン電流の経路として使用することで、電流ループを極小にする効果が期待できるためです。
送出時に起こる磁界に対してリターン電流の磁界は逆向きになるため、送出電流のすぐそばをリターン電流が流れることで磁界を打ち消しあう効果が期待でき、シールド効果が高くなります。こちらも静電シールド同様、できるだけ小さい抵抗値で接地することが理想となります。
4. シールドケーブルの使用例
シールドケーブルの実際の使用例として一番身近なのはLANケーブルではないでしょうか?
そのほかTVアンテナの同軸ケーブルやスマートフォンの充電ケーブルも(よほど安価なものでない限り)シールドケーブルを使用しています。
もし余っているこれらのケーブルがあったら、一度シースをはがしてみると色々ななシールドの形式を見ることができるでしょう。
5. まとめ
シールドケーブルには、
- 周囲のノイズから信号を守る静電シールドケーブル
- 信号線からノイズを出さない電磁シールドケーブル
の2種類があり、その種類によって接地方法が違うということはよく覚えておいてください。
周囲に電気、電子機器があふれている昨今、充電器や洗濯機、テレビやパソコンなど、ノイズを出す電気製品は数多くあります。
また、自動車の電子化は成長が著しく、エンジンや電装品に流れる電流などはノイズ元として電子機器の誤動作を引き起こす原因にもなりえます。
必要な信号を正しく目的地まで届けるために、シールドケーブルはこれからますます重要な存在になってくるものと思われます。正しい知識で効果的なシールドケーブルの選択と使用ができるよう心がけましょう。